我輩は猫である

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恋愛「四季に読む歌」

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四季に読む歌 P11

もしかしてと思っていたんだ。

てくてくてくてく。

たったかたったかたったか。

歩みはいつの間にか小走りになっていた。

駅前の公園の大きな桜の樹。

私の大好きな桜の樹だ。

本田隼人君だったな。

彼に初めて出会ったのがそうだった。

桜の樹が私達たちを会わせてくれた?。

もしかして、運命の出会いだったのかな。

きゃっ、私ったら何考えているんだろう。

顔が少し熱い。

少し走ったから?。

ううん、自分でもわかってるよ、違うってことくらい。

これは誰にも言えないな。

お母さんにも内緒。

桜の樹にだけ、全部教えちゃおう。

聞いてくれるかな?。

うん、きっと、大丈夫。

急ごう。

少しずつ覚えたんだ、町のこと。

色んなところに行ったけど、私が好きなのは変わらない。

駅前の公園の大きな大きな桜の樹。

今は満開に花を咲かせ、私を祝福してくれている。

もう少しだ。

もしかして・・・。

ううん、今はこの気持ちだけを話して来よう。

それだけで幸せだから。

たったったったっ。

いつの間にか走っていた。

気づかなかったよ、私。

自分で自分がわからない?。

これは誰かに聞いた覚えがある。

テレビで知ったのかもしれない。

どちらでもいいや。

『恋は人を盲目にさせる』

私には難しいと思ったけど、今は何となくわかる?。

ような気がするだけ・・・かも。

周りの景色が見えていなかった。

変かな?、今の私。

知ってる人とすれ違ったような気がするけど、全く視界に入らなかったよ。

気がつくと駅前の公園に着いていた。

今の私を待っていてくれるような、桜の樹。

報告しよう、今の私の気持ちを。

ん!?、これは告白なのかな?。

そう思うと少し恥ずかしいよ。

でも、そのために来たのだからね。

今の私の胸の内を報告しよう。

秘密だよ?、桜の樹さん。

「私ね、今日、小学校の入学式だったんだ。それでね。また彼に会えたよ。

 本田隼人君、桜の樹さんが私に会わせてくれた男の子だよ。

 それでね。一緒のクラスになれたんだ、彼と。

 私・・・、彼にもしかして・・・。ねぇ、聞いてくれてる?。

 うん、ありがとう。でも、・・・恥ずかしいからこれは内緒。

 また来るから、その時ね。じゃあ、またね」

言えなかったよ。

でも、少し言えた。

帰ろう。

お母さんも待っているから。

心配させちゃうからな。

びっくりしちゃったよ。

もしかしてと思ったけど、会えたよ、彼に。

『こんにちは』

声が重なってしまった。

本田隼人君、私の・・・の人。


P12へつづく。
 
 
 
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四季に読む歌 P10

心が弾む。

どうしてなのか、自分でもわからなかった。

いや、気づいていないだけ。

「隼人、走らないの。スーパーは逃げないって、言ったでしょう、もう」

「う、うん。でも、嬉しいから」

「そうね。明日からは授業も始まるし、私も嬉しいわよ。友達もいっぱい出来そうね」

「もういるよ」

「え!?、そうなの?。母さん、気づかなかったわ。

 男の子?、女の子?、名前は何て言うの?」

「う〜ん、今は内緒」

「母さんにも?」

「うん」

「そのうちに紹介するのよ」

「わかってるよ」

「女の子ね?」

「ええっ!?、何でわかったの?」

「それはね。私が隼人のお母さんだからよ」

「ええ〜?」

「当たりだったみたいね」

「あ、母さん、ずるいよ〜」

「顔が赤くなってるわよ、隼人」

「・・・・・・・・・・・」

母さんには敵わないな。

俺の母さんだから仕方ないか。

優木春菜だった。

彼女を思い浮かべると、気持ちが空を飛びそうだ。

初めて会ったのは、お気に入り。

大好きな駅前の公園の桜の樹だった。

明日になれば・・・学校で会える。

学校という新しい人生の始まりでもあるが、彼女の存在が俺の心に華を咲かせてくれた。

道行く人々。

小さな町だから、知らない人の方が珍しい。

俺の生まれ育った町だからな。

この道も何百回、いや、数え切れない程通ったのだろう。

そして、この道は駅前へと続いている。

そこにあるのが、お気に入りの桜の樹。

今日の出来事を報告したい。

聞いてくれるかな?。

うん、きっと大丈夫。

俺にはわかるんだ。

いつも俺の言葉に耳を傾けてくれていた。

伝えたい、この今の俺の気持ちを。

「隼人、どうしたの?。心ここにあらずって、感じね。

 さては、さっき言っていた女の子の友達のことを考えていたのかしら?」

「か、母さん、何言ってるの・・・。え、え〜っと、違うよ?」

「またまた大当たりのようね。うふふ、隼人が紹介してくれるのを楽しみにしてるわね」

そう言うと、母さんは俺にウインクしてみせた。

返答に困る。

顔が熱いよ。

もう、母さんは・・・俺の母さんだからな。

敵わないや。

「はい、到着よ」

あっと言う間だった。

駅前のスーパー。

そして、駅前の公園の桜の樹。

そして、出会った。

『こんにちは』

声が重なってしまった。

桜の樹が会わせてくれたのだろうか、彼女と俺を・・・。


P11へつづく。
 
 
 
