恋愛走者 第二部

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青春走者  その28

「洸児センパイ・・何か元気ないっすね」

放課後になり部活に打ち込む陸上部の面々だが洸児だけはテンションも上がらず、

後輩部員たちから心配される状態だった。


翔は頭を掻きながら洸児に近づき、

「おい!いい加減シャキッとしろよ!お前らしくねぇんだよ!」

と、軽くキックをくらわせる。


「あぁ・・分かってるよ。すまん・・・」

帰ってくる言葉は覇気の無いものだった。

「なぁ、洸児。お前何かあったんだろ?部活終わったら話せよ。」

「・・・・・」


翔の言葉に複雑な顔をする洸児だったが、ふぅっと息を吐くと、

「・・・分かった。後で話すよ。」

と、少し笑顔を見せながら答えた。





「なにぃ!あの美佐センパイとぉ?」

「バカ野郎!声がデカイんだよ。」

部活の後、いつものハンバーガーショップで美佐との出来事を

洸児から聞いた翔は思わず立ち上がり叫んでいた。


「でもよぉ・・なんで今頃なんだ?」

「俺にも分からない。翔、お前なら分かるんじゃないのか?」

「う〜ん、いくら俺でもなぁ・・女心は秋の空って言うしなぁ・・」

そう言いながら二人して天を仰いだ。



「とにかくよ、お前は早苗ちゃん一筋なんだからキッチリとケジメつける必要があるよな」

「あぁ。それも分かってる。問題は・・早苗ちゃんが会ってくれない事だ・・・」

「とりあえずは美佐センパイにハッキリと言うしかない。」

「でも、俺と早苗ちゃんの事を知っているんだぜ?どうハッキリ言えばいいんだ?」

洸児の問いにハンバーガーをかじりながら翔は答えた。


「んなもん、簡単だろ?俺には愛する彼女がいますとビシッとだなぁ」

「お前・・真面目に聞いてないだろ・・・?」

「は?・・いや・・こんな面白い展開めったに見れないしさ・・あれ?洸児?」

翔の言葉が終る前に洸児はテーブル上に崩れていた。


つづく

青春走者  その27

夜が明けた・・・。洸児は結局一睡もせずに朝を迎えた。

「はぁ・・寝られなかった・・」

洗面所に行き、冷たい水で顔を洗いながら考える。

・・・俺は、何を悩んでいるんだ?・・

・・・俺には早苗ちゃんだけなんだ・・

・・・ならば、やることは一つだけだ!・・

洗面台の鏡に映る自分を見て頷いた。




「早苗〜!おっはよ〜!・・・って、どうしたの!?」

朝の登校時間。知恵は元気よく早苗に話しかけるが振り向いた早苗の顔を見て驚いた。

「あ・・・ごめん・・昨夜眠れなくて・・」

「なんか、泣いた顔だね・・どした?何かあった?」

知恵の優しい言葉に早苗は複雑な表情を見せる。

「早苗、無理しないでいいよ。話したくなったらいつでも聞くからね」

「うん・・・ありがと。ねぇ、放課後少し時間ある?」

「今日、全然OK!」

二人は放課後に話をする約束を交わして学校へと歩いた。


つづく

青春走者 その26

 重い足取りで家までたどり着いた洸児は溜息を吐きながら玄関のドアを開ける。

「おかえり洸児。あら、どうしたの?暗い顔して」

 洸児の母が不思議そうな表情で尋ねてくる。



「ちょっと疲れただけだよ・・大丈夫」

 どうにか笑顔を作って洸児は階段を上がって自分の部屋へ向かった。






 泣きながら家に帰ってきた早苗は泣き顔に気づかれないように

 静かに自分の部屋に向かい、そして部屋に入ると再び涙が溢れてきた。

 ベッドの前に座り込み、何故こうなってしまうのだろうと悲しくてやりきれなかった。






 洸児は早苗を追えなかった後の美佐とのやり取りを思い出していた。

 自分に恋人が居る事を知っていて何故こんなことをと彼は美佐に尋ねた。

「ごめんなさい。
 言ってはダメだと何度も自分に言い聞かせていたわ。でも心は嘘をつけなかったの」

 そう言って涙を流す美佐を見て洸児は何も言えなかった。



 彼の脳裏には楓の姿が浮かんでいた。

 あのときも自分は最後に彼女を傷つけた。それが正しい結果だと思っているが同時に

 楓にとって辛い結果になったことも洸児はよく分かっている。



 あのときの苦しさを知っているからこそ洸児は美佐に対して、

 すぐに言葉を発することが出来なかった。

 結局そのまま一言も会話をせずに洸児と美佐は別れた。



 帰り際、「本当にごめんなさい。でも、この気持ちは本当なの。それだけは分かって」

 と美佐が話したが洸児は顔を向けることも出来ずに歩き出していた。





 結局夕食も食べずにベッドに横になったまま洸児は考えていた。

