はじまりの世界創造所

当所の創作現主軸→世界創造・ROE・BM・おはなとしょうじょ/2017,8,8現在→8月24日は白月宅の看板娘アルジィ誕です♪

Requiem of evil

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(※当作品のメインキャラクター達(魔王&勇者&魔法使い&参謀))

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(※当作品のサブキャラクター達(狂戦士&魔女))



 このカテゴリーでは白月作のオリジナルの短編小説・【Requiem of evil】を公開しています!(>▽<*)

 こてこてのファンタジー世界&RPGをイメージした世界観で、世界を滅ぼすことを願う魔王とその部下達、そんな魔王を止めようと奔走する勇者とその仲間達の物語です。
 物語の始まりは、魔王が世界を滅ぼしたその瞬間から。

 当初は突発的な思い付きによる単発の短編の予定でしたが、意外に来訪者の皆様からの反響があり、作者本人もお気に入りになったことがキッカケで思い付いたら何らかの物語を作成・掲載することにしたので、当書庫を作って独立しました!是非是非、今後も楽しんで頂けると幸いです!!(>▽<*)
 <一番楽しんでいるのはぶっちゃけ自分ですが!(笑)

 現在は当作品の本編と外伝、その他思い付いた物語を思い思いに掲載している状態です。
 今後、番外短編と称して当作品のサブキャラクターの物語等も更新予定です。更新された際は是非読んであげて下さると嬉しいです!(>▽<*)
 本筋はシリアスですが、その他ではギャグな展開もコミカルな展開もほのぼのな展開もあります。(笑)

 因みに、書庫タイトルの読みは「れくいえむ おぶ いーう゛ぃる」。


 来訪者の皆様、良ければご覧になってあげて下さい!!m(_ _*)m
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幾つもの季節を乗り越え、わたしとあの人はあれから10の年を越えた。
確かに息づく新たな世界をわたしは生きている。

10年も経てば、全てを失ってあれほど何もなかった世界にも緑が生まれて来た。
未だ世界には、以前の活気など戻るはずもなく。

以前の世界にはもう、還れない。




この世界に生きる人間はわたしとあの人と、


………わたし達の間に生まれた、愛しい家族だけだ。



わたし達の為に、果てたみんな。
あなた達が願った未来は、わたし達が生きる今の世界にはあるだろうか?


あなた達が、命懸けで未来に遺してくれたわたし達。
わたし達はあなた達に報いれるだろうか?




今はまだ、分からない。



ただ今日は、わたしがまた1年分歳を刻めたことを祝おう。

そう、今日は世界の滅びから10年目の春。
わたしは今日、25歳の誕生日を迎えた。


あなた達に、わたしが今日まで歳を刻めたことを感謝しよう。

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「生まれて来てくれて、ありがとう」


―――空の上から、わたしの声は少しでも聴こえるか?
ゼファー兄さん。


「わたしは、あなたのお陰で今日も元気だよ」


空の上でも、わたしのことを、想ってくれてるか?
空の上のあなたの心に、わたしが入る隙間はあるか?

今になってわたし、あなたがいなければとても寂しいことに気づいてしまった。


大好きな人と一緒に逝けたあなたは、今は安らかだと信じてもいい?

そう思っていればわたし、大丈夫だから。

わたしには、今でもあなたの声が、昨日聞いたかのように聴こえて来る。


あなたと辿った道の面影は、この世界にはもうない。
だけれど、わたしの中にあなたの奇跡と軌跡は続いてゆく。




25年目の今日の日の誕生祝いは、いつかの誕生日と同じ、夜。


薄ぼんやりとした月灯りの中、わたしはあなたの墓標に微笑みを送る。



(忘れないよ、いつまでも。
あなたのことは)


わたしは生まれてからずっと、あなたと一緒に歳を重ねて来た。
同じ4月15日の温かい春の日に生まれたわたし達は、絶えることなくいつも同じ日に歳を重ねたから、10年前それがもう二度と叶わなくなったのだと不意に気づいた時、哀しくて、わたしは小さく泣いたよ。

あなたが、もういないなんて、わたしはまだ受け入れられないんだろうな。


愛しいあの人が、いつも一緒に祝ってくれるようになったから寂しさは薄れた。
だけれど、あなたの代わりは、どこにもいないから。

寂しいよ、ゼファー兄さん。



あなたが、あなたの愛しい人と逝けたことが、あなたにとって幸せなことだったのだと思っていなければ今にも心がぐちゃぐちゃになってしまいそうだ。

だけれどかけがえのないものを失い、代わりに別のかけがえのないものを守ったわたしには当然の痛みなのだ。


もうあなたに甘えることは、永遠に出来ない。

だから、甘えずに痛みを抱えていかなければいけない。

(…………ゼファー兄さん)

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ここに来る度わたしの心は、懐かしい想い出にひたりながらも、沈む。

だけれど沈んだ心は、あの人の優しい声を聴いて明るく浮上するんだ。

(来てくれた)

ほら今も、あの人の声にわたしは顔を上げて。

あの人と向き合う。


「お前の生誕の祝いに遅れるとは、私は何ということをしたのだろうな」
「あ……」


昔よりも柔らかくなった物腰。
昔よりも強くなった瞳。

昔よりも、わたしと近い距離。

わたしの隣に立つ、かつて“魔王”だったとは思えない人の優しいぬくもり。


「ファラハ。

待たせてしまったが、これから私も祝わせてくれ」


わたしに残った、最後の奇跡(あの人)。



わたしはあの人に、「お前のお陰でわたしは支えられている」とよく言われるけれど、自分もわたしを支えてくれていることを、あの人は知っているのだろうか?





