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日銀展望リポート、利上げ姿勢を「封印」20080501朝日
日本銀行は30日、金融政策決定会合を開き、08〜09年度の経済動向や金融政策の考え方についてまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を発表した。これまでの利上げ姿勢を「封印」する内容で、当面は現状の金利水準を続けていくとみられる。
■企業景況感の悪化に配慮
展望リポートは、日銀の金融政策を占う重要資料で、年2回まとめられる。前回の昨年10月には「金利水準は引き上げていく方向にある」としていたのを、今回は「予(あらかじ)め特定の方向性を持つことは適当ではない」と変更。明らかな方向転換で、利上げ姿勢は大きく後退した。白川方明総裁は会見で「従来は(利上げという)大きな方向感があったが、今回は足もとの経済が下ぶれし、リスク要因も大きくなっている」と述べた。
会合では、短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を現行の年0.5%に据え置くことも、政策委員の全員一致で決めた。
背景にあるのは企業の景況感の悪化。同リポートでは国内の景気認識を前回の「緩やかに拡大」から「エネルギー・原材料価格高の影響などから、減速している」に引き下げた。「生産は横ばいで、企業収益は弱く、設備投資の増勢は鈍化している」(白川総裁)として、生産の拡大が所得や消費を押し上げて生産がさらに拡大する「好循環メカニズム」という利上げの根拠としてきた言葉も削除した。
実質国内総生産(GDP)の成長率見通し(政策委員予想の中央値)も、08年度が10月の2.1%から1.5%に下方修正し、09年度も1.7%と潜在成長率並みにとどめた。
ただ、一時的に利上げ姿勢を凍結しても、長期的には「金利正常化」を目指すとの見方も市場関係者にはある。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「展望リポートでも緩和的な金融環境を強調するなど(利上げ志向の)タカ派的な姿勢がかいま見える。来年に向けて利上げへのタイミングを探っていくのではないか」と話す。
■読めぬ物価上昇率
展望リポートで日銀は、消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)の上昇率の見通しを、08年度は1.1%、09年度は1.0%とした。0.4%ほどだったこれまでの予想からは大幅な引き上げだ。
過去の実績を見ると、実際の物価上昇率は日銀の予想を下回る例が目立つ。今回の予想も多くの市場予測よりやや高めだ。根拠について、日銀は、石油製品や食料品の価格が今後も上がり続けるとの見通しに加え、賃金が緩やかな上昇に向かうとの見立てなどをあげる。
日銀政策委員が中長期的に望ましいとする物価上昇率は0〜2%。引き上げたとはいえ、今回の予想値はちょうどその中間で、展望リポートでは「わが国経済は物価安定のもとで持続的な成長を実現していく可能性が高い」とした。日銀にとっては利上げも利下げも必要ない、いわば「居心地の良い環境」だ。
問題は、物価が日銀の予想を超えて上昇した場合だ。
欧州中央銀行(ECB)は4月10日、10カ月連続となる政策金利(年4.0%)の据え置きを決めた。ユーロ圏では景気減速の懸念の一方で、原材料高や賃上げ圧力からインフレ懸念も広がり、欧州委員会が予測する08年の物価上昇率は3%を上回る。据え置きはインフレ抑制を優先した結果だが、景気を考えれば利上げにも踏み出せない。物価上昇が本格化すれば日銀も同じ悩みを抱えることになる。
モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「最近の原材料価格の高騰には、日銀の金融政策の効果は限られる」と指摘する。
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