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談合世話役が官と組んだら逆らえない20130517日経コンストラクション
「競争性確保」と「地元保護」の両立が問題解決のカギ
高知県内で公共工事を巡る談合問題が後を絶たない。1月には越知町で2010年の工事入札の談合が発覚したほか、国土交通省四国地方整備局が四万十市内の発注工事2件の入札を談合疑惑で取りやめた。四国地整は3月にも、談合情報の寄せられた四万十市内などの発注工事4件の入札で開札を延期している。
なかでも、1月の四国地整の入札中止は、談合問題の根深さを物語る。談合疑惑が発覚したのは、昨年11月22日の開札後。公正取引委員会が四国地整の官製談合を認定してから、わずか1カ月ほど後のことだ。その時期に、入札参加者が当の四国地整の発注工事で談合と疑われるような行為をしていたことになる。
高知県内の業界関係者らの話を総合すると、県内の公共工事では今でも談合が続いている可能性がある。昨年秋に公取委が“摘発”した組織とは別のグループが動いているからだという。「談合は昔から連綿と続いてきた。昨年の事件はたまたまその一部がばれただけ。県内の全ての談合が摘発されたわけではない。今後も県内で談合が発覚する可能性がある」といった証言もある。
実際、高知県内ではこの20年ほどの間に、各地で談合事件が頻発している。高知県建設業協会によれば、1994年の室戸市を皮切りに、95年に南国市で、96年に土佐清水市で、97年に三原村で、2005年に高知市と物部村(現香美市)で、それぞれ談合が発覚した。しかも、その大半が自治体の首長や職員が逮捕される汚職事件に発展している。
高知県内の過去の主な談合事件
時期 発注者 事件概要
1994年 室戸市 94年1月の入札で談合を認定、室戸市の市長が受託収賄容疑で逮捕
95年 南国市 94年9月の入札で談合を認定、南国市の市長と職員が収賄容疑で逮捕
96年 高知県、
土佐清水市 95年6月の県の入札と93年11月の市の入札で談合を認定、市長と市議が逮捕
97年 三原村 95年11月の入札で談合を認定、村長が収賄容疑で逮捕
2005年 高知市 04年10月の入札で談合を認定、落札企業による暴力団への請負額の一部の上納が発覚
05年 物部村
(現香美市) 03年1月の入札で談合と認定
(資料:高知県建設業協会)
「喉元過ぎれば熱さ忘れる」
高知県建設業協会は、94年以降の不祥事を受け、97年に再発防止を目的とした「行動憲章」を作成。以降、毎年開く総会の資料の冒頭に行動憲章を掲げてきた。しかし、昨年の官製談合を主導したミタニ建設工業の三谷一彦社主(当時)が会長に就いた翌年の09年から、総会資料への憲章の掲載をやめている。
結局、過去の不祥事の教訓や行動憲章が生かされないまま、昨年の官製談合に至った。要因について高知県建設業協会は、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のことわざを引き、「古い騒動の記憶が薄れ、順法精神が希薄になりつつあった」とみている。08年ごろからは講習会の開催など、独占禁止法に関する取り組みもほとんど行わなくなっていた。
高知県建設業協会は1月22日、談合再発防止を目的に、倫理委員会と公益通報制度を柱とする「改善計画書」を作成した。山中栄広会長は、「過去の過ちを繰り返さないためには、コンプライアンス(法令順守)の取り組みを一過性に終わらせず、根気よく続けていくしかない」と話す。
地域建設業の談合が次々発覚
もっとも、談合問題に揺れている地域は、高知県だけではない。国や自治体が地方で発注する工事を巡って、地元の建設会社が数十社規模で談合を繰り返す「ローカル談合」が、このところ相次いで発覚している。
地方における最近の主な談合事件
発注機関 山梨県 茨城県 石川県、輪島市 国土交通省、高知県
行政処分日 2011年4月15日 2011年8月4日 2011年10月6日 2012年10月17日
違反企業数 51社 72社 80社 44社