ゼファー兄さん。

聞いて、ゼファー兄さん。


寂しいけれど、わたしはやっぱりあの人だけでも救えた世界で良かったと思うよ。

薄情な元勇者でごめんなさい。

あなた達が生きられる世界を残せなかった元勇者だから、何度でも怒っていい。



だけれど、誰よりも優しいあなたはきっと笑って言うんだ。

『ファラが幸せならオレはそれでいいよ』

わたしは、どこまでも、あなたの優しさに甘えてばかり。

だけれどあなたの最後の望みも叶えられないような薄情者には、なりたくない。

「…………ファラハ?」


不思議そうに声をかけて来るあの人。

ああ、そうだ返事をしなければ。



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「今年も一緒に祝おう!」
「…………ああ」


わたし、幸せになりたい。

愛おしいあの人が、わたしにはまだ残っているから。


あの人と一緒に、幸せになりたい。




あの人と一緒に、未来を歩みたいんだ。


ここからまた、わたし達の世界が始まってゆくことをわたしは信じたい。


なあ。


――――――ソリティア。



















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〜導きの者〜
『希望の西風・魔法使いゼファー=オルドレッド』

*多くを悼み、多くを慈しみ
奇しくも魔にさえ希望をもたらした
わたし達の やさしき風
魔法使いゼファー=オルドレッド

ここに 愛しき者と 葬(ねむ)る*


〜導きの者の墓標・勇者の詞より抜粋〜




*** *** ***




体は遠く離れてしまっても、心と魂は傍に。
勇者と魔法使いの絆は途切れない。

そして、遺された勇者と魔王は結ばれて未来を共に歩んでゆく。

一度は終わって再び始まった世界を、彼女は彼とこれからも生きて行きます。

終わりは始まり。
始まりは終わり。

これからもずっと、彼らは失った彼らのことは忘れはしません。


永遠に。



〜fin,〜

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まさに今、世界の崩壊の時、君といられるのは運命なんだろうか。

最後の最期まで、オレは君の怒った顔と泣き顔を、近くで見られるだなんて。

つくづく女難だと思ってたのに、そんなことはなかったみたいだ。

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“最後の最期に、君といられる”。

これは幸いなのか、不幸なのか。

君にとってはどうかな?

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オレにとっては、ある意味不幸中の幸いかも知れない。

もちろん死にたいワケじゃないし、君に死んで欲しいワケじゃないけれど。


もし君が、オレの知らないところで逝っていたらもっとつらかったと思うから。





良かった、ここで、また会えて。

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忘れたりしない。

今の君の涙も笑顔も。

“昔も”。

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お願いだ、忘れていて。

思い出したら、君が、つらいだけだ。



楽しかった記憶が多ければ多い程、きっと君は胸を痛ませる。


君がこれ以上哀しむ顔なんて、見たくない。



でもさ、本当は何度も伝えようかと思ったんだ。
本当は思い出して欲しかった。
もしかしたらあの日みたいに、話せるかも知れないじゃないか?

それでも、オレは本当に君と会えるだけで充分だった。
例えそれで何度危険な目に遭っても、君の姿が見られるだけでまるで昔に戻ったみたいで、嬉しかった。

思い出さなくていい。
君を困らせてしまうくらいなら。



君は魔王サマの参謀サマ。
オレは君の魔王サマを倒さなきゃいけない、勇者一行の魔法使い。

なのにオレは、君に会いたいからって、へらへら笑って君に近付く。

それだけでも君を、困らせているのに。
君を、泣かせてしまっているのに。

これ以上のワガママなんて、言えると思う?



君に、また、会えた。

それだけで充分だから。



オレの想いなんて、世界と一緒に、消えちゃえばいい。


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君を心配して探しに来た“お迎え”が、
君を連れて行くまでのあの時間は、
本当に幸せで。

大好き、と言って笑い合った、君の笑顔をオレはずっと覚えている。


別れなきゃいけなくなった時。

君は、初めて会った時と同じようにわんわん泣くからさ。
約束、したんだ。

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『また会えたらその時は絶対に、迎えに行くから』。

なんて子ども同士の口約束だったかも知れないけど、オレはずっと、覚えていた。


世界はこんなに綺麗なのだと、

こんなにも輝かしくていとおしい気持ちがあるのだと、

君といられる世界は、こんなにも広くて、優しいのだと。


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戦場で敵になった君を見つけた時、
哀しかったけどそれよりも会えたことが嬉しくてオレは、笑った。

後ろから刺されたって構わない。
君が、思い出してくれないかと、一縷の望みを天に託したこともあった。

でも、いい。
思い出さない方が、君が、これ以上泣かずに済むじゃないか?

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ただでさえオレは、君を、泣かせてばかりだったから。

『モルゲンレーテ』。
ふいに昔みたいに君の名前を呼ぶたびに、あの日々を思い出した。
いとしくて、いとしくて、たまらなかった。
『レーテちゃん』。
結局オレは、最後までふざけてばっかりだったな。
今更恥ずかしくって、昔みたいにちゃんと君のことを呼べなかった。


本当に、弱虫だった。

でも最期くらいは、勇気を出して、ちゃんと呼ぶよ。


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大好きだよ。

モルゲンレーテ。


…………“愛してる”。






*** *** ***

魔法使いの一人称視点の、この世界の終わりの瞬間のお話。
垣間見せた魔法使いと参謀の過去

これまで他では全く話題に出したことがない、ROE外伝の一番大切なお話。

世界の終わりの時、大切な人に伝えられる唯一の言葉が、彼にとってはこれでした。
彼の『大好きだよ』の言葉にどれだけの想いが込められていたのか、彼女が今際の際に気付けたのか、それは分かりません。
彼女が忘れてしまった遠い日の記憶を、彼だけは忘れずに抱いて逝きました。

例え届かなくても、思い出してくれなくても、それでいいから。
君が、これ以上泣かずに済むのなら。


形は違ってしまったけれど、ふたりは最後にお互い傍にいられました。

最期も、笑い合えました。


『やっと迎えに来れた』。

『大好きだよ』。

『愛している』。




〜END〜

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これは以前更新した『Requiemof evil〜命を繋ぐ為に〜』***番外短文・『混沌の時代の終わりを告げる鐘の代わりに、お兄さんから可愛い君へ』***の続きの短文となっております。前回と同じく一人称話なり!(`・ω・´*)
 
また、見て頂く際は例の如く本編と外伝と前回の短文に目を通してからのお読みになってからご覧になることをオススメします!
 
