我輩は猫である

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ファンタジー「時空の羽」

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時空の羽 P103

暗い。

ここは・・・どこだ?。

確か、俺はギールの宿で眠ったはず。

夢・・・なのか。

それも今の現状では判断することが出来なかった。

遠くに光が見える。

あそこに行けということなのだろうか。

他に道はなさそうである。

仕方あるまい。

足元も見えぬ状況だが、1歩1歩とその歩みを進めた。

小さな光が段々と大きくなっていく。

目的の光へと近づいたのがわかる。

今では手を伸ばせば届きそうな位置に、それはある。

普通の光ではない。

何かを感じる。

優しいが、寂しげな光。

そっと、光に手を当ててみる。

光は俺を包み込み、そして、大きく大きく膨らんで、その頂点で弾けた。

その一瞬の光に視力を奪われたが、光の消滅と共に視界が広がる。

1人の女の子が泣いている。

歳は・・・俺と同じくらい?。

手をその頭上にそっとかざす。

触れた?。

これは夢ではないのか?。

「あなたは・・・誰?」

女の子が俺の存在に気づいたようだ。

「アルグレス」

「アルグレスね。私ね。ずっと、あなたを待っていたの。

 私を忘れないでね。私もあなたを忘れないから。サクラ、私の名前。覚えていてね」

女の子が言い終えた瞬間に世界が反転した。

ここは・・・ギールの宿だ。

俺は夢を見ていたのか?。

あの女の子は・・・。

サクラと言っていたな。

それを俺に覚えていろと。

俺を待っていたとも言っていた。

忘れられるはずがない。

この胸の高鳴りは何だ!。

これは・・・?。

覚えていよう。

縁があれば、また会えるだろう。

理由がわからないが、俺には確信があった。

サクラ・・・。

俺のことも覚えていてくれるのだろうか。

この出会いが本当ならば、これは運命とも言える。

偶然ではなく、必然の出来事。

窓の外が明るくなって来た。

夜明けが近い。

朝の爽やかな空気の匂い。

それに、海の匂いが漂って来る。

これからが本当の意味で、俺の旅立ちだ。

1階から声が聞こえる。

夜明けの町。

港町ベルクマで迎える、初めての朝。

「アルグレス様、おはようございます」

ドア越しにギールの声が聞こえる。

いよいよだ。

「今、行くよ」

「お待ちしております」

着替えを急ぎ、荷物をまとめる。

そして、ドアを開け、ギールに声を掛けた。

「おはよう。船は大丈夫かい?」

「問題無く進んでおります」

「ありがとう」


P104へつづく。
 
 
 
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時空の羽 P102

この話はギールから直接に聞いたことだ。

今はギールに案内された宿屋に寝床を確保した。

正確には、ここに泊まるようにギールに頼まれたのだ。

『ギールの宿』

酒場に隣接する宿で、これも同じだが、ギールとイザベラが経営している宿である。

先程のギールとの会話を思い出してみる。

これは重大で、良く考える必要があると思われたからだ。

ギールの発した言葉。

「我々の本来の姿はグラークですが、長寿のグラークはその姿を変えることが出来ます。

 長の話では、長のガルガイアはこの惑星が誕生した時から生きているとも聞いています」

「惑星とは何ですか?」

「惑星とは我々が足にしている大地のことです。

 全ての生命は、この惑星から誕生したとも聞いております」

「それでは、俺もその1人ということですね?」

「そうです。そう申し上げたいのですが、実は違います。

 アルグレス様の母君だけは、この惑星の住人ではありません。

 この惑星が誕生した時に我が長ガルガイアの前に姿を現し、

 導いたのがアルグレス様の母君です」

「俺の母さんが・・・」

「直ぐに理解するのは難しいことだと思いますが、これは真実であり、

 アルグレス様が知って理解しなければならないこと。これは長より言付かっております。

 それと、この日がいつか来るだろうと、その時まで信じて待つこと。

 アルグレス様の存在がこの世界を救うことになることです」

「待ってくれ。この惑星が誕生して、どれくらいの歳月が経っているんだ?

