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植付けに関する二,三の問題(渡辺資仲先生著)http://search.yahoo.co.jp/search?fr=slv3-ybb&p=%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E8%B3%87%E4%BB%B2&ei=UTF-8
●まえがき
養苗事業は変則ではあるにしてもそれ自体一つの企業体となり得る資格をもつのであるからこれを別にして,いわゆる林業経営の資本投下の第一は植林事業である。植林事業の主眼はもちろん苗木の植付けにある。したがって植付けは林業経営上きわめて重要な位置におかれている。それにもかかわらず,実際は経費の面は別として技術的にはあまりおもきをおかれていない。
さて苗木を植付ける場合,いろいろ注意すべきことがあるが,
(1)根を極度にいためないこと,
(2)根を乾燥させないこと,
(3)棋と地上郭のつりあいをよくすること,などがあげられている。
以上3つのことがらも結局は水の吸収と雲散とに関係している。この水分の吸収・蒸散の面から植付け,活着の研究が当然
おこなわれていなければならないのに,それらの研究はわりに少ない。筆者は多少植付けの問題について実験しているので,まだ数値を用いて報告する段階にいたつていないが,今後この方面の研究がもう少し進められるよう念願しているので,いままでの知識を整理し自分の考えを述べたい。
●掘取られた苗木(渡辺資仲先生著)
めぐまれた環境に育った苗木は大量の根を失って掘取られ,しかも吸水を一時でも中止しなければならないような不自然な状態におかれる。このばあい苗木の乾燥が植付けの成績に与える影響はきわめて大きい。
○蒸散作用と乾燥
苗木の乾燥には生理的,物理的を問わず水分が失われる動的な過程をいう場合と,すでに失われた状態すなわち静的な状態をいう場合とある動的な過程として大きな働きをするものが蒸散作用と蒸発作用である。掘取られた苗木では蒸散作用,蒸発作用など水分の損失を総合して乾燥というのが普通である。また乾燥という一つの静的な姿をみても,この状態にいたった経過を考え水分を失うことによって乾燥したものか,吸い上げる水分の不足によったものかを分けて考える必要がある.しかし苗木が掘取られた場合には吸い上げる水分に不足をきたすことは当然であるから,失われる水分についておもに考えなければならない。そしていわゆる乾燥を防ぐ手段として水分の損失を防ぐ方法を考えなければならない.
水分を失うことが植物を不利な状態に導く場合、気孔の開閉のほかに合水量による非気孔的調節により蒸散作用を調節し、植物自体を保護しようとすることは一般に知られている。しかしこれらの調節は葉内の合水量が正常に近い範囲内でのことであって,葉内合水量に異常をきたしたときは,それらの調節は意味をもたなくなる。すなわち掘取られた苗木の蒸散作用は初めは気孔,合水量によって調節されるが後には気孔・合水量・貯水,細胞関係などいろいろの要因の結合によって支配され,その結果として葉内合水量がしだいに減少し、蒸散作用もそれにともなって減少しついに蒸散量が0にまでなる。したがって苗木の案内合水量を異常な状態にまで下げないことが必要で、そのために蒸散作用をおさえる手段をこうずる必要がでてくる。
一方地下部すなわち根について考えると,元来根は自然の環境においてある程度の湿度をもった土壌につつまれているため、地上部ほど水分損失に対する保護組織ができていない。したがって乾燥に対して無防備な根がしばらくの問でも空気中に露出されると水分は急激に失われていく。なおそのうえ、根に含まれている水分を失うだけでなく,地上部の水分まで奪いさる。それゆえ乾燥に対しては地上部に比較し地下部がいっそう敏感であり、そのため乾燥に対する保護手段として一般に根の保護を強く考えているのである。これまで述べてきたところは掘取られた苗木の蒸散作用その他総合された水分の損失の動的な経過と,静的な状態とを区別することなく,たんに乾燥といいあらわしてきた。また区別しにくい場合もあるので特に動的な経過を述べる時以外はすべて乾燥として述べる。
次に掘取られた苗木の乾燥の様子
を二,三の実例によってみよう。スギ,ヒノキ,クロマツ,アカマツの1年生苗木につき,全苗木,茎葉,根とに分けて乾燥による合水量の変化をしらべた結果,根の乾燥速度が一番早く,茎葉のそれは一番おそい。すなわち苗木の乾栗燥は根を多く有するものほど早い。これは棋自身が無防備で乾燥しやすい上に,根においては組織内の水分が茎葉におけるよりもすみやかに減少する結果,細胞液の濃度を高め,そのために組織が吸水能力を高める事になり,茎葉から根への水の転流をきたし、すみやかに乾燥すると考えられている。同様のことは岡部が桑で実験した例からもわかる。以上の実験やその他の蒸散量測定結果から乾燥速度の順位はだいたい樹種により一定していることがわかる。しかしこの乾燥速度の順位と苗木植付け後の活着の難易とは必ずしも一致していないようである.同じ樹種では乾燥の程度で,活着の艮否をしることができても異なる樹種では乾燥の程度だけでは活着の良否はわからない。すなわち苗木の活着を支配する要因は乾燥速度以外にもまだあることを意味している。
○ 乾燥と枯死(渡辺資仲先生著)