こちらは本編と外伝両方のエピローグのような、そして補完編のような感じで捉えて頂けると幸いです。ではではこの下から是非是非どうぞ!^p^p^p^*
 
良ければお付き合い頂けると嬉しいです!!m(_ _*)m 
↓   ↓  ↓
 
*** *** ***
 
 
 
 
泣きたいほど綺麗な夕暮れ空の下の、小高い丘の上。
かつて命あった大切な人達が眠る墓標を背に、わたしは歩き出す。
 
頬を撫でるその風に、以前のような柔らかさはなく、まるで朽ちた廃墟の岩壁に触れられているような感覚さえする。
それでも、残酷なくらいに今も尚、空の色は綺麗だった。
瑠璃?紺碧?群青?露草?
そのどれとも取れるような、眩しい光を放つ太陽が今も空で輝く。
全てを失ってしまっても、変わらず世界の空は其処にあるのだとでも言うように。
 
目に映る景色には、滅びた世界と綺麗な空の色。
 
 
何処まで歩いても、以前のような景色はない。
 
 
それでも、この世界ではあの人がわたしの隣で生きて、わたしの隣で笑って、わたしと当たり前のように話して、わたしとあの人は今、いつも一緒にいる。
 
 
そのことだけが、わたしとあの人の救いになっていた。
 
その事実が、わたしとあの人の、道標となっていた。
 
 
 
 
 
 
あの人が壊してしまった世界。
今はもう何もない砂漠で世界の大半が埋め尽くされて、みんなが眠るこの丘にさえも以前の面影は全くなかった。
わたしが、勇者としては守れなかった世界。
だけれど、わたしが他でもないわたしとしてあの人を守れた世界。
 
 
あの人が生きてゆくことを憂いた世界。
滅びてしまった世界に未来などあるかどうか、それは分からない。ただ、それでも、この世界は滅びた自分の中にわたしとあの人を遺した。
 
 
あの人が、これからわたしと共に生きてゆく世界。
わたしとあの人がこの世界に遺されたことにはきっと意味があるはずだから、わたしは振り返らずに歩いて行くことを、逝ってしまったみんなが遺してくれた、あの日と変わることのない綺麗な綺麗な青空に強く誓おう。
 
 
 
あの人と共に歩く道に、わたしは後悔などしない。
 
 
怖くないのか?と言われたら嘘になる。
不安はないのか?と言われたらそれも嘘になってしまう。
大丈夫なのか?と言われたら大丈夫だなんて胸を張って言える程強くなんかない。
わたし達以外の何もかもがなくなってしまった世界で、胸を張って大丈夫だ!なんて大口を叩ける方がどうかしている。
 
ただ、わたしは今もこうしてここで立って歩いていられるだけの余裕はあった。
 
ふらついても立て直せるし、転んでも立ち上がれる自信もある。
 
 
「…………きっとわたしは、絶望してはいないのだろうな」
 
 
立ち止まって空を見上げてみる。
キラキラと光る空は、何もない砂漠に反して何処までも何処までも、澄んだ色だ。
 
なあゼファー兄さん、わたしとあなたの瞳と同じ空の色は本当に今日も綺麗だよ。
あなたと一緒に歩いた、あの旅路の空の色を思い出す、本当に素敵な空だ。
あなたと一緒に過ごした、あの故郷の空の色も彷彿させる。
 
 
「やっぱりわたしはしがない農民の娘だな。
世界がどうこうよりも、惚れた男のことが先決らしい。結局人は、あいまいな「何か」の為より「誰か」の為の方が、強くなれるのかも知れないな。
実感がないことよりも、遥かにいとおしいものだ」
 
 
わたしも大概自分勝手なものだ、と笑って歩くわたしの足は、軽やかだった。
世界を背負っていたあの時とはぜんぜん違って、ほら、あの人だけの為だと思えばわたしはこんなにも、こんなにも、強い。
世界の為にもわたしは出来る限りのことをしたつもりだったけど、あの時のわたしは本当に弱かった。それでもあの人の為ならと頑張っていた時は、本当に強かった。
あの人もみんなもわたしのことを「強い」と言ったけれど、そんなことはない。
無理をしたことはなかったつもりだけど、わたしだって一人の少女に過ぎないのだ。
 
 
「ゼファー兄さん、あなたも、大好きな人の為だから頑張れたのかな?」
 
乾いた砂の地面を踏み締めながら、空へと問いかける。
 
「だったらわたしも、同じだよ。大好きな人の為だから、頑張るよ
 
とんとん、とんとん、と足踏みしてみると朽ちてサラサラと崩れ落ちる地面の上。
そんな大地の上じゃ希望なんかないと思うのに、わたしには絶望はなかった。
 
泣かないなんて無理だけど、笑えなくなる心配はしていなかった。
 
冷たい風と、朽ちた地面。どこまでも広がる砂漠。わたし達以外命がない世界。
だけれど何もなくなった場所にだってきっといずれ彩りが溢れ、花が咲き誇り、今は何もなくても創り出すことだって出来るはずだ。
終わりの後には始まりも付きまとうのだと、わたしはどこかで聞いたこともある。
 
 
「一度終わったからって、そのまま“全てが終わり”、という訳でもないものな
 
 
わたしは歩いてゆく。
 
綺麗な空の下を、歩いてゆく。
 
 
 
今日も空は、綺麗だ。
 
でもきっとわたしは、あの人を死なせてしまった世界の空を綺麗だと思うことはどうしても出来なかっただろう。
泣き虫のあの人を殺して平和になった世界の空なんて、わたしは見たくなかった。
 
