サブやんの気まぐれ調査研究

日本の里山は崩壊します。守るのは私たちです。行政主導の時代は終わり新たな取り組みが求められています。

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票に化けた頂上の行方
「太陽」昭和41年発行 42年新年号掲載記事 平沢正夫氏著
( 日本一金になる山)

陣とりごっこは,頂上において,10年越しの火花を散らせている。
32年2月,富士宮の浅間神社が,頂上の帰属をめぐって,国を訴えた。
37年3月,神社の主張がみとめられ,国はやぶれた。
翌月,国が控訴。事件は目下,名古屋高裁にかかっている。神杜の主張とは,
「富士山八合目以上は,浅間神社の境内なり」
というのである。
それに対し,国のほうは,
「神社の土地は,頂上の噴火口周辺だけで,その他は国有地だ」
といっている。
八合目以上の面積は400ヘクタール(120万坪),噴火口周辺にかぎると,16ヘクタールほど(4万9,OOO坪)になってしまう。
戦後,神社は国家権力の保護から開放された。それまで,境内の土地は国有地であったが,旧所有者に返還することになった。旧所有者とは,明治初年,政府が境内地を国有化する以前の所有者をさす。浅間神杜には,
「富士山八合目以上は大宮持ちたるべし」
と,認めた,安永8年の江戸幕府の裁許状がつたわっていた。それをみても,神社が八合目以上の「旧所有者」であることは明らかとの言いぶんである。
いっぼう,国の見解は,
「八合目以上は国民のシンボルである。学術,観光その他公益上の見地からして,国有とすべきものである」
とする。
以上が裁判の争点である。「ところが,裏にいろいろの事情がありましてね」と,神社の彌宜・楠田英香氏。
山梨県選出の代議士(自民党)内田常雄氏は,境内地の旧所有者への返還があったころ,大蔵省の管財局長をしていた。内田氏は,このまま放置すれば,富士の山頂は浅間神社のものになることを知り,県民に事情をつたえた。
たまたま,山梨県では,山頂付近の県境がどこにあるかで,国に陳情中だった。
「山頂の北半分は,山梨県に属す」
と言っていたのである。
「富士山はおらが国の山」
の問題をめぐって,県民の山梨ナショナリズムがカッカともえていた。そこへ,山頂が浅間神社の土地になるという情報が舞いこめば,火に油をそそぐも同然の効栗をあげたとおもわれる。内田氏は,くやしがる県民をまえに,「私の目の黒いうちは」
とばかりに,山頂は浅間神社のものではなく,半分は山梨県のものであるとの所信をヒレキした。管財局長の肩書が,その発言に重みを加えたのはいうまでもあるまい。そのさなか,内田氏は退官して,衆院選に出馬。山頂問題を公約の一つにかかげ,票を集めて当選した。富士山が票に化けたのである。
理論的に考えると,山梨県の主張はおかしい。明治政府が国有化するまえの旧所有権者が浅間神杜でないとしても,土地がただちに県のものとはいえない。当選後の内田氏は,矛盾に気づいたのかもしれない。山頂問題をあまり口にしなくなった。
あとをうけて,知事の天野久氏あたりが,陳情の先頭に立った。やがて,山梨県人会がうごきだした。
「県のものにできないなら,国有地にすべし」
とのスローガンをうちだした。浅間神社にわたすことだけはしたくない,という考えのようであった。浅間神社にとって,八合目以上の土地を失うことは,さほどの経済的損失にはならない。信仰の対象を失うことになるのだ。神杜の立場上は,そのほうが重大である。八合目以上が国有地となれば,山梨県としては,借地あるいは払いさげをうけて利用することもできる。将来,利用価値が出るのだとすれば,国のものにしておくほうが好都合である。

貧乏人は木を育てろ


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