 俺の母さんは、いったい何者なんだ?」

「アルグレス様、これは我々の長のガルガイアにもわからぬことでございます。

 しかし、わかっていることもあります。

 それは、アルグレス様がタイタニ島で全てを理解出来ること。

 アルグレス様、長のガルガイアにお会い下さい」

俺は何も言えなかった。

「宿の手配をしています。今夜はこちらにお泊り下さい。

 タイタニ島への船の手配は明朝に急いで手配を済ませます。

 アルグレス様、お願い致します。この惑星を、いや、この世界をお救い下さい」

これがギールとの会話の全てだった。

イザベラはと言うと、神妙な顔をして聞き入っていた。

この宿へ案内してくれたのは、イザベラである。

知っていたのであろう。

この日が来ることを。

俺を待つためか。

どれくらいの歳月を待っていたのか。

俺には想像すら出来なかった。

夜は更けている。

眠らなければいけない。

しかし、頭が・・・。

頭の中で、ギールとの会話が堂々巡りをしている。

付け加えて聞いたのが、この惑星の名が「ノア」であること。

そして、一つではないこと。

惑星は無限にあり、世界も無限にある。

それを跳躍した先には「次元」があること。

それが俺1人に・・・。

俺が全てを救わなければならないこと。

母さんの言っていた意味が、少しながらであるがわかった。

だが、今の俺には荷が重過ぎる。

俺にそれが出来るのか?。

本当にそれをするのが俺なのか?。

思考に霞が掛かって来た。

軽い眠気。

余にも突然な出来事が俺を襲った。

緊張が和らぐと眠気が襲って来た。

深い深い、夢の中へ。

俺は眠りにつき、夢の世界へと入った。


P103へつづく。
 
 
 
 
 