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四季に読む歌 P9

時を刻む音。

私はそれを知っている。

覚えているというのが正しいのかもしれない。

忘れられない音の一つ。

「お母さん、それ、お父さんの時計だよね」

「そうよ。お父さんに春菜の晴れ舞台を見てもらおうと思ってね」

後で知ったのだが、それはただの時計ではないことだった。

懐中時計なのだが、その蓋を開けると裏には私と母の名前が刻まれている。

「喜んでくれたかな、お父さん」

「そうね。嬉しくって、天国でスキップ踏んでいるかもね」

「う〜ん、お父さんなら本当にしていそう。でも、そうしてくれていたら嬉しいな。

 私ね、お父さんもお母さんも大好きだから」

「私も同じよ。春菜もお父さんも大好き」

「同じだぁ」

「親子なんだから当たり前よ」

「そうだよね」

「そうそう」

この町には本当に桜の木が多い。

入学式の帰り道だが、道に沿うように桜の木が植えてある。

しかも、今は満開だ。

でも、私が好きなのは・・・。

駅前の大きな桜の樹。

初めて彼に出会ったのもあそこだったな。

本田隼人君、私のことを覚えてくれていた。

嬉しいな。

私も覚えていたよ、隼人君。

明日からは授業が始まる。

隼人君にも毎日会えると思うと、心が空を飛んでしまいそう。

本当に楽しみだな。

何を話そう?。

いっぱい話せるといいな。

だって、私の一番のお友だちだから。

それに、私、彼に恋・・・。

「春菜、どうしたの?」

「えっ!?、私、どうかしてる?」

「そうね。顔が少し赤いから風邪でも引いたのかなと思ってね。

 おでこを触るわよ」

「お母さん、風邪じゃないよ」と言いたかったが、恥ずかしくていえないよ。

「私の気のせいみたいね。何かあったら直ぐに言うのよ」

「は〜い」

でも、言えない。

言ったら、本当に顔から火を噴きそうだから。

家に帰る道のりは楽しかった。

目に鮮やかな桜色。

それと、桜の香り。

私はこの町が好きになれるかな。

きっと、大丈夫。

春の桜が私を歓迎してくれたから。

桜と言えば、駅前の桜の樹。

今日の出来事を報告したい。

「ただ今帰りました」

「ただいま〜」

「お帰り。どうじゃった、春菜の入学式は?。

 ワシもばあさんも本当は出席したかったのだがな。

 年寄りがでしゃばることはないと思い、行かなかったが、今思えば孫の大切な入学式じゃ。

 やはり、行くべきじゃったの」

「お父さんにお母さん。心配はいりませんよ。

 春菜は堂々たるものでした。これは春彦さんに似たのかもしれません。

 きっと、春菜の成長を見守ってくれると思いますからね。大丈夫ですよ」

「そうじゃな。今晩はワシとばあさんが腕を振ったでな。

 ご馳走じゃぞ。春菜の新たな人生の門出を祝うには丁度良かろう」

「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくわ」

「うん、おじいちゃんにおばあちゃん。本当にありがとう。

 私、頑張るからね。それに本当に楽しみだから」

晩御飯までにはまだ時間がある。

そうだ。

今日の出来事を報告に行こう。

私の大好きな駅前の桜の樹。

彼と初めて出会った、お気に入りだ。

「お母さん、少し、出掛けて来るね」

「そう?、じゃあ、晩御飯までには戻るのよ」

「は〜い、わかってます」

もしかして、隼人君もいるかな。

そうだといいな。

何か予感がするんだ。

楽しみだよ、私。


P10へつづく。
 
 
 