 自分は何をすべきなんだろうと、そして、その答えは誰でも分かる単純なものだった。

・・・早苗ちゃん・・・そうだ、電話だ・・・・



 ベッドから跳ね起きて携帯電話に飛びつく。そして早苗の番号を発信した。

「頼む・・出てくれ・・」

 しかしこの夜、早苗が電話に出ることはなかった。


                                   つづく

青春走者 その25

 洸児は頭の中が真っ白になった。

 かろうじて意識が感じとっているのは

 自分の唇に触れている美佐の唇の感触だけだった。

 美佐は静かに唇を離し洸児を見つめる。



 徐々に思考が回復してきた洸児は、背中にドサッという音が聞こえた。

 振り返った洸児の顔が凍りついた。彼が見たのは立ち尽くす早苗の姿だったからだ。

 

「・・さ・・早苗ちゃん・・」

 洸児の視線の向きに美佐も顔を向けた。その瞬間、早苗と美佐の視線がぶつかった。

 おそらく時間にして一秒も経過していないほどの僅かな瞬間だったが

 彼女達は数十秒にも感じていた。特に早苗には・・・。




 先に視線を外したのは美佐だった。

 早苗は落とした通学鞄を拾い上げ洸児に背を向けた。

 


 洸児は感じた。早苗の背中から発せられている悲しみを。

・・・なにやってんだ・・早く早苗ちゃんに説明するんだ・・・

 その背中に近づこうと足を一歩踏み出したところで洸児は後ろに弱く引っ張られた。

「うわっ?!・・センパイ・・?」




 美佐が俯きながら洸児の袖を掴んでいる。

 そして早苗は振り向くことなく歩き始めていた。

 その目には涙が溢れそうなほど溜まっている。




・・・マズイ・・なんでだよ?・・・なんで俺は・・・?・・・

 洸児は再び混乱する頭で必死に考えていた。

 どうすればこの事態を収められるのかを。




 しかし、恋愛経験の乏しい彼の頭では瞬時に解決策は思い浮かぶことは無かった。

 それでも早苗を追おうとして美佐の手を振り解こうとしたとき、

「行かないで!!」

 美佐が叫びながら洸児の背中に抱きついた。

 早苗の背中は既に小さく見えるほどに離れてしまっていた。







                                  つづく

青春走者 その24

「新堂くん・・・」

「はい?」

 急に美佐が真面目な表情に変わったので洸児は少し驚いた。

 そして沈黙が流れた。





「助かったよ〜早苗ちゃん。上がっていいよ〜お疲れ様」

 嵐のような繁盛ぶりが去って店長がホッとしながら早苗に言った。

「それじゃ、お先に失礼します」

 早苗は急いでコンビニを出た。

 そして洸児との待ち合わせ場所の公園へと急いだ。




「新堂くんは・・いつも・・・全力で走っていたよね・・」

 沈黙のあと美佐は話し始めた。

「中学の時、部活で新堂くんを見ていて思ってたんだ・・・」




・・・中学時代の俺?・・・・

 洸児は記憶の中を探った。中学生の頃の自分は自慢じゃないが部活に明け暮れていた。

 今もあまり変わっていないのかもしれないが。

「・・・いい目をしてるって」

「え?・・・目・・ですか?」

 キョトンとする洸児に美佐は微笑みながら静かに頷く。




「常に前を見て全力で取り組む姿勢よ。私にはとても眩しく見えた・・・」

 洸児の手に美佐の手が重なる。

・・・え?・・・な、なに・・?・・・・

「本当は伝えたかった・・・でも・・伝えられなかった・・」

「あ・・あの?・・センパイ?・・・」

 美佐との距離が徐々に短くなっているのを洸児も感じている。





・・・おいおい・・まさか・・・センパイが?・・・冗談だろ?・・・

「ずっと・・好きだった・・・貴方のこと・・」

 頭の中が真っ白になる洸児。しかし次の瞬間、彼の第六感が信号を発していた。

 この流れはマズイと。

「センパイ・・・俺・・」

 洸児が話を始めようとしたが言葉が出なかった。いや、出せなかった。

 なぜなら彼の唇が美佐の唇で塞がれたからだった。





 早苗は公園の入口まで走ってきて息を切らしていた。

・・・待たせちゃったな・・携帯で連絡しておけば良かったかな・・・

 そう思いながら夜の公園を見渡した。

・・・どこに居るんだろ?洸児くん・・・え?・・・あれ?・・

 しかし、彼女の目に入ってきたものは見知らぬ女性とキスしている洸児の姿だった。

 






                                   つづく

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