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製品・技術紹介 (日経コンストラクション3月9日号)
道路を中心に進む建設構造物の老朽化 コスト削減をめざして開発進む補修技術
橋梁やトンネルなど道路構造物の老朽化が進んでいる。例えば、建設後50年以上経過した橋梁の全橋梁に対する割合は、現在の6%が20年後には47%と大幅に増加。塩害やコンクリートの中性化、アルカリ骨材反応などによる劣化も目立ってきており、高度成長期に建設された構造物が補修の時期を迎えている。
これらの補修費を含めた道路管理費は、国のコスト縮減の方針に沿って、減少傾向にあり、2007年度予算では5年前の2002年度に比べて3割の削減となる。一方で、各地で発生が予想されている大規模地震などに備えて、耐震性能の向上が求められている。ライフサイクルコストを抑えるため、計画的な補修の実施や補修技術を含めた維持管理技術の高度化も不可欠なテーマだ。
コストを抑えて道路構造物の耐久性能を高めていく―。こうした時代の要請に応えて開発が進められてきた最新の補修技術を紹介する。
【太平洋セメント】 ジオセット60シリーズ
地盤改良工事の粉塵を防止
テフロンを微量添加して特殊加工したセメント系固化材である。テフロンは化学的に安定しているので土壌や地下水を汚染する心配が無く、地盤改良工事の作業性や固化性能も損なわない。テフロンの微細な繊維網が粉体微粒子を捕捉して発塵および飛散を抑制する働きがあり、市街地や農地に近接した浅層改良工事においても、住環境や農作物、作業者の健康などに悪影響を及ぼすことなく施工できる。発塵量が従来の100分の1程度まで減少することから目視による作業状況の確認が容易になり、施工性や安全性も向上する。軟弱土やヘドロなどに広く利用できる「ジオセット61」、高有機質土の固化処理に適した「ジオセット62」、改良土からの六価クロムの溶出を低減できる「ジオセット63」の3タイプがある。
【電気化学工業】 RISラピッドエース
短時間で高い強度を発揮する低温に強い断面修復材
断面修復に用いるコテ塗り用のポリマーセメントモルタル。短時間で強度を発揮する急硬のプレミックスタイプで、低温での初期強度も高い。特に高強度が求められるプレストレスト構造物の補修工事に適している。 独自の特殊混和技術を応用して、硬化時間を短縮すると同時に強度を大幅に向上させた。工期短縮のほか、冬期施工での作業性も向上した。特殊セメントをベースにして、ポリアクリル酸エステル系の粉末ポリマーを配合することによって性能を高めている。既存の躯体との付着性も高く、ひび割れに対する抵抗性も高いなど、再劣化を防止して、補修後の寿命を大幅に向上させることができる。 気温が5度の場合でも、3時間後には圧縮強度が8.4N/mm2、曲げ強度も6時間後に3.5N/mm2に達する。28日後には圧縮強度が52.2N/mm2、付着強度は2.6N/mm2になる。プレミックスタイプのため、現場では水を加えて混ぜるだけで使用でき、作業性にも優れている。
【アストン協会】 CS-21/コンクリート改質剤
内部に残るセメントを活用
コンクリート構造物の内部に残るセメントを活用して、ひび割れ等の微細な空げきを埋め、耐久性を向上させるコンクリートの改質剤。コンクリートの水密性を高めるために必要な水和反応を加速させて、構造物内に残る未水和のセメント等を結晶化させることで空げきを埋める。表層の硬度を高め、耐久性を向上させる。施工は高圧水でコンクリートの表面を洗浄後、ローラーで塗布、その後散水。
劣化の激しい箇所や漏水ひび割れの止水等に補助剤CX-202との併用が有効。断面復旧時の鉄筋の防錆に有効な補助剤CC-21もある。
この材料は、特性を理解した上で施工することにより効果が発揮されるため、協会組織に所属する技術者によって施工管理が行われている。また、安定した品質確保のため、技術情報の共有にも力が注がれている。
【ファイベックス】 フィブラシート工法
少ないシート層数で高強度補強
フィブラシート工法は、軽量で高強度のアラミド繊維を用いた補修・補強工法。
高強度シートは1方向シートが最大120tf/m、2方向シートが最大60・60tf/mと強度が高いので、貼り付けるシート層数が少なくなり、施工の省力化や工期の短縮が図れる。そのうえ、重機などの施工機械も必要ないため、コストの削減にもつながる。
アラミド繊維は、電気を通さないため、施工中や施工後の電気的なトラブルが発生しない。特に鉄道の跨線橋やトンネルの補修・補強に適しているが、他にもRC床版の補強、木造住宅の耐震補強や鋼製柱の補強などにも用途が広がってきている。
工場製作された成型板によるアラミドプレキャスト工法は、施工空間が狭い場合や、現場での施工時間に制約がある場合などに偉力を発揮する。