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四季に読む歌 P8

帰り道。

母さんと2人での帰り道。

重いけど、荷物は俺が持った。

いや、母さんに無理を言って持たせてもらったんだ。

男だというのもあるけれど、何よりも楽しみなのは明日から始まる授業。

彼女も一緒だ。

また明日会える。

毎日会えるとの実感が俺の気分を高揚させていた。

「母さん、俺ね」

「わかってるわよ。『頑張る』って、言うのでしょう?」

「えっ!?、何でわかったの?」

「それはね。私が隼人のお母さんだからよ」

「え〜、何かずるい〜」

「いいじゃないの。頑張ってね。それよりも楽しんでと母さんは言っておくわ」

「うん、楽しみだよ、俺」

「それでいいのよ。隼人は隼人。自分の人生なんだから楽しまなくちゃ損、損」

「じゃあ、母さんの楽しみは?」

「母さんはね。・・・今は内緒」

「ずるいよ〜」

そんな母さんの顔が優しく眩しかった。

それに楽しそうだったから。

「隼人、家に帰ったら荷物を置いて、スーパーに行きましょう。

 今日はお祝いしなきゃね。母さん、腕を振るうわよ」

「うん、何作ってくれるの?」

「それはね。晩御飯までのお楽しみ」

「母さん、またずるいよ〜」

「期待してね」

「・・・うん、楽しみにしてる」

春の匂いに桜の香り。

帰り道に沿って咲くような桜の木。

桜並木だなと俺は思った。

昔から住んでいるのだが、この道を意識して歩いたことはない。

俺の桜と言えば決まっている。

駅前の大きな大きな、桜の樹だ。

そう言えば彼女と出会ったのもあの桜の樹。

優木春菜だったな。

背中に背負った荷物に右手に持った荷物。

彼女のことを考えるとそれが羽のように軽く感じる。

「ただいま〜」

「お帰りなさい・・・って、違うでしょ。違うのは私ね。

 ただ今帰りました。お父さん、帰ったわよ。隼人は自分の荷物を2階に持って行ってね」

「うん」

俺の家は古いが、今では珍しいレンガの壁で有名みたいだ。

木造家屋が並ぶ中で目立ってしまう。

「お帰り。何か楽しそうじゃの」

「隼人の入学式ですからね。嬉しくって、つい・・・・」

「それでええ。ワシも楽しみにしておった。

 隼人は優しい子じゃからな。将来が本当に楽しみじゃ」

「そうね。本当に楽しみだわ」

2階には部屋が4つあるが、俺の部屋は廊下の突き当たり。

将来のことを考え、じいちゃんがそうしてくれた。

今の俺には少し広過ぎる気もするが、俺はこの部屋が好きだった。

父さんが昔に使っていたというのが一番の理由。

今は亡き、父さんの存在をどこかで感じることが出来るから。

そうだ。

荷物を置いたら、母さんと買い物だ。

急いで荷物を置いて、1階へと降りて行く。

「母さん、お待たせ」

「早いわね。母さんは、・・もう少し。ちょっと待ってね」

「うん」

「お父さん、これお願いしていいかしら?」

「おお、任せてくれ。隼人も待っておる。ワシのことは気にせずとも良い」

「ありがとう。じゃあ、行って来るわね。隼人、行くわよ」

「うん」

駅前のスーパーだ。

俺の大好きな桜の樹が見れる。

母さんの手を引っ張るように俺は家を出た。

「隼人、急がないの。スーパーは逃げないわよ」

「う、うん」

気が逸る。

それに何かの運命を感じる。

俺の気のせいかもしれないが、楽しみだな。


P9へつづく。
 
 
 
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四季に読む歌 P7

次々と進む自己紹介。

もう少しで私の番かな?。

ドキドキは・・・。

少し治まった。

大丈夫、私、出来るよ。

「はい、次は優木春菜さん」

私の名前だ。

「優木春菜です。この町に来て、まだわからないことが色々とありますが、皆さん、よろしくお願いします」

言えた。

お母さん、私、上手く言えたよ。

彼のお陰かも?。

本田隼人君、お話したいな。

終わった、自己紹介。

先生が言ったのは、教材を受け取り、明日から授業が始まること。

教室を出ようと席を立った彼。

気になったので、見ちゃった。

あ、気づいてくれた。

嬉しい。

私、今どんな顔してるかな。

「春菜、教材を受け取りに行くわよ」

「あ、う、うん」

「どうかした?」

「ううん、何でもないよ。お母さん、行こう」

「楽しみね」

「うん、私、本当に楽しみ」

「そう、それを聞いて私も安心したわ」

「お母さん、行こう」

「はいはい」

教材を受け取りに教室から出る。

「春菜、こっちよ」

「は〜い」

場所はお母さんが知っていた。

そうか。

お母さんは1枚のプリント用紙を持っている。

そこに教材を受け取る場所が書かれていた。

『視聴覚室』

これがそうなのかな?。

漢字が読めないのが悔しい。

でも、これからいっぱい勉強するんだ。

「春菜、4階まで上がるわよ。階段だけど、大丈夫?」

「うん、平気、平気」

「そうね。子供だからそれくらいの元気が無いとね」

「うん、私、階段好きだよ」

「そう?」

「うん、何かあると思うとワクワクするから」

「じゃあ、私は気合を入れないとね」

「お母さん?」

「行くわよ」

「うん」

階段を上がる足音が響く。

1段、2段、3段、・・・。

気がついた時には4階に着いていた。

「優木春菜さんですね。入学おめでとうございます。

 こちらが教材になるので、お持ち下さい」

女の人だ。

この人も先生なのかな?。

「ありがとうございます。春菜、行くわよ」

お母さんは教材を受け取るとその場を立ち去ろうとしていた。

「お母さん、待って。私も持ちたい」

「そう?、じゃあ、半分ずつね」

「うん」

持って来た鞄にお母さんが教材を入れてくれた。

何が書かれているのかな。

少し重たいけど、大丈夫。

「行くわよ」

「は〜い」

楽しみだな、明日からの授業。

本田隼人君にも会える。

本当に楽しみ。

早く明日になあれ。


P8へつづく。
 
 
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