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職業としての林業(「林業概論」農学博士 島田銀錦氏著 昭和32年)
林業の職場は近年著しく閲柘され拡頚されてきた。この拡張は国有林の事業拡大と民有林行政の充実とに原因している。
職場の種類(「林業概論」農学博士 島田錦蔵氏著 昭和32年)
国有林は内地に450万町歩,北海道に340万町ああわせて790万町歩を農林省の林野庁が管理総括し,その下に約330の営林署があって経営事業にあたり,この林野庁と営林署との中間に14の営林局が地方監督庁として設けられている。その職員数ほ約2万人あって,林業の事務や技術の職務に従事している。なおこの外に,林野庁には林野行政の中央官庁として,民有林行政に携る職員もいる。
都道府県庁にも約1万人の林業関係吏員がある。都道府県の吏員は,国有林職員とちがって,林業の経営に従事するのでなく,民間林業の指導・奨励や取締りなど,林業行政の職務に従事する。北海道や山梨県のように道有札県有林の広いところでは,国有林職員と同様に林業経営を職務とする職員もある。
私有林は,その面積は広いが,多くは農家の小面積ずつの所有に分れていて,所有者数は約500万人ある。だが,そのうち50町歩以上の所有者はわずかに14,600人であり,1町歩以下のものが364万人(全体の7割3分)である。この大多数の小所有者は自分の所有林を経営する意味では経営業主であるが,林業だけではとうてい専業にできない。いずれも農家の副業である。近代の会社組織による大規模経営は,木材会社・製紙会社・鉱山業などがその原料閑係を通じてこれを試みるものがみられる。しかしあまり多くはないので,民間会社における職場はそう広くはない。小面積所有者は,共同していくぶんでも
組織的な林業経営の利益を収めるために森林組合を組織し,その組合員となるのを建前としている。この森林組合に奉職する技術員の地位は,比較的新らしい職場で全国に5,000組合以上ある。連合会を除き単位組合には専門教育をうけた職員はまだ少い。この単位組合にまで専門技術者がはたらくことになれば,その職場は著しく拡張されることになろう。
森林と国民文化(「林業概論」農学博士 島田錦蔵氏著 昭和32年)
林業経営業務は、森林保護の業務・造林業務・施業計画業務・森林利用業務・森林土木業務の5種に大別できる。しかし,
職員はこれらの仕事を分業によって狭い範囲だけ分担するのでなくて,比較的広い範囲の種類の仕事に関係する。林業のよう
な原始産業は季節に支配され,場所に制約されるので,工業のような機械化や集約化が進まない。そのために極端な分業は成立たないで,各職員は年中を通じて各種の異った仕事を取扱わねばならない。もつとも一般的にいって,技術を主とするものと,事務経理を主とするものとの区別はある。技官と事務官,技師と主事の地位がこれにあたる。
上にみてきたのは経営業務についてであるが,職員は林業の経営にたずさわる場合だけでなく,国の行政を運用してゆく部面でも活動できる。これは林業が単に産業として有用なだけでなくて,すでに述べたように国土保全や水源涵養などの公益的な使命をもつていて,これを個人の自由に放任すべきでないからである。農林省の林野庁と府県庁の林務部または林務課が森林行政を主になってつかさどる。ここに勤務する職員は,民間林業の指導・奨励や保安林の取締りなどの行政事務を職とする。
林業職員の適性(「林業概論」農学博士 島田錦蔵氏著 昭和32年)
林業にたずさわるものは,大自然を愛好し,このためには、田舎住まいの多少の不便をいとわない人でなければならない。都会文化に強い執着のある人には向かない。山遊びと職業とは,全然同一といえないから,単に登山が好きだからといつて,この道を選ぶごとき漫然とした選択は避けねばならない。病身だからといつて保養がてらの職業に考えたら誤りも甚だしい。人なみ以上の健康で,健脚で,勤労をいとわない人であることを要求される。森林の調査作菜の監督などは,事務所での机上の執務よりも,外勤あるいは出張の機会が多い。人間の気分は,その生活環境に支配されるものである。清浄そのもののような森林の環境に生活するものは,自然に邪心から洗い清められるであろう。朝霧のたちこめた杉林のたたずまい,夕映えに照りはえる原始林の紅葉,林業を職場とする人達が,たとえ物質的にはめぐまれなくても,ながくその職から離れないのは,こんな環境を楽しむことができるからであろう。その上に,林業は建設的な職業であって,速い将来を目標に資源を築いてゆく仕事である。
これを要約すると,林業職員の資格は次のようになる。
(1)林学の専門学校における学修
(2)実行力(林業の職務のあらゆる部面は実行力を要求する。なお,誠実・責任感・創意・忍耐カをその品性として具えることが望まれる。
(3)健康
(4)公共奉仕の精神および森林資源の分野での国家改良の強い意思。
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