だから、“これで良かったのだ”と、わたしはしっかりと前を向いて言い切ろう。
世界が許してくれなくても、許してくれる僅かな人をわたしは知っている。
 
 
勝手な勇者だと、後の世では語られるかも知れない。
恨まれることもあるかも知れない。
 
それでもわたしは、あの人と歩める未来を選んだ。
 
それが、わたしとあの人の物語(じんせい)の全てであり、結末なのだ。
 
 
「あの向こうであの人が、ソリティアが待ってる。
ゼファー兄さん、わたしは行くよ。また明日も絶対に来るね」
 
 
わたしは、あの人がいない世界なんて欲しくなかった。
そしてあの人は、わたしと共にいる世界を心から望んでくれた。
 
勇者と魔王じゃなく、わたしとあの人として、共に生きる未来を。
 
 
――――それは、絶対不変の真実なのだ。
 
 
 
 
 
今日も空は綺麗だよ、ゼファー兄さん。
今にもわたしを呼ぶあなたの声が聞こえて来そうな、抜けるくらいに綺麗な空だ。
 
 
 
 
 
わたしは駆け出す。
 
丘の向こうで待っている、あの人の背中へ向かって。
 
他の誰でもない、わたしとあの人がいる空の下で。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
*** *** ***
 
〜fin. 〜
 
全てのRequiemof evil(悪への鎮魂歌)の後書きの代わりに、
大切な、大切な、世界よりも尚大切なあなた達へと捧ぐ。
   
――――『あの人と一緒に生きられる未来を遺してくれて、ありがとう』―――
 

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例の如く、本編と外伝の方をお読みになってからご覧になることをオススメします!
 
↓   ↓  ↓
 
*** *** ***
 
 
 
 
 
―――『大切なファラの為に、オレが出来る一番のことをずっと考えていた』。
 
 
君ほど頭、良くないから、いい方法なんてちゃんと思い浮かばなくて。
 
ちゃらんぽらんなオレなりにちゃんと、考えたつもりだったのに。
 
思いついた最高のプレゼントは、
命と引き換えに君の命を未来に残すことだった。
 
本当はこんなに早く逝ってしまうつもりなんてなかったけど、最期に見れたのがあの子の笑顔で、最期に聴けた声が可愛い君達の声だったからいいんだ。
 
 
「満足」だなんて、可愛いファラの最期の泣き声を思い出すと、とてもじゃないけど言えないけれど。
良かったよ、嬉しかったよ、「いかないでくれ、ゼファー」ってこんなオレにさえも叫んでくれたこと。
後悔なんてしようとも思わなかったんだよ、ファラ。何だかんだ、最期にオレが一番やりたかったことが出来たことを、君は責めたりなんかしないってオレは知っているから、それに甘えているのかも知れないけれど。
こんなにもどうしようもないオレが、唯一甘えることが出来た君がいつも隣にいてくれたことが、どれだけ救いだっただろうか。それを失ってしまうことがどれだけ怖かっただろうか。
だから必死で守っていた。それくらいしか出来なくて。途中まではオレに出来る精一杯はそれだけだった。
君は、君が傷付いてしまった時オレがどれだけ不安だったか知っているかな?
君は、旅に出てから君の傍にいられない時、どれだけ心細かったか知っているかな?
 
君の存在が、オレの道標だった。
 
君がいなければ、オレはここにはいなかった。
 
物心がつくのが遅かった君は覚えているかも分からないけれど、オレと君はずっと一緒だった。君のお父さんよりも、君のお母さんよりも、ずっと一緒にいた自信だけはあったんだ。
君が忘れてしまっても、一緒に歩いて来た道筋も、君の不器用な笑顔も、君の願いも目指したものも、オレが絶対に忘れない。この世界よりも何よりも、君の哀しみと一緒にオレの命もあっちの世界へ連れて行くんだ。
 
この声は届くだろうか。これまでずっと一緒に歩んでくれて、本当のお兄ちゃんのように慕ってくれてありがとう。
だからこの最期のプレゼントだけは、受け取って欲しいんだ。
 
伝えたい想いがありすぎて、最後の瞬間の一瞬だけじゃ言葉になんかしきれなかったけど、君が生きていてくれるならオレはきっとそれで良かったんだ。一緒に笑い合える幸せがもう二度と戻らないのは、悔しいけど。
君がいなくなって一生後悔するよりは、マシだったよ。いなくなるオレが残して行く君の幸せを望むのは、勝手だと知っていながら幸せを望まずにはいられないオレを、憎んでいい。それでも幸せになって欲しい。
 
“生きてくれ、ファラハ”。
 
その言葉に全てを込めたから、どうかオレが消えてしまう前に君に届きますように。
本当はお兄ちゃんらしくなんてない、臆病でカッコ悪くてキマりきらなかったオレに、いつだって笑いかけてくれた君がどうか今、幸せでありますように。
 
 
 
―――『大切なファラの為に、オレが出来る一番のことをずっと考えていた』。
 
ちゃんと最後の最期に思いついて良かった。
 
どうしようもないオレでもこの世界に君を残すことが出来たことを、誇りに思う。
 
君がオレがいた世界にいてくれるなら、オレの明日なんて要らないよ。
君がこの世界にいてくれる未来を残していなくなるオレを、許さなくていいよ。
 
――――なのに絶対に許してくれる優しい君を、オレは守りたかった。
お兄さんの大切な、オレの大好きな、可愛いファラ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「生きるよ。だから心配しないで。あなたがいなくても大丈夫だなんて言えないけど、わたしだってあなたがいなくても生きてゆけるように頑張るから。
 
わたしの大切な、わたしの大好きな、“ゼファーお兄ちゃん”……」
 
 
あなたがいなかったら駄目だなんて、あなたがいなくなってからじゃないときっと気付けなかったくらいに傍にいてくれたことを、どうしてわたしはあなたがいなくなってしまってから気付いたんだろう。
あまりに当たり前すぎて、お礼を言えたことが一度だってあっただろうか。
 
