暮らしのバンコク

雨季で空が曇りがちです。でもタイ的には夏到来らしい。

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一発描き云々

 ずーっとこのブログを読んでる人は何となく知ってたかもしれないけど、一時期スケッチのUPが一月近く途切れてた時期がありました。なんていうか、描くネタがなかったとか、スケッチするのに飽きたとかそういう理由じゃなくて、理由としてあったのは、自分の下手さに嫌気がさしたってあたりの事なのです。スケッチ始めて目につくものをどんどん描いていったのは良いんだけど、ふと、溜まったスケッチを見てみると、我ながら下手さに愕然…。というか。

 何回か触れてますが、よくスケッチをしに行くバンコクの市場とその周辺はスケッチをするに足るような十分なスペースを確保してくれるようなところは中々ありません。どこも車だらけの人だらけの店だらけの物だらけ。鉛筆削るのもちょっと気が引けるような状況もあったりして、結局ボールペン一本でスケッチしているのです。

 ボールペンってのは、まぁ、当たり前な話だけど、描いた線ってのが鉛筆と違って消せるようなもんじゃない。おのずと一発勝負をせざるを得なくなってくる訳ですね。でも、それなりに絵を描いてきたとはいえども、一発で線を決めるような訓練を積んできたかというと、僕の場合はそんなこともありませんでした。おおざっぱに雰囲気を描くのが好きというか、気がつくとそんな描き方をしていたので、一発で例えば魚っぽい形を拾うことは出来るんだけど、例えば、魚の下唇から描き始めて、尾ひれまでの形を順に一発で追っていけるかというと、出来なかった…。悲しいことに。これって、漫画なんかを専門で描いてる人は、なんなりと一発でできたりすると思うんですけどね。

 まぁ、その漫画描く人はできるだろうってのは置いておくにしても、その形を一発で追いかけるってのは、ボールペンで描き始めた当初は割りと簡単に出来るもんかな?なんて思ってたんだけど、実際そんな簡単なものでもなくて、極端な話が、一ミリ目の前の形と自分の描いてるスケッチの形がズレただけで、スケッチブックの上にある図柄は目の前にある物とは全く形の印象がかけ離れたものになってしまう。はた目には大したことないように見えるズレが、最終的には大きな歪みに変化してしまったりする。でも逆に変な話だけど、一ミリずれていてもおかしく見えない瞬間もある。結局、何が大事かって言うと、ビシッと形を捉えつつも、その物の形に表れてくる物独自のラインを拾うことにあると思うのです。これが、写真やCGでは真似できない、手で描いた味につながってるような気がする。空は青いというけれど、写真で撮るとそんなに青くもない。けれども、人の記憶の中には、空は写真で撮るのなんかよりもずっと「青」として記憶されていて、それを記憶色と呼んだりするみたいですが、これもその理論で、記憶形とでも言うんでしょうか。その、あぁ、こんな感じ。この形こんな感じっていう「らしさ」をいかに一発で描く線の中に出すかってのが、ボールペンで一発描きをするスケッチの中にあるような気がします。

 それで結局、いろんな意味で変なズレを起こさずに、目の前にある対象物の印象を捉えようとしたときに、必要だったのは、いつも以上の集中力で、対象物の端から端まで余すことなく丁寧にその物自体を追えるような力でした。それが、最初の頃、出来てるような「気」はしてたんだけど、実はぜんぜん出来てなくて、適当なデフォルメをしてスケッチブックに描いてる。だから、何か雰囲気は似てるんだけど、決定的なそのものの持ってる生々しいリアルさみたいなものが欠けていて、例えば、豚足なんか二回描いたけど、一回目のそれって、まるでポリゴンでつくったみたいな情報の欠落の仕方をしちゃってるんですね。見比べてみると。

 まぁ、頭に一回取り入れた視覚情報を手におろしてくる時点で、ある程度簡略化されてるのは当然のことだと思うんだけど、その簡略化の仕方が、対象物の持つ形の面白さなりを排除してしまいかけた時に、スケッチは何となく雰囲気は似てるんだけど、何か欠けた…。ようなものになってしまってる気がするのです。これじゃ、記憶に訴えかける「そうそうそんなん!」ってのではなくて、「あぁこんなんだったかも…。」て何段階かランクの落ちた劣化コピー品みたいになってしまう。

 でも、この形の持つ特徴を拾い上げるなんてのは、正直、大学入る時点で理解しておいて当然の事なので、コイツ今更何言ってるんだ?って思われた方も居るでしょう。けど、その高校生の段階でしていたのは殆どの場合鉛筆描写。鉛筆ってのは当たり前のことやり直しが利くから、薄く描いて、段々と特徴を拾い上げて行って、何か違う…。と思ったら修正して。という失敗ありきな工程を踏むことも可能なのです。

