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大手ゼネコン/現場溶接工の確保急ぐ/建築ピーク控え不測事態にも備え20160914建設通信
【清水は独自試験で費用負担】
2017年以降から急増が予想される民間の大規模建築工事を前に、大手ゼネコンが鉄骨の現場溶接工確保強化に乗り出している。さまざまな要因で工程変更を余儀なくされた場合に、高度な技能を持つ溶接工が少ないことが施工体制に最も影響が大きいと判断した。鉄骨の現場溶接工事のピークは、18年秋以降とみられる。鉄骨溶接工確保強化の動きは、仮に予定した工程の変更が起きても工期順守のための万全な施工体制構築のリスクヘッジとも言えそうだ。
清水建設はことし4月から、鉄骨の現場溶接技術資格のうち最も難しく設計事務所の評価も高い、AW検定(建築鉄骨溶接技量検定)に不合格となった場合でも、AW検定に準拠した独自試験に合格すれば、自社設計・施工案件すべての現場で溶接作業が行えるほか、独自試験に必要な費用も清水建設が全額負担する、新たな取り組みを始めた。
具体的には、現場溶接試験で行われる「下向き(梁溶接など)」と「横向き(柱溶接)」の2つの実技でどちらか一方が不合格となり、AW検定不合格となった溶接技能者に対し、清水建設が独自に行う「SCAW技量付加試験」で実技試験に合格すれば、清水建設の設計・施工案件すべてでAW検定認定者と同じ作業ができることを決めた。
AW検定不合格者でも自社施工案件だけに通用する独自試験を行う取り組みは、大手ゼネコン5社などは既に行っている。ただこれまでは、ゼネコン各社の独自認定で溶接作業ができるのは独自認定対象の現場だけだった。
清水建設が4月から始めた取り組みは、自社の設計・施工案件ならどこでも作業が可能になることを認めたことが新しい。さらに独自の試験にかかる20万円程度の費用も初回に限り、清水建設が全額負担するのが最大の特徴。独自資格の期限は年度末までの1年間。次年度に再度AW検定を受けてもらうのが理由。既に「他社も同様の対応を始めている」(清水建設)が、費用負担の対応はそれぞれ異なっているとみられる。
そもそも民間資格であるAW検定は、1年に一度しか行われず、3年に一度の更新時にも2つの実技試験を受ける必要があるなど技能者検定の中でも最難関と言われる1つ。そのため、ベテランの溶接技能者でも更新試験当日の体調次第で、1つの試験が不合格になるケースもある。不合格になれば、翌年の試験合格までの1年間、AW検定認定の溶接技能者としての仕事はできない。ベテランで高度な溶接技能を持っていても、更新検定で不合格になれば単価の高いハイグレードの鉄骨溶接作業ができず、職人の士気低下のほか、元請けにとっても数が少ない高度な鉄骨溶接工確保に苦慮することになる。
直近の試験の合格率も79%、工事現場溶接の資格者も全国で967人(4月1日時点)しかいない。そのため民間資格でありながら、発注者や設計事務所は規模の大きな鉄骨造の場合、AW検定認定資格を持つ溶接作業費を求める動きが進んでいる。
今回、清水建設がAW検定に準拠した独自認定を受ける協力企業の溶接技能者を増やすために、協力企業が本来負担する独自認定試験費用を元請けが負担するなど新たな対応に踏み切ったことについて、同社建築事業本部調達・見積総合センターの三澤正俊所長は、「当面の建築需要の山(ピーク)までの間で、最大のボトルネック(工程上の障害)工種は鉄骨溶接」と断言。その上で、「(今回の対応は)溶接工を増やすのではなく減らさないのが目的」であり、「来たるピークに備える動き」と説明する。4月以降、18人が清水建設の独自認定資格者となっている。
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