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脱『うまみ』耐えられず 業者ら『お茶代も出ない』20070604東京新聞
東京都発注などの公共工事で急増していることが判明した入札不調。かつては「ばらまき」「業者にとっておいしい」といったイメージが強かった公共工事だが、建設業界での競争激化が進む中、入札不調多発は、追いつめられた業者がまるでストライキをするかのように、役所側の提示額に「ノー」の意思表示をしているともいえる。税金のむだ遣いをなくす上で、入札をめぐる改革は避けては通れないし、さらに進めるべきだ。一方で、必要な工事が進まない問題が起きてしまうのは悩ましい。 (中沢誠)
都内区部のある建設業者は昨年、学校給食室の改修工事を請け負った。壁を壊してみたところ、内部で柱のコンクリートがはがれて鉄骨がむき出しになってしまっている部分が見つかった。「地震が来れば大変だ」。放置できずに急きょモルタルやコンクリートで補強した。しかし役所からはそのための追加予算が下りず、工事費は業者がかぶった。
「お茶代も出ない」。多摩地区の建設会社役員は、もうけが少ない自治体発注の改修工事をこう例えながら、入札を辞退した理由を話した。中でも業者が嫌がるのが、学校の改修や耐震工事。子どもたちへの影響を考えて夏休み期間中の工事が多く、短い工期で完成させるため、どうしても残業や人の補充で経費はかさむ。
「指名競争入札だったころには、次も指名をもらおうと無理しても受注していた」と、ある建設会社社長は振り返る。中小建設業者らでつくる「中小建設業制度改善協議会」の星野輝夫会長は「談合があったころは仕切り役が赤字工事も配分して、不調が出ないように調整していた。役所も赤字工事を発注したときは『次は面倒見るから』と便宜を図ってくれた」と実情を明かす。
脱談合により価格競争が激化。自治体が発注する小規模工事への大手の参入も目立つ。
低価格入札の増加や公共工事のコスト削減から、予定価格が下がっているという。
一方で、資材費や人件費は上がっている。
「予定価格と図面を見ただけで赤字と分かるものもある。企業努力を超えている」と悲鳴を上げる業者も。さらに、役所からは工事の品質や安全管理も厳しく求められる。
星野会長らは五月十五日、国土交通省に予定価格の適正化などを求める要望書を提出した。「昔は入札を辞退するなんて役所が怖くてできなかった。それだけ業者が追いつめられている」
全国に先駆けて一般競争入札を全面導入した長野県では、昨夏の豪雨災害を受け復旧工事を発注したが、応札者なしという異常事態が相次いだ。
星野会長は「談合は許されるものではない。しかし、行き過ぎた競争により、体力のない中小業者は疲弊してきている。このままでは、耐震や防災など地域の安心安全を守る担い手がいなくなる」と話した。
学校耐震化に余波
公共工事の入札不調のあおりは学校にも押し寄せ、校舎などの耐震工事や改修工事での入札不調が目立つ。工事延期や計画変更を迫られる自治体も少なくない。二〇〇六年度、都内の学校耐震工事の入札不調は、十市区での計二十三件にも上り、担当職員らは頭を悩ませている。
三鷹市は〇六年度、市立第一小学校での耐震を含む改修工事を制限付き一般競争入札で行ったところ、二度にわたって参加業者が全員辞退。今年五月、設計を見直して再度入札したが、またも不調に終わった。六月に四回目の入札を行う予定だが、不調となれば〇七年度内の完成も危うい。
同小の工事は、三年計画で〇四年度から始まった大規模な改修工事。市の基本計画では、〇七年度から次の小学校の大規模改修に移る予定だったが、第一小の工事の遅れで、着工時期の見通しは立っていない。
同市では〇六年度、第一小を含め計三校の耐震工事が入札不調に。同市教委施設課の若林俊樹課長は「いつ地震が起こるか分からない。一刻も早く着工したいのだが」と苦しい胸の内を語った。
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