うち排除措置命令 36社 63社 68社 37社
うち課徴金納付命令 37社 50社 51社 37社
課徴金総額 7億5682万円 2億9227万円 6億7005万円 17億5548万円
(資料:公正取引委員会、高知県)
公正取引委員会は3月27日、千葉県などが発注する土木工事の入札で談合を繰り返していたとして、千葉県建設業協会山武支部と同支部加盟の建設会社三十数社に対して、独禁法違反の疑いで立ち入り検査した。
公取委は11年にも、山梨、茨城、石川の3県で談合を次々と摘発している。4月に山梨県の発注工事で計51社を、8月に茨城県の発注工事で計72社を、10月に石川県と同県輪島市の発注工事で計80社を、それぞれ独禁法違反として認定した。
このうち、山梨県の事件では、違反企業の多くが1994年にも独禁法違反で課徴金納付命令を受けていた。茨城県の事件では、県職員が落札予定者の決定に関与していたことから、県知事が官製談合防止法に基づく改善措置要求を受けた。いずれも、建設業協会など団体支部が入札参加希望者の連絡窓口になっていた。
このように、地方の建設業界では、公共事業を巡る談合が長年続いてきた。高知県の事件も含め、似たような構図の事件も各地で繰り返し発覚している。背景に何があるのか。
高知県内の談合に加わった関係者の一人は、その要因の一つとして、建設業協会などの団体活動の問題を挙げる。「日ごろ協会で顔を突き合わせているのに、いざ入札のときだけ真剣勝負になれるかというと、そういうわけにもいかない」。
別の関係者は、談合の動機を次のように語る。「世話役が官と組んだら、誰も逆らえない。世話役は官からの情報で金額(予定価格、調査基準価格)と点数(総合評価の技術評価点)を全て把握している。その気になれば、どんな工事でも取れる。裏返せば、世話役に逆らうと、工事が取れなくなる。生る残るためには、世話役に従わざるを得なかった」。
企業の3割が「談合は必要悪」
国交省や高知県、高知県建設業協会などが、昨年の高知県内の談合事件について、地元の建設会社に対して行った意識調査の結果をみると、談合に関わった背景や要因として最も多かった回答は、公共事業の減少による経営環境の悪化だ。
確かに、地方の建設会社にとって、それが大きな要因であることは間違いない。しかし、前述した高知県建設業協会の過去の談合事件や山梨県の談合事件のように、少なくとも現在より公共事業量が多かった1990年代にも、ローカル談合は次々に発覚している。公共事業の減少が談合の決定的な要因ではないだろう。
「最終的には、パブリックとは何かが問われている」。こう話すのは、高知県談合防止対策検討委員会の委員を務める渡辺法美・高知工科大学教授だ。「コンプライアンスは自発的な活動だ。受発注者双方が公共事業というパブリックな仕事に就いている自覚を持ち、互いに確認し合うことが重要だ」(渡辺教授)。
その意味では、国交省が四国地整の職員と同管内事務所のC等級企業に対して行った意識調査の結果は、示唆に富んでいる。「談合は必要悪」とする回答が職員で5%、企業で27%あった。こうした官民双方の意識が談合根絶を困難にしている。
高知県内の官製談合を調査してきた国交省の再発防止対策検討委員会の委員を務めた郷原信郎弁護士は、次のように指摘する。「談合を正当化する理屈を残してしまっている、今の地元建設会社に対する発注の実情をよく考えてみる必要がある」。
価格競争で地元建設会社が倒産すれば、地域の防災力も失われる。それを防ぐには、談合で地元企業を守らなければならない。そんな業界の理屈に発注者が同調しかねない環境が地方に残っている。それが問題だ、と郷原弁護士はみている。その解決の手立てとして郷原弁護士が提案するのが、地域貢献を高く評価できる入札契約制度や、複数の地元企業による共同受注制度だ。
競争性の確保と地元の保護という相反する政策をどう両立させるか。この難題を解かなくては、いつまでたってもローカル談合を根絶することはできない。
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