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目標は松阪牛 畜産業に参入した建設会社20060829日経コンストラクション
公共事業の削減が続くなか,生き残りをかけて新たな事業に進出しようとする建設会社が増えてきた。
島根県の隠岐諸島に本社を置く飯古(はんこ)建設は,畜産業に参入した。子会社の育てた牛が2006年3月,東京食肉市場の初セリで,松阪牛クラスの1kg当たり3700円を超える値を付けた。
「完敗です」。市場に来ていた松阪牛の生産者は,飯古建設の田仲寿夫社長に,こう話しかけたという。「潮風でミネラル分を豊富に含んだ牧草が,良質の牛を育てている」と田仲社長は説明する。
輸送コストというハンディをもつ離島では,付加価値の高い商品を生産しなくては,市場の競争に勝ち抜いていけない。「島生まれ,島育ち」をうたい文句に,隠岐牛のブランド化をねらう。
飯古建設が拠点とする海士(あま)町に子牛の繁殖農家は多いが,肥育牛と呼ばれる食肉用の牛を育てる農家は少ない。これまで「隠岐牛」の名前が消費者に知られることは,ほとんどなかった。
畜産業を始めたきっかけは,牛のふん尿を確保することだった。同社は,建設廃材を細かく砕き,家畜ふん尿と混ぜてたい肥化する事業を手がけている。しかし,地元の農協から譲り受けるふん尿だけでは量が足りず,良質なたい肥が作れなかった。
「自分で牛を飼って,ふん尿を生産すればいいじゃないか」。そう考えた田仲社長は,2003年から牛舎の建設や繁殖牛の購入をし始めた。だが,農業法人でないと町から農地を借りられないことを知る。何かいい方法はないか,町役場に相談に行った。
地域の産業振興を模索していた町は,同社の農業参入に積極的に協力。構造改革特区の適用に乗り出した。民間企業に町有農地の貸し付けを認める「潮風農業特区」を国に申請し,2004年3月に認定された。
飯古建設は2004年1月,全額出資して隠岐潮風ファームを設立した。牛舎や牧場の整備など,約4億円を投資。地元の畜産農家を顧問に起用し,技術的な指導を受けた。
2006年7月時点で,繁殖用の牛と合わせて,約400頭を飼育する。町から借りた農地のうち,30haを使って牛を放牧,14haで牧草を栽培している。これまでの出荷量は1カ月当たり3〜4頭だが,2006年10月からは毎月10頭を出荷し始める。
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