あなたが望んでくれたわたしの未来にあなたがいないことは、あまりにもわたしには慣れ難いことだった。
わたしにしか分からないあなたとの記憶を、忘れないように何度も手繰ろう。わたししか知らないあなたの笑顔や、あなたがわたしだけにくれた大切な言葉や温もりは、わたしにしか悼めないことだから。
 
泣きたいほど綺麗な夕暮れ空の下の、小高い丘の上。あなたが眠る丘の上で、わたしは強く想う。
遠く離れてしまったのに、遠くにいる気がしないあなたの幸せを、わたしは一番に願う。
 
あなたがいなくなった未来が、まだ滲んで、滲んで、滲んで、ちゃんと見られないのはまだ秘密だよ。今にちゃんと見られるようにするから、お願いいつものように笑って見守っていて。あなたを困らせるのは絶対に嫌だ。
 
 
――――『それでも、わたしが大切なあなたの為に出来る一番のことはあなたが残してくれたわたしの命を幸せにすることだから、わたしは幸せになるよ』。
 
 
最後の最期までわたしの自慢のお兄ちゃんだったあなたが、わたしは大好き。
 
あなたが残してくれたわたしの明日を、わたしは命果てようと誇りに思う。
 
勇者でも何でもない、この世界でたった一人のファラハを一番想ってくれたのは他でもないあなただった。これから先あなたを想わない日はないだろう。
 
 
他の誰が許さなくても、わたしにはあなたを恨む理由の欠片も見当たらない。
 
 
 
 
 
「―――――どうか安らかに、おやすみなさい。
 
わたしをいつも想ってくれた、わたしをいつも護ってくれた、
世界でたった一人のあなた」
 
 
 
 
*** *** ***
 
 
〜fin. 〜
 
全てのRequiemof evil(悪への鎮魂歌)の後書きの代わりに、
大切な、大切な、世界でたった一人の大切な君へ捧ぐ。
 
 
 
――――『『本当は二人一緒の明日が欲しかった』』―――

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近々更新予定の、狂戦士エヴァーライト&魔女アサメイ狂戦士と魔女の友愛。狂戦士と魔女の永遠の友情。参照)の物語である番外短編は『Requiem of evil番外短編〜双つの命の架け橋〜』と決定しているのですが、この作品は今回その物語の前編扱いで更新します。
「この2人はこんな感じの子達なんだよ!」というのを知って頂ければ幸いです。
 
そして、それを踏まえてから番外短編本文へと入って頂ければ幸いです。m(_ _*)m
 
ではでは、↓↓↓から始まります!!(>▽<*)
 
 
 
*** *** ***
 
 

“だってアイツがあんなことするから!!”
何処に行くんだ、と聖女様に言われても仕方なかったというか!!
兎に角これはアイツのせいなんだ!!
 
何てとんでもないヤツなんだ!!!!
 
 
 
――――という親友の訴えから、その応酬は始まった。
 
 まあ、うん、それだけで彼が訴えたいことが『とりあえず原因はあのバカ男のせい』ということは分かった。ということだけはね。
 
 
 魔王軍参謀モルゲンレーテ直属の副官・魔女アサメイは、丸い赤目をぱちくりさせながらやれやれ、と肩をすくめ、友人の頭をぽむぽむと撫でた。
 
 全く、一体この友人は突然何を言い出すのだろうか。
 
 この魔王軍の中枢の人物であるアサメイという少女と、このエヴァーライトという本来人間である筈が獣の特徴を持って生まれてしまった『獣人(じゅうじん)』である魔王軍の敵たる勇者一行の青年は、友人同士だ。
 友人同士なのだから相談を持ちかけられても変ではないが、だが友人同士である上に自分達は敵だ。そんな彼のまさかの発言にアサメイは流石に面喰らってしまっていた。
 
 本当に、このエヴァーライトという子は信頼した相手には無防備なんだな、と。
 
「それでさ、結局何されたのエヴァーくん」
 「とんでもないことダ!!」 
「エヴァーくんってば、いつもながら主語が軽やかに抜け落ちてるねー」
 「だってとんでもないことはとんでもないことダ!これだからあの男は嫌いなんダ!!」
「あーうんまあそれは同感だけどさ」
 
“あの魔法使いの男”が嫌いな所は、全く同じなアサメイである。 
 しかしそんなことよりも、目の前の友人を見ていると、ギャンギャンと小さな山犬が涙目で喚いてるかのような錯覚を覚えてアサメイは『やっぱりエヴァーくんは可愛いなあ』と内心思ってしまう。

 全く、自分より年上で大柄だというのに全くバカ素直で直情的なものだ。あたしじゃあこんな反応は無理だなあ、と思ってしまう所、やっぱり自分は純粋とは程遠いんだろう。
 “あの魔王もレーテお姉様も何かと純粋な所あるからあたしがしっかりしてないと心配だったりするし、そういう意味ではあの男も大変だよね”、と内心アサメイは一人ごちた。 
 
あの人達やエヴァーライトみたいな性格では、きっと真っ黒なことなんて出来やしない。

 その分もあたしが請け負わなきゃ、と部下の子達にぼやいたら「何もあなたがやらなくても」「私達だっているのですから」なんて言われたのだが、人任せはアサメイの性には激しく合わなかった。
 まだ15歳という若さの自分だが、正直19歳のエヴァーライトよりも世の中を知っている自信はかなりある。ほんのちょっとだけだけれど。 
 だからこそ全力で支えたい、とこの友人に対してもあの人達に対してもアサメイは思う訳だが、あの男はそういう意味では自分と似たような立場にいるから、何となく気持ちが分かる。
 
 純粋な勇者とこの友人の為に、何をしたいと思うか。あの男の考えることくらいは。自分にも。
 
と言うより、これは自分だからこそ分かるところもあるのではないだろうか。
 
 だから、自分と似た立場のあの男がエヴァーライトに対してすることがどんなことかくらい自分にも……と、そこまで考えてからアサメイはむぅ、と唇を尖らせた。
 
「ほんっとムカつく男!」
 「ン?」
「ん〜?エヴァーくんの言うことも最もだなって思ってたとこ〜」
 「???」
 
 きょとりとまるで宝石のような印象の鋭い金の目を不思議そうに丸くするエヴァーライトに、アサメイはクスクス笑った。まあ何にしろエヴァーライトはここまで突っ走って来てしまったのだ。
 
