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発注者の入札手続きミスが頻発する理由20070522日経コンストラクション
厳格であるはずの入札手続きで,発注者のミスが相次いでいる。例えば,神奈川県が実施した入札で2006年10月から12月までの2カ月余りの間に5件の積算ミスがあった。新潟市では2007年3月,53社が応札した一般競争入札で積算ミスがあり,52社が最低制限価格を下回って無効になった。両自治体とも,こうしたミスは過去になかったという。
いずれも,落札できなかった入札参加者が,積算ミスの疑いを発注者に指摘。発注者が積算内容を調べたところ,ミスが判明した。入札参加者に公表していた設計内容は正しかったが,職員が積算ソフトに間違った単価や数量を入力していた。神奈川県県土整備部の宮本恭一経理課長によれば,積算ミスをした担当者はみな中高年の職員で,コンピューターの操作に不慣れだった。
自治体発注の工事ではいま,最低制限価格ギリギリの応札が少なくない。最低制限価格は各自治体が独自の基準で設定するが,おおむね予定価格の70〜85%の範囲にある。最低制限価格を下回る金額での応札は無効となる。発注者の積算が過大だったら最低制限価格が上がり,新潟市の例のように本来は有効なのに無効になる者が出る。逆に,過小積算だったら最低制限価格が下がり,本来は無効の者が落札する可能性がある。
積算ミス以外にも,入札参加資格のない会社を審査で見抜けなかったり,総合評価落札方式での必要書類を取り違えたりした発注機関がある。
組織のチェック機能が低下
発覚したミスのほとんどは,担当職員個人の単純ミスだ。職員に対する処分は発注機関によってまちまちで,最も重いところでも戒告止まりだ。停職や減給処分は出ていない。処分の全くない発注機関もある。結果の重大さ,入札参加者が何かミスした場合の処分の重さに対し,身内に甘いと言わざるを得ない。
他方,担当者個人を懲罰すればミスがなくなるというわけではない。一般競争入札や総合評価落札方式といった導入して間もない入札方式で発注者のミスが多発していることに気付く。ここ数年,低入札対策や談合防止策の強化によって入札・契約制度は変わり続けている。国土交通省職員組合の加藤順一書記長は,「かつては制度が短期間で変わることはなかったし,職員はいまも2年くらいで異動するので,習熟度が高まらない」と指摘する。
さらに,発注機関は行財政改革として,職員数の削減や業務の情報化を進めている。積算などの利便性が高まった半面,担当者個人による単純ミスが増え,組織としてのチェック機能が弱まった恐れがある。制度が変わるのは社会の要請なので止められないが,組織体制や人材育成方法に見直しの余地はありそうだ。
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