サブやんの気まぐれ調査研究

日本の里山は崩壊します。守るのは私たちです。行政主導の時代は終わり新たな取り組みが求められています。

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歴史は創作してはならない
市川団十郎の初祖を探る


はじめに

 歴史とは、さまざまな形で人々に伝わる一面を持っている。最近は新たなイベントなどの催しが盛んで、イベント興行の為に歴史を歪めることはないのであろうか。
 例えば山本勘助という人物をドラマや小説や演劇で取り上げると、その製作者の意図のままに自由に描かれ、勘助の存在が数十人も生まれることになる。専門家ならともかく、一般の人にはどれが本当に勘助像なのかは判らなくなる。
 その他にも連続ドラマなどでは、観る人々に美しく感動するように描くので、小難しい歴史の話よりもそちらのほうが親しみやすく受け入れやしい。
 今回、井上靖の「風林火山」が大型ドラマに決まり、山梨県を挙げて観光の目玉にする取り組みが始まっている。不思議な事にその武田信玄の軍師山本勘助の山梨県の足跡や事績は殆どない。ドラマはドラマとして、こうした機会にこそ、史実の確認が急がれるが筈なのに、一様に観光面やそれを利用したイベントに力を要れ、歴史が壊れることなど誰も考えていない。それどころか歴史家の中には同調する御仁も居られる。
 ここに挙げる初祖市川団十郎の誕生地とされ三珠町も、施設の為に作り上げられた歴史を持つ側面を有しているが、誰も取り上げずに既製の事実として時は過ぎ去っていき、官庁ご用達の歴史家も触れようとしない。
 不思議な事に、過去の「甲斐国志」や山梨の地域歴史書は全く触れていないし、三珠町の町史にさえ一行も書かれていない市川団十郎の祖先の足跡が「歌舞伎会館」建設により、曖昧模糊とした伝承を歴史に格上げして、史実のようにしてしまった。山梨県内ではこのようにイベントや施設建設により多くの歴史を歪めてしまった。これ以上過ちを犯してはならない。
 史料を収集してそこから初祖団十郎の歴史的な価値観と、甲斐との関わりが何処から生まれたか探ってみたい。

 ……市川團十郎…… 『俳優世々の接木』
 本国 甲斐
 傳に曰、先祖は甲斐市川村ノ産にて其子重蔵ハ下総國佐倉領幡谷村の郷士と成苗代をつぐ。農堀越氏といふ。    (『市川團十郎代々』服部幸雄氏編)   

 ……『明和伎鑑』…… 明和六年(1769)
 元祖市川團十郎、三ケ津立役の開山。才牛。下総國佐倉の住人。幡谷村(一本成田)。堀越某カ男、幼名海老蔵。
(『市川團十郎代々』服部幸雄氏編)

 ……團十郎の家紋、三升……
 市川團十郎の定紋。米を計る升の大・中・小三個を入れ子にして、上から見た形を図案化したものである。
 一説に、初代團十郎が不破伴左衛門の役の衣装に使った稲妻の模様から転じたとも伝える
  (『役者名物袖日記』) また、團十郎の祖先は甲斐國東山梨郡市川村の出身とする説を踏まえ、この地方の升は「甲州の大升」といわれ、一升が普通に升の三升に相当するほどの大きさからヒントを得たという説もある。正確な由来はわからない。  
(『市川團十郎代々』服部幸雄氏編)

 初代市川団十郎の祖は甲斐国の出身とされているが、その史実を示す資料は少なく、その信憑性は一考を要する。
初代団十郎の祖についてはじめて語ったのは、五代目の友、烏亭焉馬である。
 不詳であっても著名な人々が史実のように、繰り返すことで史実もどきが、何時の間にか史実として人々に伝わる事は歴史には多くみられる。この拙著は長年の調査資料から市川団十郎の初祖を中心に論を展開していく。浅学の為一部誤字脱字や語釈もあると思われるが、その辺は適切に正していただきたい。また初祖団十郎以前の資料をお持ちの方は是非ご連絡をいただきたい。
  
  市川団十郎についての調査報告

 かの有名な千葉県成田山新勝寺の案内文によると

 ……成田山新勝寺の案内文……
成田屋の屋号を名乗る市川團十郎は、代々、成田山とは深くて強い縁で結ばれています。初代市川團十郎は江戸時代の万治三年(1660)に生まれたが、その父堀越重蔵は下総国埴生郡旙谷村(成田市旙谷)出身でした。今でも成田市旙谷の東光寺の墓地には、二代目が建てた初代団十郎の碑があります。

