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日本郵政、描けぬ将来像 政治にほんろうされ「経営はガタガタだ」20121203産経
■影落とす政治情勢
政治に翻弄され、曲折の末に今年10月に発足した新生・日本郵政グループの経営の先行き不透明感が強まっている。傘下のかんぽ生命保険が申請した学資保険の新商品の認可をめぐり、政府・与党内の見解が対立。来年4月の新規業務開始に「黄信号」がともる。さらに深刻なのは長期不振が続く赤字体質の郵便事業の足かせだ。郵便の赤字を金融事業の利益で補填(ほてん)する構図の解消は見えず、新規業務がスタートしても市場の収益成長期待は高まらない。衆院選後の政治情勢が再び経営に影を落とす可能性もあり、2015年秋までを目指す上場計画は視界不良だ。(フジサンケイビジネスアイ)
◆上場計画に暗雲
「保険業法上の認可の見通しが立たない状態で、販売の準備には入れない」
日本郵政の関係者は困惑した様子で話す。かんぽ生命の学資保険の新商品は、11月30日に総務省と金融庁が郵政民営化法に基づき認可する一方で、金融庁が保険業法に基づく認可を先送りし、政府内の対応が食い違う異例の形となったためだ。
保険業法上の認可の見通しについて、関係閣僚の見解に温度差があることも郵政側を迷わせている。
下地幹郎郵政民営化担当相は、30日の閣議後会見で「(来年の)4月1日から販売できるため、(新商品の)販売準備は進められる」と発言。これに対して、中塚一宏金融相からは「4月というのは会社側に立った発言。認可時期は予断を持てない」と、下地氏の発言を打ち消す言葉が飛び出し、政府内の足並みの乱れを浮き彫りにした。
◆「経営はガタガタ」
日本郵政が申請する新規業務は、学資保険のほか、ゆうちょ銀行が申請する住宅ローンや法人向け融資など3つの審査が残っている。
これらについても政府内には「民間金融機関と比べてリスク管理態勢の整備が遅れている」(金融庁幹部)との厳しい指摘があるほか、金融業界からは「民業圧迫」との強い反発があり、学資保険以上に認可のハードルは高いとみられる。
郵政側は、いずれも新年度に合わせて来年4月から業務をスタートするシナリオを描いていたが、衆院解散を受け、政府内の風向きは認可は急がず、とにかく利害調整が面倒な問題は選挙後に判断を先送りするムードが強まっている。こうした状況に、郵政側は焦燥感を募らせている。下地郵政民営化担当相の言葉を借りれば、「日本郵政グループの経営はガタガタ」だからだ。
同社の経営状況をみると11年度末の貯金残高はピークの1999年度比で32.5%減、保険契約数も96年度末比で53.7%と激減している。
さらに、追い打ちをかけているのが赤字体質の郵便事業だ。電子メールの普及による郵便物の減少や宅配業務の競争激化などで、12年3月期まで3期連続の最終赤字を計上している。
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■郵便事業 改革待ったなし
日本郵政は、郵便事業の黒字化に向けて集配業務の効率化や人員配置の見直し、賞与の削減など改革を急いでいる。
だが、先細りが続く郵便事業は「経費の6割強を占める人件費の削減で大なたをふるう必要がある」(エコノミスト)との指摘もあるほど、再生が難しい状況だ。
しかも、赤字体質の郵便事業を持ち株会社体制のもとで存続させながら、郵便貯金や簡易保険の利益で補填する今の経営モデルは、郵便事業の抜本的な改革を遅らせることにもなりかねない。
このため識者の中には、国に不可欠なユニバーサル(全国均一)サービスである郵便事業は「地方自治体に移管すべきだ」(石川和男・東京財団上席研究員)と、早期に経営の枠組みを見直すべきだとの意見もある。
日本郵政にとって、グループ全体の利益の約9割を稼ぎだすゆうちょ銀行とかんぽ生命の顧客離れを食い止めるためにも、新規業務による事業のてこ入れは喫緊の課題だ。ただ不振事業の維持の十字架を背負わされたままでは金融2社はもとより、グループ全体の企業価値は高まっていかない。
政府・与党は、日本郵政が提示した15年秋までの株式上場計画に沿って政府保有比率を最終的に3分の1に減らし、民営化の進展を示すと同時に、株式の売却益を東日本大震災の復興財源に充てる狙いだった。
しかし、新規業務の認可をめぐる一連の対応は「スピード感が乏しい」(アナリスト)との失望を招くとともに、改めて「政治銘柄」としての経営リスクを市場に印象づけた形で、動き出したかに見えた上場計画は政権交代の可能性も浮上する政治に再び翻弄されそうだ。(松元洋平)
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