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**ニッコン e-建設経営通信 【第235号】**
■ Question 1
当社のコンクリート打設下請業者を見積段階では特に明確にしていませんでした。
実際に施工する段階になり、現場で使用する生コンを当社が長年付き合いがあり品質も安心なA社から購入して施工するよう指示しようとしたところ、社内から建設業法で禁止されている使用資材の購入強制に当たるのでないかという意見が出されました。
この場合、下請業者が購入しようとしている価格よりも安い生コンを手配しても問題となるのでしょうか。
■ Answer 1
まず、元請業者が、下請業者に対して使用資材等の指定を行う場合には、事前に見積条件の一つとして提示する必要があります。見積条件として使用する資材が指定されていれば、下請業者は、その指定される使用資材等を前提に見積をすれば足りるからです。
次に、下請契約締結後、実際の施工段階で行われる使用資材の指定が、常に不当な購入強制に当たるかについてですが、一般的には、契約締結後の資材購入指定は不適切な行為に該当することがほとんどと思われます。
ただし、建設業法で不当な購入強制としているのは、その指定により、下請業者の「利益を害する場合」としています。
つまり、資材を指定されて購入した結果、下請業者が予定したより高い購入価格で購入せざるを得なかったり、あるいは既に購入している資材などを返却せざるを得なくなって、金銭面、信用面で損害を受け、その結果、下請業者が従来から継続取引関係のあった販売店との取引関係が極度に悪化した場合等をいうとされています。
したがって、貴社が指定した生コンの価格の方が、下請業者が予定していた購入価格より安く、かつ、貴社が事後的に購入指定をしたことにより、下請業者に生コンの返却等の問題が生じない場合には、下請業者の利益は害されたことにはならないのです。
この場合、留意すべきは、前述した2つの要件とも満たされていることが必要不可欠である点です。
以上の点を考慮すると、やはり、契約締結後の資材購入強制はすべきではないことが理解されると思われます。
■ Question 2
コンプライアンスが重要といわれています。
法令を遵守し仕事をしていかねばならないことは確かですが、どこをどう変えれば
よいのか具体的にはわかりません。
どのような方向性を持てばよろしいでしょうか。
■ Answer 2
法令の遵守を基本とした企業論理を明示することが重要です。
コンプライアンスとは一般的には法律や規則を守ること、つまり「法令遵守」と訳されています。
しかし現状建設会社を取り巻く環境の中では日々その基準が変化し、遵法制の問題においても昨日までは許されていたことでも、その事象が明確化した段階では社会的な批判を受け法的にも不法行為とみなされることまで起こっています。
これはそもそも建設会社にとってのコンプライアンスは「企業活動におけるコンプライアンス」であり『建設工事を通じ他の事業者(工事発注者)から従属的に仕事を受注し、請負契約によりその活動を規定する許可業種』であるためいつも理想や理念を追求するだけでは「自社に対する社会的な要求」を完全に満たすことが出来ないことに由来します。
また建設企業には社会構築という仕事の特性に起因する生活・安全の向上・確保や環境の満足度、日本の基幹産業としての多大な資本投資などにより他の産業より高いレベルの社会的責任(企業の社会的責任:CSR)や事業内容を開示する責任(企業の説明責任:アカウンタビリティ)が求められています。
建設企業に対しては談合や裏金などの言葉からイメージされるような、金銭面を中心として高い水準では社会的に評価されていない面があります。
この状況では明確に法律に反する行為をしていなくとも、何らかの問題が指摘されれば「建設会社のとった反社会的行為」とみられ「信用の失墜」「信頼性の欠如」により受注自体に影響することも考えられます。
この点においても計画→実行→確認による結果として個人(担当者)レベルの活動を規定し、制約する要素にもなります。
こうした場面を想定すれば、これらの「存続の危機」や「決定的なリスク発生」を回避するためには、われわれを取り巻く法令を知り、これを守っていこうとすることは当然のものとして、その制約が発生したことの本質を知りながら「高い経営理念」「確かな行動倫理」まで実現していく管理会計を含むコンプライアンス体制を確立しなければなりません。
近年コンプライアンスが声高に言われる中でも一連の食品関連企業の不祥事や不誠実な対応、会計制度に反した反社会的な利益の追求、われわれ建設業における談合の発生等社会的に大きな問題となりながら、自らを振り返り新たな規範を創造するなどの行為が充分でないものもあります。
企業存続の危機は大きな問題としてとらえられがちですが「ありの一穴」のような小さなサインを見逃さないような組織管理から始める必要があります。現状を容認せず、自分たちの周辺で起こっている法令に関する問題を知り、一人ひとりの行動変革まで結び付けなければ、組織の存続基盤が失われることとなってしまいます。
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