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逐次的調整に生産性効果/韓国・リー延世大教授BIM主導が成功のカギ20160706建設通信
「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)でプロジェクトを支援するのではなく、主導していくことが成功のかぎを握る」と語るのは、公共工事にBIMの全面導入を決めた韓国で10年にわたってBIMの研究や開発に携わってきた延世大教授のガン・リー氏だ。日本建設情報総合センター(JACIC)が5日に都内で開いたセミナーに登壇し、BIM成功の道筋を分かりやすく解説した。
韓国調達庁がBIM導入のロードマップを示したのは2008年。試行導入しながら、12年から5億円以上のプロジェクトを対象に範囲を広げ、16年からは全面導入に踏み切った。リー氏によると、韓国のBIM導入の波は「上辺だけのBIM」「原始BIM」「図面主導」「BIM主導」の4つに大別される。
08年の導入初期は「設計者自らがモデル作成を行わず、さらに業務にも使わない上辺だけのBIMが横行していた」と振り返る。12年以降は「従来の2次元図面に並行して3次元にも取り組む図面主導のBIMが増え出した」と解説。16年からは「あらゆる部分にモデルを活用するフルBIM(BIM主導)の流れが出てきた」と普及が着実に進む状況を説明する。
1カ月前にまとまった調査によると、韓国では図面主導BIMが53%と大半を占める中で、フルBIMも15%まで上昇してきた。ただ、上辺だけのBIMもまだ13%存在しており、依然として導入に後ろ向きな状況が一部で見られることを指摘した。
「大切なのは、どうやってBIMを使うかではなく、直面するプロジェクトの課題を見極めること。課題を設定した次にはゴール(目標)を位置付け、その目標を達成するための評価指標を示すことも欠かせない。できるだけ初期段階に検討の時間を設ければ、プロジェクト後半の大きな手戻りは解消される」とつけ加える。
リー氏は米国の製薬施設プロジェクトを例に、BIM成功のポイントについて「BIMを統括するマネジャーの存在が大きい」と強調する。機械、電気、配管の設備調整で、BIMマネジャー2人の生産性を比べたところ、全体調整の仕方によって業務効率に違いがあることが明確になった。
BIMの全体調整を「並行的」に行った場合と「逐次的」に調整した場合では、逐次的が並行的な調整方法に比べて3.6倍もの効率化につながったという。「これまで同時並行の作業がBIMのやり方として注目されてきたが、これでは調整役のBIMマネジャーが関係者全員に情報をリアルタイムに出さなければいけないため、業務が集中してしまい、全体が同時並行で動くために干渉部分などが大幅に発生してしまう恐れもある」
そこで「ある程度の情報を固めてから順を追って対象者を広げていく逐次的が有効である」と主張する。
設備調整の場合、BIMマネジャーはまず全体の軸になるダクト担当にモデルを与え、そこで骨格を固めた上で配管担当など次の工程にモデルを出す。こうした逐次的な流れによって干渉部分はなくなり、そのための手戻りも大幅に改善される。
リー氏は「BIMでプロジェクトを支援するという発想ではなく、BIMでプロジェクトを主導する発想が重要になる。ただ、プロジェクトによってはほかにも最適な調整方法はある。実はBIM先進国の米国、シンガポール、英国もより良いBIMの使い方を模索中」とし、いかにマネジメントするかがBIM成功の秘訣であることを訴える。
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