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プロジェクトe リサイクルへの挑戦(4)鹿島のアスベスト除去技術20080522FujiSankei Business i.
■安全、工期は大幅短縮
高度成長期に誕生したオフィスビルは、最新の建物に比べ設備や性能面で見劣りする。このため有力テナントを招致するには、建て替えや大規模リニューアルによって新しいビルへと蘇生(そせい)し、競争力を高めるという戦略が不可欠だ。しかし、その過程では大きな問題が立ちはだかる。アスベストの除去作業だ。
断熱や保熱といった役割を果たすアスベストは、とくに高度成長期のビルに大量採用されていた。ただ、飛散した繊維を肺に吸入すると潜伏期間を経た後に肺がんや中皮腫の病気を引き起こす確率が高い。このため規制が厳しくなり、除去の際にも慎重な作業が求められるようになった。
具体的には現場を養生し、密閉。完全防護服を着用し金属ヘラを使いながらそぎ落としていく。その後、鉄骨面などの残渣物をブラシなどで清掃する。しかし、真夏の室内温度は50度にも達するケースがあり、非効率な作業を強いられる。結果として膨大な工期・コストを要し、プロジェクトが滞るケースも。
最大の難関であるアスベスト除去をいかに進めていくか−。関係各社が頭を悩める中、新たな除去技術が脚光を浴び始めている。高圧の水をジェット噴射して剥離除去する鹿島の工法だ。
アスベストは乾式、湿式など3種類の吹き付けによって施工される。鹿島ではそれらの成分や硬さなどに合わせて、最適な水量・水圧を実現するノズルを開発した。例えば乾式吹き付けに対応するにはミストによってたたき落とすような形で処理を行う。除去したアスベストに水はほぼすべて吸収され、床面に残る水は微量だ。
威力が発揮されたのは、JFEホールディングス旧本社ビル(東京・大手町)の解体工事。延べ6万8000平方メートルのアスベストを除去するという、国内最大規模の工事だった。これまでの手作業であれば、同じ人数で取り組んだと想定した場合、1年以上かかるとみられたが、このプロジェクトは3カ月で済んだ。また、ヘラによる作業だと大量の繊維が空気中に浮遊するが、常に水を散布している状態であるため、今回は測定できないほど量が減った。作業空間の温度も38度程度にまで低下。作業空間は大幅に向上した。
資源が少ない日本にとって、既存の建築物をできるだけ長持ちさせるストック型社会への脱皮は喫緊の課題。このためビルを生まれ変わらせるには、解体して建て直すのではなく、構造体を有効活用してリニューアルを図る手法が重みを増す。水を使用するため、「いかに漏電リスクを防止できるか」(磯部隆寿・建築構造グループ上席研究員)という課題が残るが、ビル分野の資源の有効活用という課題に一定の道筋をつけたといえよう。(伊藤俊祐)
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