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名作に親しむ [ 地底旅行(ベルヌ・岩波書店)]
幼少の時代はラジオドラマが盛んでした。
その中で最も記憶に残っているものの一つが、ベルヌ作の「地底旅行」でした。
シンプル音を組み合わせた地底からの不気味なメッセージに迫力を感じましたが、
今日まで原作を読まずにきました。
地質学者であるリーデンブロック教授は、
古い書物の中から同じ地質学者であるサクヌッセンム氏の残した小片を手に入れます。
それが彼の地底旅行の暗号であることを解読します。
早速、助手のアクセルと旅先案内人のハンスの二人を率いて、
地底への入口であるアイスランドのスネフェルス火山を目指します。
火山の入口までは地元民であるハンスの先導で無難に辿り着きましたが、
地球内部まで繋がる、暗黒の地底トンネルは簡単な照明灯のみで全くの手探りです。
測量器のデータや教授の博識やハンスの手腕などによって何とか難関を突破していきます。
19世紀中頃までの地質学の知見を駆使しながら、
彼らが地底で出くわす目前の諸現象を教授が尤もらしく説明する場面には、
当時最新の科学情報を収集した作者に対して敬服と滑稽さを憶えました。
加えて、アイスランド上陸後からスネフェルス火山下の地底探検中まで、
白黒の無機質世界の描写がほとんどです。地底旅行だからと諦めながらも、
折角のアドベンチャーものだから、場面にもっと華がなくてはと陰気に感じました。
例えば、アイスランドの道中、暗く貧しい原住民の生活や厳しい岩場の風景が描かれています。
探検が初夏の6月ならば、欧州は新緑シーズンのはずです。
「道の土手に野イチゴが成っていて、休憩の一時に熟れた赤い果実を頬張った」と
言ったような一文があっても良さそうにと不満に思いました。
しかし、さすがは冒険ものの第一人者だけあります。
突然、地底に太古の海が現れます。
電気を帯びた光線によって海全体が照らし出され、
古代の植物やキノコが生い茂り、地上では滅び去った爬虫類や魚類が繁栄しています。
さらに、激しい嵐あり、巨大な間欠泉あり、原人の人骨ありで、
ありったけの見せ場を作ってくれます。
やがて、太古の海に通じる火山道にサクヌッセンム氏の残した文字を発見してそこから脱出開始。
海辺の資材を集めて組んだ筏に乗り、火山噴火による上昇圧力によって、
北方のアイスランドから遠く離れたイタリアのエレナ火山近くの地上へ無地に帰還します。
まさに、浦島太郎の竜宮城のストーリーのようです。違うのはエピローグ。
浦島太郎は玉手箱をあけて、残酷にも、衰えた、見知らぬ、白髪の老人になってしまったが、
彼らは大冒険の成功がもとで、欧州で超有名なヒーローになりました。
何事でも困難な道を開く人は、終わりはハッピーでなければ釣り合いが取れません。
浦島太郎の最期に向けられたような、目に見えない嫉妬や策略では話になりません。
失われた20年のドタバタ政治、これからどっちに変わるのでしょうか。
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