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自民党有利が伝えられてきた今回の『郵政解散』衆議院総選挙は、近年稀に見る自民党の圧勝で幕を閉じた。与党が議席の3分の2を上回る327議席を獲得し、小泉政権が国民的に支持されていることを証明したのだ。憔悴した岡田民主党元代表を見ていると気の毒でさえあるが、これは国民が下した審判であることに間違いない。
さて、今回の『郵政解散選挙』は、いわゆるメディア型選挙と批判される。が、小泉政権がTV映えのする堀江氏や佐藤ゆかり氏のような人物を、刺客として彼らにとって無縁な地域に落下傘式で立候補させたことは、一方で国益を無視した地元利益誘導型政治を相対的に後退させる意味も含む。国会議員は地域に根ざしながらも、国事に関して従事するのである。イラク問題や国際貢献を論ずべき時間を、地元の道路や橋梁の話ばかりされていては、国益の損失である。
その意味では、このような落下傘式も含めて、郵政解散の是非を問う、あるいはそのような単純な「コイズミ的」を問うた今回の選挙は、有権者に「国民として」の判断を求めた選挙であったと言えるのではないか。「国民的」を問われ、求められたかつての時代は、言うまでもなく先の戦争中の話である。市民に対して「国民的」が問われる時、我々は努めて冷静であるべきだろう。
私はこの半月間、メディアを介してこの『郵政解散選挙』が、どのように国民に伝わるのかということに関心を払いながら見てきた。TV番組の討論会などでは、内政や外交の論戦において劣勢に立たされる小泉首相、安倍晋三幹事長代理の姿が幾度となく見られたが、選挙結果からすれば国民はそのような個別的な事象よりも、衆議院を解散させた小泉総理の決断を意気に感じたということだろう。
「マニュフェストに書いてある、マニュフェストを読んでください!」と岡田氏は必死に訴え続けたわけだが、マニュフェストは各党ごとに色合い、方法論は違うものの、概ね重要な社会問題について記述され、概ね穏当な提案がなされている(そう書かざるえない)のだから、有権者がマニュフェストで支持する政党を判断することは、実は難しいことなのではないか。国民が求めたものは分り易いイメージで、最後まで勇気ある改革者のイメージを堅持した小泉総理に、マジメ・愚直をウリにした岡田氏が敗北したということだろう。マジメな奴はやはりモテないのである。
さて、惨敗を喫した民主党では岡田氏の後任人事が進められている。自民党に対抗しうる勢力となるためには、やはり独自のカラーを鮮明にしなければならないだろう。憲法の問題、年金の問題に民主党が存在感を示すことができるか。
「(自民党と比べて)ライスカレーとカレーライスの違いぐらいしかない」と民主党をブッタ斬ったのは社民党福島みずほ代表だが、一方でなぜ社民党は「オムライス」なのか。「カレーライス」のアンチテーゼに「オムライス」を選んだことも含めて、氏には代表としての説明責任が求められるところだ。
ここで、自民党が圧勝した今回の選挙を獲得議席ではなく、投票総数から考えてみたい。以下の一覧が、新聞報道による小選挙区選挙の各党の獲得票数である。
【自民党】 32,175,574 (47.69%)
【民主党】 24,625,091 (36.50%)
【公明党】 980,640 (1.45%)
【共産党】 4,887,880 (7.24%)
【社民党】 990,61 (1.47%)
【国民新党】 431,506 (0.64%)
【新党日本】 131,960 (0.20%)
【大地】 16,527 (0.02%)
【諸派】 1,102 (0.00%)
【無所属】 3,229,635 (4.79%)
衆議院の3分の2以上(約70%弱)の議席を得た自民、公明の与党が小選挙区で獲得した得票数は48%である。小選挙区制度の課題である死票の問題が顕著に出た結果である。因みに、かつて中選挙区制度から小選挙区制度への制度改革を中心的に推進したのは、現在、民主党に籍をおく自民党時代の小沢一郎氏であった。その意味では今回の選挙は皮肉な結果となったわけである。
次に比例区の各党の得票数である。
【自民党】 21,089,520 (38.22%)
【民主党】 17,096,930 (30.98%)
【公明党】 7,367,004 (13.35%)
【共産党】 4,031,144 (7.31%)
【社民党】 2,978,567 (5.40%)
【国民新党】 934,098 (1.69%)
【新党日本】 1,320,369 (2.39%)
【大地】 362,041 (0.66%)
比例区については、与党が51%強の得票を集めて、過半数の投票者が与党を支持した結果となったが、小選挙区、比例区を合わせて与党が得た得票総数は、全体の有効投票数の過半数に一歩届かなかったのである。小泉総理の言うとおり、この選挙が郵政民営化の国民投票という位置づけであれば、今回の選挙結果をどのようなものとなったのか。言うまでもなく、郵政民営化の国民投票なるものは、法律上存在しない。憲法改正の国民投票であれば、次のような定めがあるので、参考として引用する。
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
最後にくだりにある「過半数の賛成」について、その母数が憲法には明記されていない。つまり、「総有権者数」の過半数なのか、「有効投票数」の過半数なのか、ということである。また、民主党は今般の郵政法案には反対であるが、郵政民営化自体は賛成という立場であるので、複雑な話になるのだが、今回の選挙で一ついえることは与党の獲得議席数と獲得票数には開きがあるという事実だ。果たして、郵政民営化は国民に承認されたのであろうか。
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