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時空の羽 P101

どれくらいの時間が経過したのだろうか。

ドアをノックする音が聞こえる。

それと同時にドアが開く。

「こっちだよ。どんどん持って来ておくれ。大事なお客様だからね。

 え〜い、酒はあれでいい。30年物を持って来な。早くおし」

イザベラが部屋に入ると次々と料理と酒が部屋のテーブルに並ぶ。

色取り取りな料理の数々。

勿論、初めて目にするものもある。

そのイザベラは俺の正面の椅子に座った。

「まあ、お飲み。これはこの店の秘蔵の名酒だからね。

 今日みたいな日のために残しておいた酒だよ」

そう言い、俺の杯と自分の杯に並々と酒を注ぐ。

「それ、乾杯だよ」

「はい」

杯を合わせると金属の高い音が響く。

イザベラは美味しそうにそれを一気に飲み干してしまった。

「くぅ〜、美味いねぇ。さあ、お飲み。遠慮はいらないからね」

「いただきます」

迷ったが仕方あるまい。

俺は手にした杯を口に当て、それを一気に飲んだ。

「おっ!、いける口だね。もっと飲みなよ。酒はまだまだあるからね。

 料理も食べなよ。店自慢の料理さ」

「はい、ありがとうございます」

暫く、俺は目の前の料理と格闘することになった。

美味しいのは勿論だが、見たことの無い料理の数々。

飲み干す度に注がれる酒。

旅の先行きに不安を感じての旅であったが、その緊張が消えた。

その時である。

部屋のドアがノックされる。

ドスン、ドスン。

これをノックと言っていいのだろうか。

重みのある力強い何かをそれに感じた。

「入りなよ」

言ったのはイザベラである。

「おう!」

そう言って入って来たのは・・・。

いや、正確に言うと入るとは言えないかもしれない。

くぐって来たのである。

それはその身の丈。

ドアより大きなその身体。

歩けば地震でも起きそうな重量感。

鋼のような筋肉。

「紹介するよ。私の旦那のギールだよ」

ギールと紹介された男はイザベラの隣の席に着く。

椅子はギシギシと音をたて、それは悲鳴にも聞こえた。

「ギールだ。話しはイザベラから聞いた」

声が頭の上から降って来る。

俺の頭5つ分くらい上から聞こえる声。

この声は・・・?。

いや、声ではない。

この雰囲気は何だ?。

どこかで感じたことがある。

「アルグレスと言ったな。いや、アルグレス様。話しは我らが長より聞いております」

そうか。

わかったぞ。

この雰囲気はグラークの発するそれと同じだ。

「グラーク・・・」

「そうです。ワシの腕をご覧下さい」

ギールは俺の目の前に腕を差し出す。

その腕が変化していく。

これはグラークの腕だ。

間違えることはあるまい。

ギールとはグラークが姿を変化させた・・・。

俺の頭の中で謎となっていた線が一つになる。

「ギールさん、長とはガルガイアですね?」

「その通りでございます」

疑問は確信に変わった。


P102へつづく。
 
 
 
 
 
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時空の羽 P100

これが港町ベルクマか。

噂には聞いていたが、予想より遥に大きな町だ。

門番は俺が村長から預かった手紙を見せると、何の疑いも無く、門を開けてくれた。

夜の訪問者を不審に思わないのだろうかと思ったが、それは門を入ると一蹴される。

明るい。

それに、夜でもこんなに多くの人を見ることが出来た。

俺は村長に聞かされた、港町ベルクマの話を思い出す。

眠らぬ町、ベルクマ。

ベルクマは港町だけに人の出入りが多く、俺が今見ている夜の面。

そして、本当の港町ベルクマの面があるということ。

耳には賑やかな音楽が入り、人々の歓声も聞こえる。

「ちょっと、お兄さん。お入りなさい」

そう声を掛けて来たのは1人の女性。

母さんよりは歳が上なのは一目見てわかる。

どうやら客引きのようだ。

「この町は初めてかい?」

「・・・・はい」

「そうだと思ったわ。それなら話しが早い。ベルクマに寄ったらまず『ギールの宿』。

 これはこの町に来る旅人の習わしだよ」

ギールの宿?。

確か、村長はギールという人物に手紙を渡せと俺に手紙を預けた。

関係があるのだろうか。

「あの・・・、これを見てもらえますか?」

そう言い、村長から預かった手紙を渡す。

女性は目が飛び出るかのような表情でそれを読んでいる。

「ギールは私の旦那だよ。私の名はイザベラ。この町ではちょっとした有名人さ。

 しかし、お兄さん、あんたがね。この若さでとは大変なことじゃないかい。

 名は何と言うのだい?」

「アルグレスと言います」

「よし、アルグレス。この件は私にお任し。その前に食事だね。

 さあ、遠慮せずにお入り。お金の心配はいらないからね。

 旦那の命の恩人からお金を取ったら罰が当たってしまうわ。さあ、さあ、お入り」

「あ、・・はい・・・」

こんな偶然があるのだろうか。

町に入って、こうも早くにギールという人物の奥さんに会えるとは。

しかも、そのギールと村長は何やら訳ありのようだ。

俺はイザベラの言うがままに店へと入る。

本当はイザベラの勢いに押されて入ったのだが、これは仕方あるまい。

店に入るとわかるのだが、その店内の賑やかさに圧倒されそうになる。

男女を問わずに、多くの人々が食事と酒を楽しんでいる。

そして、その店の広さにも圧倒されそうだ。

溢れんばかりの人に美味しそうな匂い。

お腹の虫が鳴りそうになる。

腹が減っては戦は出来ぬとは誰が言ったのだろう。

ここは郷に入れば郷に従えだ。

「こっちだよ。ここは賑やか過ぎるからね。

 落ち着ける部屋があるから、そこで話を聞きたいわ」

「わかりました」

イザベラはうなずくと店内を縦断して行く。

その奥にカーテンのようなものがあり、それを開けながら中へ入る。

俺も当然のことだが、イザベラに習う。

イザベラがそこにあるドアを開け、中に入る。

「ここで待っていな。食事と酒を用意させるからね。それと旦那も連れて来る。

 そんなに緊張しなさんな。まあ、初対面だから仕方ないか。待っておいでね」

「・・・・はい」

圧倒されてしまった。

こんな人を女傑というのだと思ったが、口には出せない。

部屋の中にはテーブルがあり、そこにある蝋燭の灯りが心を落ち着かせてくれた。

普通の蝋燭ではないのがわかる。

この香りは・・・。

蜜蝋か。

甘く優しい香りが漂っている。


P101へつづく。
 
 
 