 あの男が、あの魔法使いゼファーがやらかした、何らかのことが原因で。 
 
 本来敵である自分を頼って突っ走って来る所、本当に何処かヌケているというか、信頼した相手なら敵だろうが関係ないらしい。
 魔法使いを避けて逃げるなら魔法使いの傍にいる勇者には頼れなかったから自分の所に来たんだろうが、もう、何かされるとは思わないのだろうか。 
 
(うん、思わないんだろうなあ……)
 
 それはきっと、自分が彼に対して不義理な行為をしようと思わないように。彼もそうなのだろう。アサメイは彼に対しての卑怯な行為は一切考えられなかった。
 正々堂々と戦うならまだしも、欺くなど以ての外だ。敵でも、“友人”なのだから。きっと、嘘を吐いたり、卑怯な真似をしたりしたら、彼は凄く怒るだろう。とても、とても、怒るだろう。
 嘘の類を許せるような友人ではないことは、ここ2年程の付き合いでアサメイは分かり切ってしまっていた。
 
「……ねえねえエヴァーくん?」
 「???何ダ?あさめい」 
 
 アサメイが住む北方の地域とは文化が異なる東方の地域出身の、しかも孤児故に無学なエヴァーライト。彼がいた東方の言葉は北方の言葉とは言語は同じだが、形容とイントネーションが激しく異なる。最早別の言葉だ。
 故に、相変わらず北方の慣れない単語を、つたない知識で手繰るように彼女の名を呼ぶエヴァーライトは、ふるふると涙を振り払ってから目線を彼女に合わせ、顔を覗き込んだ。
 その宝石のような眼がアサメイはとても好きだった。人々から恐れられる要素など全くないように見える綺麗な眼なのだ。 
 生き物の本質は眼に表れると言うが、エヴァーライトはそれを体現しているような存在だとアサメイは思っていた。友人である自分としては、何という歯がゆさだろうか。
 
 もっと彼のことを理解してくれる相手がいればいいのに、とアサメイは思わずにはいられなかった。
 
 確かに、この世界には有り得ない姿かも知れない友人。白銀色の獣の耳と尾、そして爪や牙を持つ上に人間の顔を持つ生き物なんて、他にいない。顔立ちも正直怖面で、近寄り難い。だけど眼は全然、違う。 
 その眼に恐れを抱く人間が、アサメイからすれば信じられない。だから勇者と魔法使いには正直敵ながら感謝してはいる。この友人がありのままでいられる最初の居場所を与えたのは他でもない彼らだ。
 
 だ    か   ら    こ    そ   ―――― 。
 
彼の眼を見返しながら、アサメイは言う。 
 
 「もうそろそろ落ち着いたよね?いい子だからちゃんと何があったか話してよ。そうじゃないとあたしもどうすればいいか分からないもん」
 「それは、あノ……」
「嘘が下手なエヴァーくんがごまかしてもすぐ分かるんだから、ハッキリと!」
 「う……あ、あのナ……ッ!」 
 
 じっと見詰めるアサメイの眼にエヴァーライトはぐぐっとたじろぐ。どうやら相当言いにくいことのようだ。だが、それでも真っ直ぐ見詰めて来るアサメイの眼にエヴァーライトは眉を下げてしまう。
 
 「誰にも……言わないカ?」
「っていうか言う相手もいないし」
 
 自分達はそもそも敵同士だ。同じ話題を共有出来る相手などそういるものではない。アサメイのその言葉にエヴァーライトはおずおず、と口を開いた。
 やはり相当言いにくくて恥ずかしいことなのか、顔全体を真っ赤にして。
 
 「なら……エヴァーライト、言ウ」
「うんうんよしよしエヴァーくんはいい子だね〜よしよし」
 「……違ウ。相手が貴様だからダ」 
 
 アサメイは、エヴァーライトの言葉に素直に喜びの微笑を浮かべた。ああ、あたしが相手だから言ってくれるだなんて何て嬉しいことだろう。それに、敵なのにやっぱり素直な子、と。
 
 
 そうして、ぽしょぽしょ、と周りに誰もいないというのに小声でアサメイに耳打ちするエヴァーライトである。
 
 
―――その瞬間、アサメイの口から大きな笑い声が弾けた!!
 
 びっくうううううううう!!!!とその笑い声に跳ね上がったエヴァーライトにアサメイは益々笑った。 
 
「わ、笑うナ!やめロやめロ恥ずかしイ!」
 「だってだって〜!!」
 
 涙を浮かべながら大笑いする友達に、真っ赤になって抗議する友達。アサメイはごめーん、と言いつつもクスクス笑いながら顔を上げた。
 
「だってお風呂に入れられそうになって驚いて逃げただなんてー!!」 
 
どうしてそうなるの?と笑うアサメイに、エヴァーライトは唇を尖らせる。
 
 「だっテ!!だっテ!!熱い水で洗われるのは嫌いダ、冷たいのがイイんダ、なのにあの男は“まず戦いの汗を流しましょーね”とか言ってエヴァーライトを捕まえテ!」
 「……お風呂に入れようとしたの?」 
 
 その通りダ、と素直に頷くエヴァーライトにこの子一応狼系の獣人の筈なのに実は犬か、とアサメイは噴出さずにはいられずにまたエヴァーライトから抗議された。
 
 「それで逃げて来たの?」
「だってあのままじゃ拷問を受けル」
 「いやいや、たかがお風呂に何を」
「嫌イ!!」 
 
 まるで正真正銘の犬か、もしくは小さな子どもをあやすような感覚になって来たアサメイである。しかし、そこでエヴァーライトの言葉にどうにも引っかかりを覚え、問うた。
 
 「ところで”まずは”って?この後何かする予定?」
「それは……知らなイ。必死で逃げたから聞かなかっタ」
 「ふーん……?」 
 
アサメイは笑いを引っ込めて、内心首をかしげた。
 
 …………“まず”?
 