【エレホン・化成工業】 フィックス工法
劣化原因などに応じた材料を選択できる断面修復工法
ポリマーセメントモルタルを用いたコンクリート構造物の断面修復工法。劣化原因や環境、構造物の種類などに応じて特殊セメントや骨材を配合し、再発を防止する。材料には、セメントのアルカリに対して高い耐久性のある合成繊維を含んでいる。きめ細かなネット状になって剥落を防止するため、ネットを張る作業が必要ない。粒度と粘土の調整が可能で、コテ塗りの作業性が向上、ダレやズレも発生しない。
厚付けタイプや速硬タイプ、軽量タイプ、軽量速硬タイプがあり、施工条件に合わせて選択できる。特殊セメントメーカーとしてのノウハウを生かして、収縮抑制や接着力などの性能を高めてあり耐久性も高いのも特徴だ。
【日本エルガード協会】 エルガード・システム
世界標準の電気防食工法 普及や技術の向上をめざす
コンクリート構造物の致命的な劣化現象である塩害を防止する世界標準の電気防食工法。エルガードシステムの普及や設計・施工・維持管理などの技術力の向上を目的として2001年協会を設立した。
基本技術は、1984年に米国のエルテック社が開発した技術を1987年に導入。鋭意研究開発を重ね、鉄筋やPC鋼材などのコンクリート内部の鋼材をすべて陰極にすることによって、腐食の原因となる反応を完全に消滅させて再劣化を防止する。
協会では、実構造物への積極的な適用や施工結果の公表などを通して、工法に対する信頼性の向上を図ってきた。同時に会員の技術力を結集して多様化する塩害ニーズに対する解決策を提案している。
【エステック】 エルガード・システム
ライフサイクルコストを削減 護岸や桟橋で多くの実績
陽極に耐久性の高いチタンを用いるなど、ライフサイクルコストの大幅な削減を可能にした塩害を防止する電気防食工法。エステックは日本エルガード協会の会員で、護岸や桟橋などの海洋構造物を中心に多くの施工実績をあげている。
塩化物イオンを含んだコンクリートを取り除いたり、鉄筋の防錆処理やコンクリート表面を被覆したりする必要がない。施工法には、チタンをエキスパンドメタル状に加工したチタンメッシュと網目の細かなチタンリボン、パネル状の3つの陽極方式がある。これらを活用すると同時に断面修復やひび割れ補修技術を組み合わせて実績を伸ばしている。
【オバナヤ・セメンテックス】 セメンテックスRB-エラスメッシュ(T)工法
厚塗りで工期を短縮 コンクリートの剥落を防止する
厚塗りができるコンクリート構造物の表面保護工法。作業性が高く、工程を削減、工期を短縮できる。
断面修復などの工程後に施工する。無機弾性型ポリマーセメントと水系弾性アクリル塗料の複合塗膜で構成し、躯体の動きに対する追従性が高く、ひび割れの発生を防止する。3軸のビニロンメッシュを併用しているため、剥落を防止、付着性能も高い。
短繊維を配合することによって、コテによる厚塗りが可能で、作業工程の削減を可能にした。水蒸気を通す性能があり、施工後に塗膜が膨れ上がったりすることがなく、耐久性が高い。中性化や塩害、凍害による劣化の再発を防止する。
【ローバル】 常温亜鉛メッキ「ローバル」
塗料のように塗ることができる1液タイプのメッキ材
常温で施工できる1液タイプの亜鉛メッキ塗料。施工後の塗膜の亜鉛含有率を96%以上に高め、溶融亜鉛メッキと同等の錆を防止する能力がある。
1液タイプなので、現場での配合作業の手間や配合後の使用時間の制限もない。一般の塗料のようにハケやローラー、スプレーなどで施工できる。硬化した塗膜には静電気を逃がす特性がある。劣化した亜鉛メッキの上に塗ると、亜鉛メッキの寿命を伸ばすこともできる。
2004年に品確法(住宅の品質確保に促進等の法律)の特別評価方法の認定を取得している。標準タイプのほか、上塗り対応、金属の光沢を持つもの、アルミを配合したタイプがある。
【宇部三菱セメント】 コンクリート補修材「アーマ」
劣化原因や施工条件に応じた施工法に対応する
原因や症状の異なるコンクリート構造物の劣化に対応する補修材料。緻密で耐久性が高く、既存のコンクリートとの付着性能にも優れ、一体化して再劣化などを防止する。
ひび割れ注入材や断面修復材、防錆材、プライマーなどがあり、中性化や塩害、凍害、アルカリ骨材反応などあらゆるコンクリートの劣化原因に対応できる。症状や現場の条件に応じて施工方法も選択することができる。例えば、断面修復材は左官と吹き付け用のほか、型枠を用いた充てん工法用がある。ひび割れ注入材は、0.2mm以上の表面ひび割れ幅に注入できる。再発の防止効果を高めるため、修復材や注入材に混ぜて用いる劣化防止材もある。
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