 
 
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時空の羽 P99

心地良い風が吹いた。

木の葉が微かに揺れる。

何かの甘い匂いがするのもわかる。

「若いの、まず、名前を聞いておく。いや、ここはワシが先に名乗ろう。

 ワシの名はバダイダじゃ。この地に根を生やし、1000年余。

 ワシとの出会いを偶然と思うか?。いや、違うぞ。これは古の時代から定められたことなのじゃ。

 これはワシも今お前さんに会って気づいたことじゃがな。では、名を聞こう」

「アルグレスと言います。今は旅の途中で、港町ベルクマを目指しています。

 そこからタイタニ島へ行くのが俺の宿命・・・です」

木と話しているのだが違う。

人間以上の存在感を感じたからだ。

1000年余において生きていれば、それは当然のことなのかもしれない。

「うむ、アルグレスよ。良く聞くのじゃ。ワシとこうして話すことが出来る人間は少ない。

 この世界でもお前さんの両手の指の数もおらぬからな。

 これは特別な力じゃが、それ故にその持つ影響と宿命も大きく多くある。

 その中でアルグレス、お前さんは更に特別じゃ。これはお前さんが生まれる前から決まっていたこと。

 母君はそれを知っておる。知って、この地でお前さんを生んだのじゃ。

 アルグレス・・・いや、宿命の御子よ。

 お前さんが道を誤らず、正しき道を進むのを祈るばかりじゃ。これは誰にも出来ぬ。

 お前さんが自分で決めることじゃからな」

軽いめまいが俺を襲う。

俺の宿命は何となくわかっていた。

これは母さんに聞いたからだ。

しかし、バダイダの話では・・・。

俺は一体何者なんだ?。

謎が謎を呼ぶ。

頭が混乱しそうだ。

「すまん、余計な事を言ってしまったようじゃ。

 これは後々にわかること。今は頭の片隅にでも置いておいてくれ」

「・・・うん、わかったよ。でも、俺は・・・」

「大丈夫じゃ。気にする必要はない。ガルガイアが全てを教えてくれよう。

 それと、アルグレス、お前さんの力の使い方もじゃ。

 手を開いて、頭上にかざすのじゃ。ほれ、早くせい」

言われるままに手を開き、頭上にかざす。

枝が揺れる。

葉が揺れる。

風は・・・感じなかった。

そして、その手の中に何かが落ちたのを感じた。

「よろしい。それはワシからの贈り物じゃ」

手に落ちたものを見てみる。

これは・・・何だ。

何かの実のようだが、俺はこれを知らない。

「バダイダ、これは何だ?。見たところ、実のようだけど・・・」

「それはな。ダイの実と呼ばれておる。幻とも言われる実じゃ。

 100年に1つだけ実るものでな、ワシはこれを授けて来た。

 今は使い道がわからなくてもよい。持って行け。

 そして、目を閉じるのじゃ。風が止んだら目を開けるとよい。では、ゆくぞ」

俺は言われるままに目を閉じた。

優しい風が俺を包む。

草の匂い。

土の匂い。

どれもが優しく温かい。

これは・・・母さんの優しい風。

そうだ。

大地の風が俺を優しく包んでいる。

耳に入るのは草木のささやき。

何を話しているのだろう。

会話が聞こえるかな?。

そう思っていたら風が消えた。

目を開けてみる。

夜だ。

俺の目の前には町が出没していた。

遠目に海が見える。

町の入口である門にはこう書かれてあった。

『港町ベルクマへようこそ』


P100へつづく。
 
 
 
 
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