 ここで言ってるのは、それに対して、やり直しの利かない一発描きの美学というか、なんというか、そんなお話。腕と手首と、ボールペンの微妙な筆圧をコントロールする指先にぐっと神経を集中させて、そして、もちろん目は対象物の特徴をしっかりと捉える事ができるように集中して。線を一本引くのに、ここまで緊張した瞬間を味わう事は今までありませんでした。そして、それが前はとてもじゃないけど満足できるもんじゃなかった。

 それが、最近少しは出来始めたかな…。まぁ、前よりはマシになってきたか。って事で、再び市場へ通ってスケッチ始めるようになったんですけどね。そりゃ満足してふんぞり返っていられる状況ではぜんぜん無いですが。結果として、ボールペンで描くようになって、物をより真剣に見るようにもなったと思うし、形を現す上での真剣さも増したような気がします。やっぱ、描いてる時は常に気は張ってますからね。気がついたら、線を描くのも何となく上手くなってる気がするし(笑)

 線がきれいになったかも。ってのは、タイ模様を描くのに、言っちゃ悪いけどそんな上等でもない安モンの筆でポスターカラーを使って、これまた大したことのない紙に0.3mmとかの線を引かざるを得なくて、筆圧のコントロールと手先の器用さが日本を発つ前とは10倍くらい向上したってのもあるような気もしますけどね(苦笑)

 あ、そういや、ずっと前に美術手帳に「日本画は線に始まり線に終わる」って書いてたどこぞの評論家の文章を読んで、軽く逆上した事があって、そのときの逆上文章もこのブログのどっかに眠ってると思いますけど、線の緊張感とか緩和とか、一発描きをするようになって色々と考える機会は多くなったけど、この意見はやっぱり未だに賛成しかねますね(笑)線で描けば描くほど、線だけで物の全てを表すなんて不可能に思えてきて…。線で拾える「らしさ」もあるけど、やっぱり線って数ある要素のひとつに過ぎないんですよね。かなり重要なものではあると思うけど…。ってところで、一発描きについてのぼやきでした\(・ー・)/

シャコ

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 シャコです。そう頻繁に見かけるものでもございません。市場の定番の海産物ではないような気がします。正直、昔食べたシャコ寿司はそんなに美味しかった記憶もないのですが、描くモチーフとしては珍しいし、魅力満載なのです。(前に一回水槽の中を漂ってるシャコは描いたことありますが)

 ばさっと盛られてたので、適当に丸まってるやつ。伸びてるやつ。裏向いてるやつを選んで描いてみました。胴体の部分の節の数は9節で、意外とそこの部分の柔軟性は海老ほどなく、しかし、胸および頭部分と胴体の連結部分は稼動範囲広し。目はどっちかって言うと、海老の複眼よりは蟷螂っぽい。とか、かなりどうでも良いような知識も見についてしまいましたが、これも、実物を目の前にしてスケッチするから味わえる贅沢ですわな〜。よかったよかった。

馬蟹

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 何度も描いてるのですが、ワタリガニです。タイ語名はプーマー(馬蟹)っていうやつ。なんかグチャグチャと模様があるのが気になって、見える限り全部模様を描いてみたという…。一見なんの脈絡もなくぶち模様があるように思えたのですが、じっと見て追っていくと、それなりに規則があるのに気づきました。

 そしたら、なんかもうこの蟹を極めたくなってしまったんやけど、市場はそろそろ閉まる時間。あー又明後日あたりこの蟹見にくるか…。なんて思ってたのですが、そんなことを思い続けて2時間後。僕は自分の考えに重大な欠陥があることに気づいたのでした。そう。買えばいいのですよ。買って家でじっと観察して描けばいいのですよ!そうすりゃ狭苦しい市場では不可能な着彩まで可能じゃないですか!!なんと。なんでこんな単純なことに気づかなかったのでしょう…。そうか、蟹は「高い」っていう恐ろしい先入観があったから、買うなんていう方法は思いもよらなかったのか…。一キロ450円程度だったから、一匹なら200円そこそこでしょう。買いです。書き終わったら、家の前の屋台で茹でてもらいましょう。

龍海老

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いつものように、バンコクの市場の魚屋を覗いてたら、「にいちゃんこれ描いたのかい?」て示された?紹介された?のがこれ。イセエビ風巨大えびです。タイ語だとクン・マンコーン(龍えび)と言うらしい。上は陳列されてたやつ。店の人がご丁寧にも、僕の前に置いてくれたもの。

 しかし、どっかの空気読めないガーガー声のおばちゃんが突然「この海老でっかいわね〜。あら生じゃなのさ!どうやって料理すんのよ〜??」なんて言いながらぐっちゃぐっちゃに掻き回してしまったりして何度かやむ終えず描き直しを迫られ、他の絵は20分もあれば描きあがってるのに、この描き直しのお陰(ボールペンで一発描きなんで、ミスったらそこでおしまい)で、やったら時間がかかり、なんかその辺の魚屋さんから集まってきたギャラリーも冷め始め、僕は冷や汗をかき始め…。という結構苦労した海老なのでした。

 ちなみに、下のはその後水槽の中に入ってたやつを描いたものです。

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