どういうことだろうか。
 
 それに、自分の考えが正しければ、あの心の底から骨の髄までムカつく男がこの友人に対してやろうとすることと言えば―――。
 
「……………ってああー!!!!忘れてた!!!!」
 「!?ど、どうしタあさめい!?」
 
 
 
そうだ今日は“あの日”だ!その上であの男がしようと思うことは!
 
アサメイは得心がいき、そこで同時に小さく嘆息した。
 
 「なーんだ、やっぱりムカつく男だねあの男って。ほんっと妙に遠回しなんだから」
「ン?ぜふぁーのことカ?それはエヴァーライトも同感だガ」
 「あはは、エヴァーくんは逆に素直だよね〜」 
 
 うん分かった、よく分かったぞ、と一人で勝手に納得して頷くアサメイにエヴァーライトは不可思議そうに首をかしげてみせた。一体何だと言うんだろうか。
 不思議そうにしているエヴァーライトに、アサメイはにっこりといつもの明るい笑顔を向けた。
 
 「…………あさめい?」
「うん、とにかくエヴァーくん、大丈夫だから勇者ちゃん達のとこ戻ろ?」
 「エ!?」 
「ちょ、もう、また涙目になってる〜エヴァーくんったら可愛い〜」
 「だ、だって、あ、あさめい〜戻ったらフロに〜」
 
 戻ろ?と言われた途端に涙目に逆戻りしたエヴァーライトに噴出しそうになりながら、アサメイはエヴァーライトの肩を軽くぽむぽむして明るく言った。 
 
 「だいじょーぶ、『犬も歩けば棒に当たる』って言うでしょ?試しに戻ったら災難と一緒にいいことが待ってるかも知れないよ?それに今日なら嬉しいことが待ってるって。ほらほら戻ろ?」
 「だ、だがナ、あさめい」
「もう強情っぱりなんだから〜大丈夫だって〜!」 
 
 もう!あの男も最初の一歩でからかおうとするからこうなるんだよ!!と内心ご立腹のポーズで、アサメイはエヴァーライトの両肩に手を置いた。
 大丈夫じゃなイ!!大丈夫じゃなイ!!と訴える彼に、柔らかく問いかける。
 
「ねえエヴァーくん、今日って何の日か忘れた?」
 「???」
「あ、忘れてるね。そんじゃアサメイちゃんが教えたげよう!」 
 

 
  そう、あの男がしようと思ったことは――――。
 
と言うよりも、“あの魔法使いと勇者がしようと思ったこと”は。
 
 
「―――エヴァーくん!!
“19歳のお誕生日おめでとう”!!」

 

そう、今日は8月1日。大切な大切な、エヴァーライトがこの世に生まれた日。 

 それは正確には“エヴァーライトがあの勇者一行と出会った日”で、孤児である彼の本当の誕生日は分からない。だがそれでもこの誕生日は、実は勇者と魔法使いが彼の為に考えてくれた、大切な“彼の誕生日”だった。
 きっと帰れば、例えあの貧乏メンバーでも彼らなりに考えて準備してくれた誕生パーティが待ってるだろう。お風呂はその準備の一つだったのだろう、とアサメイは思っていた。
 あたしも後で準備して何か持ってなかなきゃ、と笑う友達にエヴァーライトはあ……と驚いたように眼を見開いた。どうやら合点がいったらしい。
 
 そうだ、さっきもこれまでも思っていたけれど、あの男の気持ちは自分にも分かる。だからあの男はエヴァーライトが本当に嫌がることなんか、する筈がないんだ。
 だから、帰って待ってるのはきっとエヴァーライトにとっては照れ臭くも嬉しいことに違いないだろう。 
 
 あんな男の気持ちなんて、分かりたくもないのに分かってしまうのが悔しいアサメイだったが、“あの男がこの子やレーテお姉様が本当に困るようなことはしたくない”と思う気持ちは筒抜けだったのだ。
 だから本当にムカつく。大好きなレーテお姉様を困らせる男だから大嫌いなのにね。 

 「ほら、あたしが何言いたいか分かった?今日はキミの誕生日なんだよ。だったらきっと帰ったらお祝いしてくれる。勇者ちゃんもあの男も、キミの帰りを待ってるから早く帰ろうよ。ね?」
 「…………あの男」
「うん、ほんとムカつく。でも悔しいけどああいう男だもん」 
 
 ほら帰ろ?と促す友達に、ほんのしばらく俯いたままウウ〜と唸ってからエヴァーライトは帰って行った。心なしか急ぎ足で。
 ああして頼ってくれるのは嬉しかったが、アサメイの勘はよく当たるから、あれでいいと思っていた。そしてその場で反転し、彼女も駆け出す。 
 
 勿論帰ったら友達へのプレゼント選びだ。今年は何にしようか。本人から聞いた話では、あの友達はあの生まれ故、勇者に会うまで誕生日を祝われたことが一度もなかったのだ。
 これまで自分も二度祝ったが、毎度ながらプレゼント選びは慎重になってしまう。
 一昨年のプレゼントは、エヴァーライトが頭に着けているあの白と赤の羽根飾り。そして去年のプレゼントは二人っきりで会える、さっきまで二人で居た二人の秘密基地である小高い丘だった。ああ、今年はどうしようか。
  
 そんな想いを胸に、心から楽しそうに彼女は走ってゆく。体力があまりないから、ゆっくり、ゆっくりと。
 
 3年目に突入するこの不思議な友情関係が、これから先も平和に続くとは2人は思ってはいなかった。だから、せめて今は続くように。そしてその間ずっと笑顔の自分達を覚えていられるように、アサメイは祈った。
 
