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林業の経営形態 公有林 企業的私有林(『林業概論』 島田錦蔵氏著 昭和32年)
わが国の私有林の所有関係は小所有のものが圧倒的に多く,500万戸の森林所有者のうち50町歩以上の所有者は14,600人、その所有面積250万町歩である。
これを100町歩以上に限定すると僅かに3,000人,90万町歩となる.(生業調査によれば森林業専業のもの9,337戸,第1種兼業のもの30,340戸である)。いかに企業的私営林業が少ないかを知ることができよう。
ほかに近代的企業形態をとる会社所有林は戦後急増して約67万町歩ある。これらの大所有は,地方旧家が明治の土地改革当時から所有したものと,その後の商業資本および産業資本によって集中された不在地主の所有に属するものとである。産業資本は製紙パルプ工業、木材工業、鉱業、水力発電事業などが傍系事業として経営するものであつて,森林業それ自身を目的とするものは殆んどない。このように林業を主体とする会社企業の存在しないのは、林業を凝済企業として発展せしむることを阻害する諸条件が存するからである。一般に指摘される障害は、林業が長期生産事業であるということである。林業の生
産を収穫するには,植栽撫育に払った努力と資本が,短かくても20〜30年,長ければ100年にもならなければ回収されない。この長期間にわたり資金を固定させることは,民間企業においては決して容易ではない。森林金融は金融市場において一般に歓迎されないので、いきおいその利子は高利となり、資本利子の負担は,林業経営における最大の負担である。いまかりに林業生産費を一般管理費、固定資産資本利子,税および保護費の4項目に分類して考察したときに,固定資産資本利子が実に過半を占めて,資本利子の重圧が林業を企業として発達せしめない阻害条件たることが理解されよう。企業的私営林業は公共林業とは根本的に異なる基盤に立っているわけである。民間林業発展の障害となっている要因を要約して次にあげておく。
(1)投下資本の利子
林業に固定された資本利子が林業に過重な負担を課している。民間林業の過伐,早伐は多くはこの資本利子の負担に堪えることができずに,林木の経済的伐期を待たずしておこなわれているのである。
(2)税金負担
林木は成熟に長期を要する多年生収穫であるのに,税制はこの林業の特性に適合するような制度上の途、を,個人所得についてはある程度考慮しているが法人などについては開いていない。民間林業は税と資本利子の負担を負っている点において,公共企業に比して著しく不利な立場に立つている。林業の産業上の特殊性を考慮に入れた税制が立てられねばならない。
(3)林産物の価格の不安定
林業を経済企業としてこれをみるとき,林産物の価格がその生産費に比して公正であり安定しているならば,集約経営が期待できる。しかるに多くの場合,林産物の価格は不利不安定な状態におかれている。林産物の価格が低いとその林業は粗放経営となり,収穫物は利用されないで浪費廃棄される部分が多くなるが,価格が高くなれば,廃棄される部分は減少して,大部分が有利に処分され利用されることになる。この傾向はときに看過され易いが注目さるべき事実である。価格の不安定という要因が企業熱意を冷却する原因となることは,林業のような長期生産業において殊に甚しいのである。
(4)森林被害
火災・虫害・菌害・盗伐などの被害に対する不安は,保険制度の普及,森林施業の技術的改善などによって軽減することができるのであるが,一般には,なお森林被害を過大祝する傾向があって,これがまた民間林業発展の障害となっている。
(5)林業に対する一般の関心の欠除 多面にわたる林業の直接効用ならびに間接効用に対する一般の理解は決していまだ深いものとはいえない。林業の公共性を理解するならば,林業の合理的経営を可能ならしめるためには,公共の関心が払わるべきであり,助成の政策が実施さるべきであることは何人も肯定するであろう。国家および公共団体は財政資金によって林業に補助の途を開き,あるいは金融市場において低利な金融資金を吸収することによって林業方面への資金流入をはかるべきである。
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