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ダレットが手を開けてこちらに見せる。
「これがきみの夢」
少年に似合いの高くも、低くもない成長途中の声が屋上に落ちる。
彼の背にはフェンス。
そのフェンスの向こうには赤く燃える夕日。
風が緩やかに、ダレットの褐色の髪を揺らしていた。
「これがきみの夢、」
再びそう云うと、手のひらを上に向けて胸元に落とす。
視線を落とした彼の瞳が、一度瞼に数秒隠され、見えなくなる。
「行くのかい」
ダレットは表情の見えないいつもの声音でそう問うから、そうだね、と僕は答えた。
褐色に濡れた髪が上下に揺れた。
一瞬、挙げられていた手のひらの指が動く。
「そうか…、そうか」
彼はそう呟くと、くるりと背を向けフェンスの向こうへ手のひらを掲げた。
半袖から覗くすんなりした腕が、フェンスの向こうへ伸ばされる。
「叶いますように」
ダレットはそう叫んで、こちらを振り返り笑った。
途端に、僕は俯いた。
赤い夕日は、壮絶なほどに美しい。
真っ赤に染められた世界が、この視界を埋め尽くす。
白い雲も、ビルの窓も。
屋上に投げられた二つの鞄と数枚の手紙も。
そして、彼の青いはずの瞳も。
見上げた視界に映った、細く黒い枠。
世界を捕らえるようにそびえ立つフェンスだけが、僕には現実に感じられた。
そこで漸く、僕は彼の手を見た。
柔らかく伸ばされたままの手のひらを。
◇◇◆
何かを自ら変えて進めようと思う人は置いていかれる、と勝手に感じている人の存在によって、突然にその同じ焦燥感と寂寥感に突き落とされることがあるようなないような(笑)。
必死になっているときには気づかないけれど、いきなり自分も大丈夫なんか、と思っちゃったり。
人生不安だらけ。 それでも進まなきゃいけないなぁ〜。
…なんじゃそら、な小噺ですみません(笑)。
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留学とか修行っぽい旅立ちの前日。大切な誰かの夢は叶ってほしい。
でもできれば、ずっと一緒でいたい。ついて行けなくて、引き止めることもできない。
祝福、して見送らなければ・・・・・ならない。
じわ〜〜〜っと来ました。
[ イカダ ]
2015/7/19(日) 午後 5:31
> イカダさんへ。ありがとうございます。
じわ〜〜〜っと伝わって何よりうれしいです(笑)。
主人公の男の子も、じわ〜っと自分の中に生まれる焦燥感に苛まれ始めるので、それが伝わればいいなと思って書いたお話です。
読んでいただいてありがとうございました。
2015/7/22(水) 午前 0:22