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「もう少し静かに願います〜」
近くの閲覧席で話をしていた主婦たちに、司書が笑顔で対応する。
「――…、」
答えを与えられない問いは、舌の裏に引っかかったまま。
司書の注意に呼応するように、僕は舌を畳んで視線を下ろした。
白い図書館のテーブルが、窓から入る光を反射して目を焼く。
もしかしたら。
うまくすると。
ひょっとしたら。
もしかしたら……もしかしたら。
幾度も繰り返す、願い。
この胸に湧き、湧けば自ら沈ませ、けれど次の瞬間には再び、湧く。
答えは与えられぬまま、夏は僕の願いを焼こうとする。
胸に渦巻く思いとともにくるりと指で回したシャーペンが、カタン、とテーブルに転がった。 慌てて追いかけた僕の手に、わずかに重なった指。
それを見て取ると、触れた中指がびっくりするほど、震えた。
「…へたくそ」
ぶっきらぼうに投げ出された小さな言葉。
思わず上げた視界に、不満そうな彼女の顔が映る。
すると抗議するように、少し離れた白い人差し指が、僕の中指を弾く。
地味に痛い。
痛い。
「ばーか。 ばか、ばーか」
うっすらと染まった彼女の頬。
それは夏の日差しが移った――んじゃないと信じたい。
僕はそっと、もう一度問う。
舌裏に引っ付いた問いを、もう一度。
もしかしたら。
もしかしたら…。
愚者はそうして、胸の内を明かす。
「もう少し静かに願います〜」
場違いな声の大きさで。
◇◆◆
図書室の一角で。
どんだけの声量だったんだ、とつっこみたいですが|д゚)
読んでいただけるとうれしいです♪
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女の子が居るところ、必ず誰か若者が恋心に囚われる・・・・とは限らないとしても、
密かな願いは顕かな願いに変える第一歩で叶えられる・・・・・とも限らない。
[ イカダ ]
2015/8/15(土) 午後 7:55
> イカダさんへ、ありがとうございます。
いろんな可能、不可能がある中、たどり着くまでに紆余曲折。
たどり着くとも限らない…。
苦しいですよね、恋は(笑)。
2015/8/15(土) 午後 11:45