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一、森林の現状(「林業経営」東京大学造林学教室 中村賢太郎氏著 昭和29年10月)
わが国は気候が暖かく、かつ雨が多いため、樹木がよく育つといわれるが、単位面積あたりの材積成長量は、ヨーロッパの林業先進国の約半分しかない。蓄積もやはり約半分で、一町歩あたりわすか三百石しかないことが、成長量のすくないひとつの理由である。
わが国には未開発の奥地林が多い。樹木が生えていても、利用できないばかりでなく、成長するだけ枯れるようである。
交通の便がよい地方の天然林は、おおむね過去の濫伐のために、はなはだしく荒廃している。すなわち優良樹を伐採するだけで、造林保育を実行していない森林、すなわちいわゆる天然生林が大部分であって、樹種林相がわるくなっていて、蓄積も材績成長畳もはなはだすくない。
とくに薪炭林は生産量がわすかであるが、伐期が低いばあいには、さらにいっそう不利である。
わが国では造林地の面積が比較的すくないばかりでなく、造林不成績地がはなはだ多い。すなわち、生産力が高い針葉樹の人工林はわずかしかない。
わが国の森林収は地形がはなはだわるく、やせている土地が多いこと、造林地がすくなく、しかもその生育が必ずしも良好でないことが、生産が低いひとつの理由である。すなわち昔から林業が発達している地方には優良造林地が多いが、明治以後の新興林染地の造林は必ずしも成功していない。
これに反してヨーロッパの森林は大部分が人工林であって、保護手入れがよく行き届いていて、伐期が高い。しかも交通の便がよいばかりでなく、地形がよく、極端に土壌が食い林地はすくない。したがって平均の蓄積ならびに材積成長量が多い。
要するにわが国の森林は、面積は広くても生産に使える森林が比較的すくなく、人工林がわずかであるばかりでなく、天然林は未開発であるか、あるいははなはだしく荒廃している。したがつて蓄積もすくなく、かつ材積成長量もわすかしかない。
二、木材需給の将来と造林の必要(「林業経営」東京大学造林学教室 中村賢太郎氏著 昭和29年10月)
わが国では木材の大部分を薪炭材として消費しているはか、用材としての需要がはなはだ多い。すなわち建築・土木その他
忙多量の木材を使っているばかりでなく、パルプ原木や坑木としての需要が増加した。したがつて伐採量は成長量よりもは
るかに多く、用材は30〜40年後、薪炭材は10〜20年後になくなるといわれる。
都市では薪炭にかわって、ガス・石炭・石油・電気などが使われる傾向があり、農村でもカマドの改良によって薪炭を節約できるとしても、用材の需要はふえる一方であり、かつ人口はますます増加するから、木材の消費をへらすことは困難で、むしろふえる傾向がある。
これに反して生産は、造林に努力するとしても、濫伐による森林の荒廃によって、かえって減少する不安がある。ゆえに木材の利用法を合理化して、消費を節約すると同時に、木材の増産に努力しなければならない。木材増産の手段をつぎに列挙する。
(1)造林面積をふやすこと.
無立木地の造林を奨励することは当然である。放牧地や採草地はその利用法がおおむね原始的であって、その生産量があまりに貧弱であるため、経営を合理化して増産に努力し、これによって節約できる面積の一部へ造林することは有意義である。
現在の無立木地忙は環境がわるい林地が多いから、その造林に努力するとしても、優良造林地を開拓のために失う損害のほうが大きい。わが国は気候が恵まれているから、肥沃地の成長量はおどろくほど多いが、大部分の森林は土壌の性質がわるいため、造林に努力しても成果が比較的すくない。したがつて交通の便がよく、土地がこえている優良造林地を、およそ一割開拓すれば、生産力は3、4割がた減少するであろう。
林野庁では達林面積を9百万町歩までふやすことを目標としており、さらに大規模の造林を企画する人があるが、造林面積をあまりに多くすれば不成績地が増加する不安がある。しかしながら木材を増産するには造林面積をふやすことが重要であるから、慎重に造林の計画をたてなければならない。
広葉樹の天然林とくに伐期の低い薪炭林は生産力がはなはだすくないが、これを針葉樹の用材林に変更すれば、多くの造林費を要するとしても、材積収穫を2倍、金員収穫(粗収入)を10倍内外忙することができる。
スギの伐採跡地へスギを植えても造林面積はふえないが、樹種を改善すれば人工林の面積が増加し増産の効果がいちじるしい。
(2) 伐期をひきあげること
近ごろ小丸太がとくに高くなったことと、金利が高くなったために伐期が低いほうが有利であるように見える。しかしながら国民経済上は木材の不足を救うために、毎年平均の材積成長量をもつとも多くするように、すなわち材積収穫最多の伐期令
まで育てあげることが望ましい。
適正伐期令以下の森林は、伐採調整資金を活用して、原則として禁伐にすることを理想とするばかりでなく、さらに伐期をひきあげて増産するように協力してもらいたい。間伐を適当に実行すれば、伐期をく高することは、林業家にとっても有利になるはすである。
なおそのほかに、奥地林の開発・天然生林の施業法改善・造林不成績地をつくらないこと・林木育種(品種改良)・施肥・病虫書の予防駆除などいろいろの手段があるが、樹種を改善して、毎年平均の収穫がもっとも大きくなるまで育てあげることが重要である。
適地適木とは何を意味するか、またどの樹種がもつとも有利であるかをきめることは、はなはだ困難であるが、スギ・ヒノキ・マツ顆・カラマツなどを造林できる林地は、一日も早く造林すべきである。
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