 あたしにもあの子にも大切な居場所と大切な人達がいるから、きっと今のままではいられない。そして、世の中そんなに甘くはないのは分かっているから、せめて、今だけは。
 
(ま、今日は今日で愉快な涙目が見れて楽しかったけどね〜)
 
一度だけ、アサメイはくるりと丘を振り返る。

 あの丘に行けば、もしかしたらあの友達が待っていてくれるかも知れないという事実があるから、日々の悩みや苦しみの渦に巻かれることがあっても、少なくともアサメイは苦境の中でも頑張ってゆける気がしていた。
 あの友達も、そうだったらいい。 
 
そうだったら、どんなに嬉しいことだろうか。
 
 二人とも、生まれながらの異端だと言われた二人。黒髪の魔族には有り得ない異端の白髪の魔女と、人間と人間の間に生を受けたというのに人間には有り得ない白銀の獣の姿をした狂戦士。
 そんな自分達でも、お互いを標(たより)に出来たなら。ああ、ああ、どんなに幸せだろう。
 
 例え、傷の舐め合いだと言われても構わない。あの子の傷なら幾らでも舐めてやろう。そして自分の傷も舐めて貰おう。これからもそうして舐め合ってゆけたなら、幸せなことじゃないか。例え、相手が敵でも。
 
 酷く病弱だった昔よりは丈夫になったとはいえ、アルビノの自分が浴びるにはまだツラい昼下がりの日差しを、丘を見下ろすサンライトイエローの太陽を見上げ、アサメイは目を細める。
 だが、その太陽の光に負けないような、まるで太陽のような明るい笑みを浮かべてから、今度こそ振り返らずにアサメイは走って行った。 
 
 
 
 
 その後、勇者一行の下へ戻ったエヴァーライトは、友達の予想通り戻った途端にクラッカーの嵐に飲まれ、ささやかな誕生パーティーの主役として輪の中に招かれた。
 結局、エヴァーライトが強情を張った挙句お風呂ではなく水浴びをすることになってしまったが、別段お風呂に入れることが目的ではなかった魔法使いは、とても満足そうに笑った。
 
『エヴァーくんが楽しいなら、それでいんじゃなーい?』
 
 魔法使いは、満面の笑顔でそう言い切っていたのだという。
 
 その夜、パーティーの席で雑魚寝している勇者一行の中心で眠っているエヴァーライトの腕の中には一輪の愛らしい小さな野花が添えられた、可愛らしくラッピングされた包みが一つあった。
 野花の下のメッセージカードには一文だけ書かれた、友からの心からの祝いの言葉。  
  

『ハッピーバースデー。あたしの可愛い友達へ。いい夢見てね!
〜by,キミの最高の友達より〜』

 
 
――――勇者一行が旅立ってから3年目に突入する、とある暑い夏の日の夜。
 
 寝静まってしまった勇者一行の寝首も楽にかける筈の敵の少女が、手ぶらで軽快に走り去って行った。
 
 
 
 
*** *** ***
 
以上です!!こちらの作品は前に更新したRequiem of evil本編&外伝より〜『還らない夢物語』〜と同じく、『ツイッターでワンドロ小説を試してみる白月 光菜さん第二弾』とかいうタグを自分で作って遊んでいた物です。(笑) 従ってこれも1時間程度で作成したことになる。(笑)
こちらも一部加筆修正はしておりますが、それにもあまり時間はかかっておりません。(´v`*)
思い付きで生まれた上、短時間で作成したので拙い部分が多々あるとは思いますが、こちらでもどうぞ皆様に楽しんで頂ければ、と思います。既にツイッターで読んでいる、という方は改めまして、になりますね!(笑)
(加筆修正部分があるので、既に読んでいる、という方も読んで頂けると幸いなのですけどね!)
 
あと、何気にエヴァーライトの誕生日設定の日が8月1日だということは既に先日別の記事で語りましたが、これはそのエヴァーライトの誕生祝いの一部だったりします。
改めて、エヴァーライト!!本当に誕生日おめでとう!!(>▽<*)
 
因みに、最後の展開でエヴァーライトに贈られた例のプレゼントの中身は現時点では秘密です。
いずれ明かすかも知れませんので、それまで伏せておきますね!^p^*
 
この物語も『還らない夢物語』同様、続編的な扱いの4コマ漫画か漫画を作成する予定です。
続きのネタが存在しますので!!(笑) それが更新されましたらまたどうぞ宜しくお願いします〜^p^p^p^*
 
 
 
そして、エヴァーライトとアサメイの友情関係は文章に表すとこんな感じ。(^v^*)
年下で小柄なのにお姉ちゃんみたいなアサメイと、年上で大柄なのに弟みたいなエヴァーライト。
あと、ちっちゃなご主人様とおっきな犬。みたいな?(笑)
 
 
そんな2人が敵対しているというのもまた不思議な話なのですが、それもまた事実なのです。(苦笑)
 
味方同士でも争うこともあるように、敵同士でも仲良くなれると思うのです。
人の心は、立場のみで縛りきれないことだってありますよ。
その逆も然りではあると思いますが、どうしようもなく大切に想ってしまう心を誰が罵れましょうか。愚かだと思われようと、誰に理解されずとも、貫きたい想いというものは、確かに存在すると思うのです。
 
これまでの世界の歴史でも、戦いたくない人と戦った人は大勢いますよね。
どうしようもない、なんて思いたくはなくてもどうしようもない時もあるから、人生ってままなりませんね。
 
それでも、彼らもそんなままならなさの中でそれでも自分らしく生きていたと覚えていてくれる人がいたらいいな。
 
 
 
 
『『いつまでも覚えていてね』』
 
『『いつまでも忘れないでね』』
 
『『自分達がここで確かに笑っていたことを』』
 
『『敵だろうが、味方だろうが、自分達は確かにここに一緒にいたよ』』
 
 
『『それだけは、これから先もずっと変わらない真実だから』』
 
 
これから先この世界の何が変わったとしても、
この2人が二度と逢えなくなってしまったとしても、
 
それだけは、きっと変わらない想いに違いありません――――。

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