植えてある植物に水分を与えず乾燥させていく場合,あるいは植物を堀取って乾燥させる場合、値物はどのような経路をたどって枯死するだろうか。水分損失によってはじめにあらわれる様子はしおれることである。ただし堅い細胞からできている組織器官にはしおれることなく組織が乾燥枯死するまで気付かないような場合もある.掘取られた苗木の乾燥と桔死について述べる前,比較するために苗畑にある苗木の乾燥と枯死について述べよう。しおれることは枯死の前後であるが,しおれたものが必ずしも枯死するとは限らない。しおれ(萎れ)の程度を示す方法として,しおれた植物を飽和水蒸気中に24時間いれてもしおれが回復しないほどしおれがひどくなったとき,この回復する、しない、のところをさかいにして一時的凋萎と永久的凋萎といっている。この永久的凋萎にうつるときの土壌水分はどの植物にとつてもだいたい同様でこれを土壌水分張力で示せば15気圧になるし,PF価で示せば4.2に相当する。このように土壌水分が乾燥して永久凋萎点に達しても,しおれのあらわれかたは植物によっていろいろちがっている。
このことに関しFOWELLSとKIRIはボンデロサマツとヒマワリとの比較でヒマワリが凋萎してからマツは6週間水分危機の様子を見せず,なお凋萎後潅水したところ多数のものが回復した。これはマツとヒマワリとの凋萎点に実際にちがいがあるためと,またマツは凋萎点以下の土壌水分条件で水分要求を調節して生存できるためだろうといっている。植物は凋萎点に達してもすぐ枯死しない。ただ生存をつづけるのにきわめて危険な状態にあることを示している。したがって植物が枯死するためには凋萎がさらに進んで組織がしだいに乾燥して初めて枯死に達する。凋萎点が各樹種について同じであってもそれから枯死するまでの水分損失の抑制が樹種により異なり,ここに乾燥に対する抵抗性すなわち耐乾性の差が出てくる。
アカマツの稚苗を用い土の乾燥と苗木の水分関係とについて調べた佐藤,名村の報告によると,苗木の合水率が乾燥重量の100%前後まで下ると,もはやいかに水分を与えても回復せず枯死する。枯死するときの土壌水分の状態は永久凋萎点よりすすんでおり,すなわち乾燥の程度がひどくなっている。したがってアカマツは永久凋萎点に達すると蒸散作用が少なくなり水分の損失に対する抑制がかなり強いことをあらわしている。蒸散量は気孔の開閉と葉内合水量によって調節されるが,それは葉内合水量が正常な場合においてのことである。(略)
以上のことは植物が土壌中に生育している場合のことであって,根が異常状態にある掘取られた植物においてはもちろんこの理論がそのまま用いることのできないのは当然である。同じ乾燥と枯死との関係でも掘取られた苗木にあっては凋萎に達する経路は苗畑にあるものと同じであっても,これに水分を与えたとき、吸水が容易にできるか否かによって大きなちがいが出てくる。掘取られた苗木は水分を吸収できる細根をほとんど失っており,なお残っている根もかなり傷ついているので水分に接してもこれをただちに吸い上げることはむずかしい。したがって掘取られた苗木にあっては,凋萎があまりすすまないようなばあいでも・これを植付け水分を与えたからといって容易に凋萎が回復し清着するとは限らない。
掘取られた苗木を取扱うばあいそれが枯死するか否かを知る目安として普通に用いられているのは,損失水分量の百分率である.しかし掘取られた苗木を一定条件の環境のもとにおいて水分を与え,苗木の回復を試験した結果がないので,掘取られた苗木の乾燥と枯死との正確な関係は知ることはできない。掘取られた苗木を乾燥状態におきこれを植付けてくらべた表(略)から苗木の重量が半分にへればおそらく活着はほとんど不可能ではあるまいかと想像される。苗畑に育てられている苗木では同じ程度にすなわち重量の半分に乾燥しても,これに水分を与えれば回復するだろう。すなわち苗木の乾燥と枯死との関係は掘取られたものと苗畑にあるものと同一に考えることはできない。堀取られたものの根は水分が与えられてもすぐ吸水できる状態にないし,またほかにもいろいろ不利な条件にある。また逆に前記の表および図から良好な活着がえられるためには損失水分量が新鮮重の10%前後にとどまるよう注意する必要があるが落葉広葉樹で行った実験によると,休眠状態の落葉樹苗木は根をある程度乾燥させても苗木の活着にたいした影響はない。これは蒸散作用をいとなむ菓をつけていないので吸水が開始するまでさらに乾燥の度を強めることがないからである。
○苗木の調整(渡辺資仲先生著)
普通掘取られた苗木はこれを植付ける前に苗ごしらえをする。これまでの苗ごしらえはおもに根についてであり,かりに地上部にも多少手をいれることがあってもそれは苗木の形を考えてのことが多く,苗木全体としてみてもそろった苗,形のよい苗,地上部地下部のつりあいのとれた苗木というように苗木の生理的な意味を考えるより形態的な面を考えておこなうばあいが多かった。苗木の形をつくることも必要であり,活着後の生育を考えての苗ごしらえも必要であるが、しかし苗木の調整は活着を良好にする重要な技術的階程であることを考え、苗ごしらえを生理的な面を考慮にいれておこなう必要がある。したがつてこれまでの苗木の調整は苗木の選別,根ごしらえなどが主であつたが、これに苗木掘取前の葉面被膜もいれる必要があると思う。
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