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独・ケルン大聖堂 周辺の高層ビルで世界遺産抹消論議20060707朝日
リトアニアのビリニュスで8日から開かれる第30回世界遺産委員会で、ドイツの世界遺産「ケルン大聖堂」の登録抹消が論議されようとしている。近くの高層ビル建築に伴い、景観が破壊されたのが理由。紛争や災害で危機にひんする世界遺産が後を絶たないが、これまでは途上国が中心で、先進国のケースは珍しい。抹消も前例がなく、関係者の間で波紋を呼んでいる。
ライン川沿いに巨大な威容を誇るケルン大聖堂は、世界遺産に96年登録された後、早急な修復や保全が必要な「危機にさらされる世界遺産リスト」に04年掲載された。対岸に高さ100メートルを超える4棟の高層ビル建設が計画され、「景観的価値を損なう」と判断したためだ。
05年の世界遺産委員会は「適切な対策が示されなければ世界遺産登録を取り消す手続きを開始する」と、ドイツに最後通告を突きつけた。
ケルン市は「遺産登録対象は大聖堂で、街並みではない」と反論する。しかし、ユネスコ幹部は「近年、先進国の遺産について、景観の調和を重んじる雰囲気が強くなっている」と指摘。建物だけの保全で十分、といった理屈は通りにくくなっている。
今年4月に高層ビル1棟が完成したが、ケルン市当局は再開発計画をいったん中断。他のビルを高さ60メートル以下に抑えたり、大聖堂周辺の空間を広げたりなど、景観の調和を考慮した案を練り直している。
史上初の「遺産登録抹消」は相当な汚名になるため、世界遺産委員会は慎重に議論するとみられる。ただ、伝家の宝刀といえるこの制度を今回、ケルンにちらつかせたのは、修復や保全の技術や財源も十分にありながら腰が重い大国ドイツへの警鐘の狙いがあると見られる。
もっとも、景気低迷で製造業など地場産業が軒並み落ち込み、失業率が10%を超える厳しい現状のケルンにとって、再開発は現状打開策として地元で期待されていた。
世界遺産と住民のくらしとの調和は、しばしば問題になる。エルベ川流域が世界遺産に登録されている独東部ドレスデンでも、交通の利便性を良くするため住民投票で決まった橋の建設が景観破壊とされ、危機遺産リストへの掲載が検討されている。街並みが世界遺産に登録されたウィーンや英エディンバラでも、ビル建設による景観破壊が指摘される。広島の原爆ドームも、周辺の高層マンション建設を懸念する声が地元で出ている。
遺産が危機にさらされる原因としてはこれまで、武力紛争、地震や洪水などの自然災害、観光開発が一般的だった。大半が途上国にある世界遺産。その一つで、武装勢力による密猟が横行するコンゴの「ガランバ国立公園」についても、委員会は遺産登録抹消を検討している。
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