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名作に親しむ [ 阪急電車(有川浩・幻冬舎)]
袖振り合うも他生の縁という諺があります。
どんな小さな事もすべて深い宿縁によって起こるという意味。
本作品はごく普通の通勤通学電車の中で起こっている些細な出来事にスポットを当て、
そこでのホットな人間模様を描いたものです。
混みあった電車の中は、老若男女を問わず人の息を最も身近に感じ取れる場所です。
しかし、大抵の場合、それぞれが違う目的地へ向うまでの一時的な繋ぎの場所なので無表情です。
ぼんやりしていたり、居眠りしたり、ゲームしていたり、雑誌を読んだりしています。
しかし、見方を180度変えて、
ここは、お互いが深いところで結ばれている運命的な出会いの場所、
目に見えないが、宿縁で繋がった運命共同体だとしたら、
目の前で一体どんなことが継起的に起こるか興味津々です。
本書は、阪急今津線の宝塚駅から西宮北口駅まで8駅、
各停で片道僅か15分、往復で30分の車中で繰り広げられる、
別々に秘められたホットな人間関係を人が乗り降りする駅ごとに有機的に紡いで、
人情味ある全体に仕上げた作品です。
作品全体を通じた主人公はいないが、
個々の場面で登場する主な人物は、生き生きとしていて前向きです。
加えて、ユーモラスな仕草の中にも誠実さや正義感があります。
個々の筋書きを目で追っていると、
自分もその中に参加しているようで、明るい気持ちにさせられます。
例えば、女子高生達の一人がこっそり付き合っている年上の彼が、
自分の服にアイロンを当てる際に「絹」の漢字を読めないことを
車内で笑い飛ばして冷やかしている場面は抱腹絶倒。
数ヵ月後、その男性が彼女とデートの際に
「俺みたいなバカ見捨てられそう。何しろ俺は糸に月やからな」とオチをつける。
でも、彼女は「バカでも好き」と告白する。
こんなオチを言える相手ならきっと誠実に違いない。
もし、相手が「苺」の漢字を読めないなら、
どのようにストーリーを組み立てて、最後にオチをつけるか興味津々。
「・・・・・」「何しろ俺は草に母やからな」
一方、彼女らの明け透けな会話を耳を澄まして聞いていた隣の女子大生が、
これを契機に平気でDVする彼と別れる決意をする。
関西の私鉄電車内ならありそうな気がします。
読み終わった後、本書のタイトルが、
自分がよく利用する「近鉄電車」「JR環状線」ならどうなろうかと想像したが、
このような品のあるストーリー展開は北の阪急沿線ならできても、
淀川より南の私鉄沿線では無理と直感してガッカリ(笑)。
もっとコテコテのおじさんやおばさんが登場して、
阪急電車の女子学生から、「あの人達、サイテイ」と言われてしまいそう(汗)。
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