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なんとも悲しい“ヴェルサーチ日本撤退”の知らせが届いた。紀尾井町の本店は5月末で閉店、私の地元百貨店内のブティックも7月下旬に店じまいとなる。四半世紀にわたり脇目も降らず愛し続けてきたブランドの撤退は、寂しさや悲しさを通り越して、わが青春が終わりを告げるかの思いだ。 ヴェルサーチとの出合いは1983年ごろと記憶する。いまも手元に揃うコレクションのカタログでは、83/84秋冬コレクションが最も古いものである。都内のブティックで目にした、斬新なカットの組み合わせによる1枚のブルーのシャツに魅了されて以来、私のヴェルサーチ偏愛の歩みは、じつに25年以上続いた計算になる。思い出はあまりに多く、簡単には語りつくせない。 私もまだ20代半ばだった。商品の価格はいまと変わらず高価だったが、そんなことはお構いなしに、ヴェルサーチにのめりこんだ。その服はもちろんだが、ジャンニ・ヴェルサーチというデザイナーそのひとにも。その哲学は作品に反映されるものだから、服もデザイナーも結局は一体のものである。一言で言えば、その哲学は“伝統と革新、その融合”。私にはもともと両極のものに惹かれる性向があり、ヴェルサーチに魅了されるのも無理はなかった。 20代後半からは都内のブティックに通いつめ、毎月の給料をはたいて、あるいはそれ以上の無理をして、新着コレクションを買っては、それを着る至福を味わってきた。幸運にも85年のジャンニ来日時には、そのレセプションで言葉を交わすこともできた。その後のヴェルサーチはまさに破竹の勢いで、その華麗な作品はバブル期の象徴にまで上りつめた感があった。 ジャンニ・ヴェルサーチが非業の死を遂げたのは1997年。そのときの私のショックは計り知れず、鎮魂の思いから短篇「メドゥーサの輝き」(初作「眠りの恋人あるいは妻」収録)を書き上げた。ジャンニへの想いはいまも消えることがなく、そのスピリットとテイストを引き継いだ妹のドラテッラがブランドを率いてからも、ヴェルサーチの服への愛着が消えることはなかった。 しかし、やはりジャンニの死がブランドにとってもひとつの転機だったのか。カリスマ性のあるジャンニが生きていたらどんな展開になっていたかと、つい考えないわけにはいかなかった。 21世紀に入ると、通いなれた都内のブティックもなくなり、全国に展開していたブティックも、気がつけばずいぶん少なくなっていた。大手商社らが展開していたヴェルサーチ・ジャパンもイタリア本社の100%出資会社に変わった。それでも、毎回のコレクションで見せるクオリティの高い作品の魅力は衰えることなく、私は今日に至るまでヴェルサーチの熱烈なファンであり続けた。しかしこの世界的な不況下で、ここへきてとうとう日本からの撤退を余儀なくされたようだ。 そうはいっても、ヴェルサーチが消えてなくなるわけではない。聞くところでは、今回の撤退はアジアでは日本だけで、近隣の中国や韓国のブティックは存続するそうだ。今後の状況しだいでは、日本へも数年後にふたたび進出、出店するのではないかとの憶測もある。 せめてもいまはそうなってくれることを願うほかない。古くからの熱烈なファンとして、それを願い続けるしかない。そうなった暁には、終わりかけたかに見えた青春もふたたび息を吹き返すのではないか。その知らせを聞ける日を心待ちにしようと思う。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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ヴェルサーチ私史
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ヴェルサーチの「2009年春夏コレクション」のカタログが送られてきた。今回は大判の仕様で、かつてのジャンニ時代のカタログを彷彿とさせる豪華さ。写真家はSINISHA NISEVIC。 今回のカタログはドンナのみで、ウォモがないのが私としては残念だが、内容は相変わらずゴージャスでセクシー。リボンがアクセントとしてフィーチャーされている。 カタログの写真もこれだけ大きいと迫力もあり、豪華さも倍増する。デザインのディテールはもちろん、ファブリックの上質さまでダイレクトに伝わってくる。 この素晴らしいコレクションの中から何枚かをご紹介するが、私のスキャナーには入らない大きさなので、やむなく写真で撮ったものをアップさせていただく。フラッシュで光ってしまった部分はご容赦願いたい。 以下、1枚目はカタログ表紙、2〜3枚目がクルーズ・コレクション。4〜6枚目がヴァニタス・コレクション、7〜11枚目がメーン・コレクション、12枚目がアクセサリー。 |
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先日、ヴェルサーチ・ブティックに立ち寄った折の店内の様子である。6、7日はクリスマスフェアが開かれるとのことで、店の中央には見事なユリの花が飾られていた。フェアの2日間にはケータリングなども用意されたようだ。 写真は前日の5日に撮影。クリスマスシーズンにふさわしく、新作アクセサリーやウォッチなどが入荷していた。そして、早くも春夏物がちらほらと入荷。ファッションの展開はなんとも速い。 最近は冷やかすばかりで、いっこうに購入できない財政状況だが、美しい洋服を見るだけでもうっとりとする。いまはそれで満足するしかなさそうだ。
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昨日、ヴェルサーチより、全世界のブティックで11月22日から29日までの売上の10%を、乳癌をサポートする慈善団体Breast Health International(BHI)に寄付する、との葉書が届いた。 葉書にはドナテッラ・ヴェルサーチの写真が大きく出ている。高級ブランドのヴェルサーチとはいえ、この世界的な不況で決して楽ではないと思うが、こうした活動への取り組みは喜ばしい。 また、時期が少し遅くなってしまったが、9月ごろ手元に届いていた08−09秋冬コレクションの写真も、併せてご紹介しておく。相変わらず素晴らしいコレクション。豪華でセクシーなヴェルサーチテイストはもうすっかり揺るぎないものになっている。 今回のカタログにはウォモの写真がないので、私としては少々残念だが、ドンナの写真だけでも、ため息が出るほど美しい。 |
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ヴェルサーチ2008秋冬コレクションの新作が入荷したとの連絡が葉書で来た。写真はまだこの葉書のみで、カタログはこれからだが、相変わらず今回も素晴らしい。 ドンナのデザイナーはもちろんドナテッラ・ヴェルサーチだが、ウォモのコンサルタントは前回の春夏から就任したアレクサンダー・プロコフが担当。 ウォモのモデルには米俳優のパトリック・デンプシーを起用。光沢ある質感とカットの鋭さに目を奪われる黒のスーツをさすがに粋に着こなしている。 各1枚ずつの写真だけでも、その高級感あるエレガンスは充分伝わり、わくわくする。しかし、値段は上昇傾向にあるようで、たとえばトレンドのウォモスーツあたりで50〜60万の価格帯だというから、どうやっても手が出ない。ここは、写真だけで我慢するしかなさそうだ。 カタログが届いたら、まだご紹介したい。
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