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こうした姿気高き松はもう山梨県には存在しない。
私はこの松の周囲が開発されて、この日が来るのを恐れていた。
生活の便利さか、税金の無駄使いか。閉ざしていた山にトンネルを空けた時、周囲の山々にはいっきにマダラカミキリムシが到来、これまで美しい松美林としてまたマツタケの産地としても有名なこの山はこれから大量のマツノザイ線虫の汚染を受けることになる。こうした開発がすべてとはいわないが、便利さの代償はあまりにも大きい。
この町の異変に気がついたのは、夏8月ころだった。一枝が枯れていて、それは武川町の「舞鶴の松」枯れの最初とよく似ていたからだ。
それから1週間に一度は訪れて様子を見てきたが、今日はっきり「枯れ状況」にはいり、これから春のかけていっきに枯れていく。
情けない。山梨県指定の文化財なんて糞食らえだ。いらない補修をして周囲の環境を悪化させて、こうして次から次へ天然記念物を失っていく。
この松はもう戻れない。来年は「山梨県指定文化」の看板が下ろされる。そして松の体内のマツノマダラカミキリ虫の幼虫は地中の根に集中していく。そこから何百何千のカミキリムシがはばたき飛散して、周囲の松に広がっていく。
私は現在「国指定文化財・舞鶴の松」「山梨県指定文化財・駒の松」の解除された両樹を永久保存作業をしている。
これらも半分は人為的の枯れ死部分を有している。現在の樹木保存事業など、まったく当てにならないどころか、かえって悪化させているともいえることが明確になってきた。
「遠照寺夫婦松」にも同じことが言える。人為的補修保存が樹木の持つ自然再生自然補修の道を閉ざしてしまう。これは業者サイドではなく、こうした事業を管轄したり指導したりする行政の認識不足言い過ぎれば勉強不足学習不足も起因している。
北杜市の国指定神代桜それに県指定の神田の桜も枯れや腐食が進んでいる。いずれ近年には相当の障害や欠損箇所が出てくる。須玉町の田木畑木のケヤキも補修を終えているが、その見る影さえない形態はすでに文化財の枠から外れている。
木は永年経過すれば、空洞ができたり、枝が自重で折れたりする。しかし樹木には枯れた部分を成長しながら巻き込みながら自ら補修していく。その部分に有機物補修するとその合わせ目に水分が溜まり、やがて樹木を腐食させる。これは武川町の舞鶴の松にも言えることで、それまで補修する必要の目的は理解できない。
自然時代経過の風体も文化財である。その形態をまったく変化させて、それが指定文化財などであるわけがない。
樹木などの天然記念物は風化形態も含まれているはずである。観光物件と化した天然記念物への、目的を逸脱した保存事業は根底から見直す時期に来ている。
これ以上枯らせてはいけない。
北杜市須玉町遠照寺夫婦松枯れ死顛末は後日詳細に報告。
3枚目と4枚目は一ヶ月前の写真5・6枚目正常時の景観。
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