天然資源を狙ってアフリカ大陸に急接近する中国。 時を一にしてアフリカに押し寄せているのが中国製の模造品だ。 1個数十円の消費財でも模造品が出回る事情とは。 2〜3年前から、アフリカで消費財大手メーカー、米サラ・リー製の靴磨き「キィウイ」の模造品が出回るようになった。そこで同社はラベルを変えたが、すぐに新ラベルの模造品が登場。次にパッケージの大きさを変更すると、半年後には新サイズの模造品が出てきた。サラ・リーは缶容器の型まで変えたが、模造品業者はしばらくするとそっくりな商品を売り出した。 サラ・リーの東アフリカ担当販売幹部を務め、今は独立してウガンダの卸業者として同社製品を販売するヨアブ・オウマ氏は言う。「何かを変えるたびに模造品が出てくる時間が短くなる。最初は6カ月かかったが、今は6週間程度だ」。 模造品といたちごっこを続けているのは、1缶たった35セントの靴磨き。キィウイはアフリカで一番人気の靴磨きで、大陸全土の売り上げは5000万ドル超、推定80%のシェアを誇る。だが、ウガンダなどの一部諸国では、“キィウイ”のほぼ半分が模造品。このためアフリカ大陸におけるサラ・リーの靴磨きの売り上げは20%も減ったという。オウマ氏曰く、「我々の最大のライバルは我々自身のブランドだ」。 【模造業者がつけ込む流通事情】 ロレックスやルイ・ヴィトン、バイアグラといった高額品の模造品ではない。アフリカ市場を狙う中国の模造品業者はいきなり市場の底辺を狙ってくる。1本10セントで売っているようなボールペンや石鹸セット、キィウイの靴磨き(アフリカでは靴をよく手入れして何年も履く人が多いため、靴磨きは驚くほど大きな商売になる)など、安い量産品が中国の模造品工場の格好の標的になる。 大量に流入する模造品の影響もあり、マラウイとザンビアにあったキィウイの工場は閉鎖された。モザンビークでは、「ビック」ブランドのボールペンを生産する工場が閉鎖された。 模造品業者がアフリカを好む理由は明白だ。模造品を模造品として売っても儲かるが、模造品を正規品の販売ルートに紛れ込ませられれば、もっとうまみが大きい。サブサハラ諸国*1ほどそれが楽な場所はない。商売の大半が町の小さな商店や掘っ立て小屋のような店先で行われているからだ。 *1=アフリカ大陸の中でサハラ砂漠より南に位置する国々を指す 一握りの大手小売りチェーンは取引先を管理しているが、アフリカに数十万ある小さな小売業者の場合は、一番安い調達先から商品を仕入れる。ウガンダ国家標準局(UNBS)の試算では、同国で売られている消費財の3分の1近くが模造品である可能性がある。 そして、模造品業者は数セントで売るような商品でも利益を上げられる。ウガンダの首都カンパラにあるナイスハウス・オブ・プラスチクスは、歯ブラシを生産し、近隣国で販売している。最近の出荷数量は月間80万本足らず。2年前、中国勢が模造品を作り始めた頃は月間200万本出荷していたから、その激減ぶりが分かる。 「この辺の人は木の枝で歯を磨いていたが、所得が増えるに従い歯ブラシを買うようになった。本来、販売は伸びるはずなのに…」と、ナイス幹部のジェームズ・ムルワナ氏は嘆く。 ナイスの歯ブラシの小売価格は1本20セントで、1本当たりの利益は2セントに満たない。だが模造品業者は宣伝費や販促費がかからないため利益率がもっと高い。「ちょっと売れているモノがあると分かれば、中国勢はすぐに模造品を出す」とムルワナ氏。 【対策法案も意味がない】 模造品の出来がいいのも、売れる一因だ。偽物のナイスの歯ブラシは本物と見まがうような真空成型したプラスチックパッケージに入っている。違いは、本物には「メード・イン・ウガンダ」と書いてあるのに対し、偽物には「デザイン・イン・ドイツ」と書かれている点だけだ。 一方、ケニアの首都ナイロビでは、ハコ・インダストリーズがビックのボールペンをライセンス生産している。かつては同社の年間売上高2500万ドルのうち90%をボールペンが占めたが、同社幹部でさえ本物と見分けがつかない模造ペンが氾濫したため、その比率が50%まで落ち込んだという。 ハコ取締役のポリカルプ・イガーテ氏はビックの偽物を1本取り出し、テーブルに投げつけてみせるが、傷1つつかない。「全く腹が立つほどよくできているよ。連中は日々、腕を上げている」とイガーテ氏。 アフリカ諸国の政府は問題を認識しつつ、対策を打てずにいる。「知的財産の保護は発展途上国ではまだ新しい概念だ」。ケニア製造業組合のウィクリフ・スワンヤ会長はこう話す。ケニアとウガンダでは模造品対策法案が検討されているが、まだ可決されていない。法制化されたところで安い消費財は優先されないだろう。 前出のオウマ氏は言う。「役所の言い分は簡単だ。『模造薬品を売る連中か偽物の靴磨きを売る連中のどちらかを追わなければならないとしたら、選択肢は明らかだ』って話だ」。 自前のブランドを展開する企業は、自分の手で問題と戦うしかないということだ。サラ・リーやナイス、ハコといった企業は時折、断片的な既存の法規制を組み合わせて模造品の輸入業者を提訴する。だが、こうした輸入業者は大概、1〜2回仕入れをしたら姿をくらます幽霊会社で、オーナーが誰なのか、実態がつかめない。 サラ・リーによると、同社は中国で同社製品の模造品を作っている工場を数十棟突き止め、問題解決に向けて前進しているという。だが、発見した模造品を没収できても、生産設備を没収するには至っていない。 「模造品業者の息を止めたかといえば、そうではない」。こう語るのは、同社で模造品対策を指揮するサンダー・バッカー氏。彼は広州で年2回開催される見本市「広東フェア」で、グローバルブランドを真似た商品のカタログをたくさん見かけたという。 【雇用もいずれ中国へ?】 では、商品の中身はどうか。サラ・リーが言うには、模造品業者は性能の低い研磨剤を使っている。模造品に使われているのはケロシン。サラ・リーが使っているのはもっと精製度の高い「ホワイトスピリッツ」と呼ばれる石油エーテルで、靴を保護する性能がずっと高いという。オウマ氏は偽物のキィウイを嗅いで顔をしかめる。しかし、一般の人には違いが分からない。 そうした間にも、ハコではビックのペンの部品を作るために従業員が射出成型機にプラスチックを注ぎ込んでいる。ほかの従業員はペンを組み立て、箱詰めしている。ハコは彼らの雇用を守れるのだろうか。イガーテ氏は、模造品のせいで、いずれ生産を中国に委託せざるを得なくなるかもしれないと言う。「会社の戦略上、重大な問題だが、そうなれば私は終わりだ」。 David Rocks in Kampala with Alex Halper in Nairobi
(BusinessWeek,(C) 2008 Aug.18,McGraw-Hill,Inc.) |
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