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地方の活性化に新たな役割 新分野に挑む建設業に追い風を20060804公明新聞
盛況のフォーラム
地方の建設業は依然として厳しい経営環境にあるとの証左といえよう。建設業の新分野への進出事例などを報告するフォーラムが先週、都内で開催された。関心を寄せる建設業者や自治体関係者、大学の研究者ら、全国から集った参加者は予想をはるかに上回り定員の倍にまで膨らんだ。
日本青年会議所建設部会が主催(東京工業大学が共催)した。テーマは「持続可能な社会基盤と地方活性化」。地方では近年の急激な公共事業の削減で建設業者の多くが苦況に立たされており、地域の社会基盤の維持そのものが難しくなっている。このため建設業者が経営を多角化することで生き残り、地域を活性化すると同時に社会基盤の維持を担っていく方策をともに考えたいと開催した。
2日間に及んだフォーラムでは、知恵を絞り前向きに新事業に挑戦する先進の約50事例が次々と紹介された。島根県隠岐郡海士町にある飯古建設の田仲寿夫社長は、隠岐潮風ファームを立ち上げ「隠岐牛」のブランド化に取り組む。計画から約3年を経て東京食肉市場に進出。今年3月に行われた初セリで高い評価を得ることができ、出荷体制の強化をめざすという。
また、山形市の勝村建設の村山勝四郎社長は、建築物の解体で発生する廃木材に目をつけ炭化処理を行う。新たに東北カーボンを設立し、木炭を主原料とした床下調湿材や土壌改良材などを販売する。炭化技術を用いてのさらなる新製品の研究開発に意欲を見せる。
福祉分野に進出している業者もある。富山市の朝日建設の林和夫社長は、子会社をつくり老人介護事業に乗り出した。デイサービスやショートステイ、訪問介護、介護タクシー事業などを展開する。このほか有機無農薬米の生産・販売、風力、雪エネルギー製品の開発・販売、棚田を利用したオートキャンプ場の建設・運営などさまざまな事例が報告された。
多くが本業が落ち込む中で新分野に進出している。特別にノウハウがあるわけでもない。そのほとんどが手探りからのスタートであり、その苦労は計り知れない。発表の限りでは、十分に利益を上げているような企業は見当たらなかった。中には本業の収益が30年前の水準にまで落ち込んでいる企業もあった。それでも新分野に挑戦する理由は何か。経営者の多くが「地域を守るため」「地域が落ち込む今こそ民間の活力が必要」などと、責任感や使命感あふれる言葉を口にした。
地方の建設業は、災害時の緊急出動はもちろんのこと、国土、地域の社会基盤を守る重要な役割を担う。また、多くの農村部では農業や役場に次いで、地域雇用の貴重な受け皿ともなってきた。つまり地方の建設業は地域を守り支えてきた企業群ともいえる。その建設業が縮小していくことは地方に衰退をもたらしかねない。
出た芽をつぶすな
建設業の新分野進出について、東京工業大学の米田雅子特任教授は「状況が厳しいなか、規制が多いなかで挑戦している。すぐに成功とはいかないかもしれないが、出た小さな芽を絶対につぶさないことが重要だ」と指摘する。建設業の農業参入では、経営感覚を取り入れた企業型の農業が生まれつつある。消費者ニーズを踏まえ付加価値を付ける努力が続けられている。こうした動きに追い風を送っていくことが、地方の活性化につながるのではないか。
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