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食料自給率高める道筋示せ20100407日経
政府が今後10年の農政の指針となる「食料・農業・農村基本計画」を決定した。食料自給率(カロリーベース)を2020年度に50%に引き上げると明記した。08年度で41%だから、かなり高い目標である。
世界的な人口増加や新興国の経済成長に伴い、中長期的には農産物の需給はひっ迫するだろう。日本の自給率は際立って低いだけに、意欲的な目標を掲げた点は理解できる。
主要作物の20年度時点の生産目標をみると、輸入量が多い小麦や大豆の生産を約2倍に増やす。水田を有効に活用し、米粉用と飼料用のコメは120倍に拡大するという。
しかし、その実現の道筋はあいまいだ。コメ農家を対象にモデル事業が始まった戸別所得補償制度が柱になるが、自給率の向上にどのようにつながるのかわかりづらい。
人為的に農産物の価格を引き上げるのではなく、財政負担で農家を支えることは世界の農政の潮流である。高齢化で農業の担い手が減るなかで、再生産が可能な所得を補償することは一定の意味があるだろう。
ただし、兼業農家や小規模農家まで一律に対象にするのはおかしい。補助金がもらえるからと農業を続けるような人まで支援すれば、専業農家や生産法人への農地の集約が進まず、生産性も高まらない。
計画では「規模拡大を否定するものではない」と書いているが、大規模化を促す具体策は乏しい。これではいつになっても輸入農産物に対抗できない。農家単位での支援を打ち出したことで、一部地域では集落営農組織を解散する動きも出ている。
政府が農業再生のもうひとつの柱と位置づける農業の「6次産業化」もこれでは危うい。農産物の生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)、販売(3次産業)まで手掛けて付加価値を高めるこの戦略も、やる気と経営感覚がある農家や法人に支援を集中してこそ可能だろう。
日本の農産物市場の開放にも相変わらず消極的だ。農家の所得を補償するのは、高い関税を下げて市場開放しても生き残れる仕組みを作ることが本来の狙いのはずだ。
新制度を本格実施するには1兆円を超す財政負担が要る。内向きな農政では国民の理解は得られない。
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