 また初代市川団十郎の墓地については、次の記述がある。
 
……市川團十郎の墓地……
常照院はかって歌舞伎の名門である市川團十郎の菩提寺であり、当家の墓所がありました。初代團十郎が刺殺という不慮の死を遂げたのは元禄十七年(1704)でした。いかなる縁かその遺骸は、徳川将軍家の菩提寺で芝増上寺の子院である当常照院に葬られました。現在も三升の紋の香合、五代目が寄進した七代目が修理した一対に唐金(銅)の灯籠、そして七代目文政元年(1818)に贈った石の手水鉢などがその歴史を語っています。八代目團十郎は大阪で自害し、やはり浄土宗である大阪の一心寺に葬られ、常照院には遺髪が納められたそうです。
その後時代は明治に移り、市川家の復興をはかった革新的な九代目の團十郎は神道に改宗、明治三十六年(1903)に亡くなりました。その墓地は神武となり公営の青山霊園に建立されました。以後市川家は神道となりました。
そして大正十二年の起こった関東大震災の被害により寺院の移転、墓地の改修など相次ぐなか、常照院も墓地の整理改修をすることとなりました。そのため、昭和九年(1934)にそれまでの市川家の墓地も青山霊園へ移転改葬されました。
 と記している。

 市川団十郎の祖について『山梨県「人物」博物館』は次のように記す。
……五代目市川団十郎……『山梨「人物」博物館』江宮隆之氏著
   市川団十郎は江戸歌舞伎の盟主とされ、平成四年(1992)まで十二代を数える。屋 号を成田屋といい、初代団十郎は延宝元年(1673)九月、十四歳で初舞台を踏んだ。荒事と隈取りの創始者である。
 この初代団十郎の父が堀越重蔵、祖父の重左衛門、曾祖父の十郎家宣は共に甲斐武田家 の一門、一条信龍の家臣であった。堀越十郎については、永禄十二年(1569)の相州三益峠の法条氏と戦いで手柄を挙げたことが感状(戦功を賞した文書)として残されている。堀越一族は天正十年(1569)三月、主家の滅亡後、相模に逃れ、さらに下総国旙谷村(千葉)に逃れた。
 ここから初代団十郎の父重蔵が江戸に出て町奴などともつき合うようになる。
 (略)寛政三年(1791)四月、五代目団十郎は初めて父祖の地甲州に入る。(略)これが初の地方興行となった。五代目団十郎は寛政四年(1792)にも甲斐を訪れている。  (「甲府町年寄御用日記」)寛政五年(1793)六月、七年(1795)六月にも甲府にやってきている。

 これによれば、その家系は、
  曾祖父堀越十郎家宣―祖父重左衛門―父重蔵(十蔵…………初代市川団十郎となるが傍線についての確かな資料が提示されていない。

 市川家は現在まで血脈で繋がっているわけではなく、服部幸雄氏著『市川団十郎代々』によると、

初祖団十郎(本姓堀越)
   ―二代(実子)
   ―三代(養子/三升屋助十郎の子)
   ―四代(養子/庶子)
   ―五代(四代の実子)
   ―六代(養子/庶子)
   ―七代(養子/五代二女、すみの子)
   ―八代(長男/すみの子)
   ―九代目(五男(妾、ための子。堀越秀)
   ―十代(養子/前名、五代市川三升。堀越福三郎)
   ―十一代(養子/七代松本幸四郎長男。堀越治雄)
   ―十二代(長男。堀越夏雄)

 とあり、堀越姓は一代、二代、……九代、十代、十一代、十二代で途中代には見えず、血脈も途切れているのである。
 また三珠町のシンボルとして建設された「歌舞伎会館」のある市川團十郎発祥の地、三珠町は、ホームページ『甲州勤番風流日誌』によると、

 この地は武田信玄の異母兄弟一条信龍が富士川沿いに攻めてくる敵を迎え撃つために上野 の地に城を築いた。その家臣に武田信玄の能の師匠をしていた堀越十郎家宣がいた。武田勝頼公が織田・徳川の連合軍に敗れ、勝頼公が自刃、一条信龍も自害する。そして堀越十 郎家宣は一宮の石原家に家系図を預け、一族ともども代々信仰していた不動尊をたよりに下総国(千葉県)成田方面に逃れ住み着く。その孫の重(十)蔵は弟に田畑を譲り江戸に出る。

 とあるが、
 堀越十郎家宣は一宮の石原家に家系図を預け、一族ともども代々信仰していた不動尊をたよりに下総国(千葉県)成田方面に逃れ住み着く。
 のくだりの信憑性はいかがなものであろうか。

 


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