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死角だった建設残土の安全対策、東広島市の土砂崩れ20121127日経コンストラクション
山林の谷間に盛られた建設残土が大雨で流出し、土砂が下流の民家を押しつぶした。急な斜面を埋め立てたにもかかわらず、排水施設は未整備。県の土砂条例も国の宅地造成等規制法も適用されず、行政による規制の死角に入っていた。
この土砂崩れが起きたのは2009年7月。広島県東広島市で建設残土が崩れ、民家が倒壊。住民1人が死亡した。この災害を巡って遺族が県や市を訴えた裁判で、広島地方裁判所は今年9月26日、残土処分場の事業者への規制を怠ったとして、慰謝料など計約2300万円を支払うよう命じた。行政側はこれを不服として控訴している。
争点となったのは、残土の搬入が宅地造成等規制法の適用対象となるかどうかだった。判決では、残土による谷の埋め立てが宅地造成に当たると認定。同法の規制区域内なのに適用しなかった行政側に落ち度があるとした。
国土交通省都市安全課によると、同法は残土処分場を対象にするとは明示していない。ただし、残土処分場でも、将来的に宅地に転用される可能性があるなどとして、同法を適用している自治体もあるという。
県の土砂条例の対象外
一方、広島県が残土処分場の主な規制手段と考えているのは、2004年に制定した「土砂の適正処理に関する条例」(土砂条例)だ。ただし、この条例の対象は面積が2000m2以上の処分場。崩壊した処分場は約1250m2だったので、この条例に基づく許可を取る必要はなかった。
県からの依頼で崩壊原因を調査した広島大学工学部の土田孝教授は、「条例の許可対象を面積だけで決めるのは、技術的にみて不合理だ」と指摘する。
この現場は傾斜が急な谷間だが、土砂条例では勾配の大きさは考慮しない。しかし、傾斜が大きければ勢いよく土砂が流出し、広い範囲に被害をもたらす。土田教授らの調査によれば、この現場では流動性が高まった約7000m3もの土砂が土石流のようになって流出した。土砂の移動距離は約500mに及ぶ。面積が小さいから危険性が低いとは言えない。
残土処分を手掛ける事業者がこの土地を2004年に買い取り、土砂の搬入を始めた。その際、排水施設などは設置していない。
「地盤工学の観点から言えば、この処分場が崩壊することは十分に考えられた。排水施設も造らず、そのまま土を盛るなど通常はあり得ない」と土田教授は話す。条例の許可対象ではないので、条例に規定された安全基準が適用されなかった。
この災害について、詳しくは日経コンストラクション11月26日号の特集「土に潜む“落とし穴”」で取り上げている。この特集では、上記の土砂崩れをはじめ、事前に危険とは考えていなかった場所で起こった災害事例を挙げ、危険度の判断基準を改めて考え直す必要性を指摘している。
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