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公共工事 低価格の入札 増加 20061121読売
背景・発注減少や談合対策 心配・コスト削減で質低下
低価格入札増加の背景の一つには、公共工事の削減がある(東京・千代田区の中央合同庁舎7号館の建設工事現場で)
公共工事の入札で、発注者が想定した落札予定価格を大きく下回る「低価格入札」が増えている。公共工事の削減などを受けた、価格競争の激化が要因だ。低価格での落札の増加は、税金の無駄遣いを減らすことにつながる一方、行き過ぎれば、事業者がコストを切り詰めようと資材の品質を落としたり、下請け事業者の労働条件の悪化などを招く懸念も指摘される。
■落札率
予定価格に対する落札額の割合を示す「落札率」が、低下している。国土交通省発注の工事では、毎月の平均落札率が、2005年後半までおおむね93%を上回る水準で推移してきたが、今年1〜7月は、4月を除き、90%を下回った。
関東地方整備局では今年度、埼玉県の江戸川外郭放水路の第2工区トンネル覆工工事で落札率が56・1%となるなど、落札率が50%台の発注工事が4件あった。
同省は会計法に基づき、落札率が低すぎる工事について調べる「低入札価格調査制度」を設けている。工事ごとに予定価格の67〜85%の間で「調査基準価格」を決め、落札率がこれを下回る場合、落札を一時保留して、契約通りの工事が可能かどうかを調査する仕組みだ。
港湾・空港関係を除く調査件数は03、04年度がともに471件だったのに対し、05年度は928件に倍増し、発注者の想定を超える低価格での入札が増えていることを示した。
■制度変更
低価格入札の増加の背景には、公共工事が減っていることがある。
05年度の国の公共事業予算は約7・6兆円で、98年度(約14兆円)に比べると半分程度の水準だ。
また、ここ数年で、国や地方公共団体が、指名競争入札から一般競争入札への移行を進めたことも大きい。
指名競争入札は、事業の特性や技術力などの「指名基準」で発注者が複数の候補を選んで競争させる方式だが、業者の指名に絡んで「汚職や談合の温床になる」との指摘も多い。
一定の資格を持つ事業者が、自由に参加できる一般競争入札が増えたことにより、価格競争が激しくなっているとみられる。とりわけ、公共工事への依存度の高い地方の中小業者は「赤字覚悟で低価格入札せざるをえないのが現状だ」(全国建設業協会)という。
■要請
納税者の側から見ると、低価格での入札が増えれば、短期的に国や自治体の出費が減って、税金の無駄遣いを減らすことに役立つ。
ただ、一方で「弊害」への懸念の声も上がり始めた。
自民党は10月に「公共工事低入札緊急対策会議」を設置し、同30日、明白な原価割れが予測される業者の排除などを政府に求める決議をまとめた。
価格競争が行き過ぎれば、専門分野を持つ事業者が排除されたり、建設労働者へのしわ寄せが厳しくなったりして、工事の品質確保が難しくなるという理由からだ。
日本土木工業協会や日本建設業団体連合会など業界3団体は、業界全体が疲弊するとの危機感が強く、7月、会員企業に対し、公共工事の「適正な受注活動」を要請した。
■「安さ制限」に疑問の声も
国交省も、公共工事への信頼性を確保するために、低価格での入札には一定の歯止めが必要との立場だ。4月から「低入札価格調査制度」の調査対象を拡大したほか、一部の工事現場にモニターカメラを設置して施工状況を把握できるようにした。
10月には、一般競争入札の大規模工事を対象に、「入札ボンド制度」を段階的に導入することにした。建設会社が契約通りに工事を実施できることを、損害保険会社などが財務状況の審査などを通じて保証する制度だ。不適格業者の排除や低価格入札の歯止めに効果があるとしている。
しかし、業界団体や与党、国交省がそろって低価格入札の歯止めに動くことには、大手業者などから「企業努力で安くしているものまで制限すべきなのか」と疑問の声もある。
発注者側が事実上の最低価格を決めるような仕組みになれば、落札価格の高止まりを招きかねないとの懸念もある。
奈良女子大大学院の中山徹・助教授は「一般競争入札の導入と談合防止の取り組みで落札価格はどんどん下がってきた。建設業界は低価格入札の対策を求めているが、対策が行き過ぎると、新たな“談合”になりかねない」と指摘している。
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