いくら林野庁関係に尋ねたり資料を調べても理解できない部分があったが、この書にあって始めて理解できた。
松くい虫の被害(激害型)
(河野修一郎氏著『日本農薬事情』 岩波新書 114 1990刊)
○森林の保全と防疫
(河野修一郎氏著『日本農薬事情』 岩波新書 114 1990刊)
<示唆に富む。失敗事例>
森林病害虫等防除法に指定されている「松くい虫」というのは、カミキリムシ科の昆虫、ソウムシ科の昆虫、キクイムシ科の昆虫を総合したものである。
マツノマダラカミキリ、
シラホシゾウ属、
キボシゾウムシ、
キイロコキクイムシ、
ヤッバキクイムシ、
マツノオオキクイムシ
などが代表的なものである。
○マツノザイセンチュウ(河野修一郎氏著『日本農薬事情』 岩波新書 114 1990刊)
ここで松くい虫の被害として取りあげる話題は、1972年頃から九州、関西地区を中心に被害が急速に目立ち始めたマツノザイセンチュウを病原とする激害型松枯れ病についてである。この松枯れを防ぐ目的で、1977年、「松くい虫被害対策特別措置法」が成立し、この法律によって松林へのヘリコプターによる薬剤散布、被害林の伐倒駆除などが大々的に実施され、その有効性や是非について新聞やテレビなどでも取りあげられ、自然保護と環境汚染という面から人々の高い関心を呼んだ。
特別措置法以後、毎年、約70億円の防除費をかけ、12万ヘクタール以上の松林に薬剤を散布し、やや規模は縮小されたといっても1988年現在、100万立方メートルの被害材を出して、いまだに薬剤散布を統けなければならない松くい虫防除とはいったい何なのか。
最も被害の激しかった1979年を含む12年間を「松くい虫防除薬剤」を販売する側にいた者として、その実態、問題点などに触れておきたい。
現境問題や、食品の安全性と各種化学物質の関係についてつよい関心を抱いていた人々は、おそらく「松くい虫のヘリ散布」または「空散」について忘れてはいないはずである。早くから関西地区を中心に反対の住民運動が起こり、薬剤を販売する側は、これらの人々の反対意見に対しひとつひとつ反論のための資料を用意してきた。資料の大部分が比較的に科学的なものであったことと、各都道府県の熱心な防除意欲が反対運動を上手に退けたといえる。
ここでなぜ「松くい虫」の「特別防除」(松くい虫を駆除し、またはその蔓延を防止するため航空機を利用して行う薬剤による防除)について総括をする必要があるのか。
その理由は、この森林害虫が現代における人問と自然の関係を象徴していると同時に、これからの森林保護を考えるうえできわめて大きな示唆に富む失敗事例だったからである。
特別措置法を施行する前年の資料(林野庁)では、特別対策を講じた場合、1981年には松枯れの被害材積は20万立方メートル程度に減少する予定だった。この数字は70年の37万立方メートルの被害を下まわる徴害への終息を意味していた。
ところが、松枯れの被害はますます増加して、特別措置法3年目にピークの240万立方メートルの被害材積を数え、その力―ブはゆるやかな減少はみたものの、88年の被害材積はいまだに100万立方メートルを超しているのである。73年(昭和四十八年)、ヘリコプターによる薬剤散布を開始して以来、15年を超えてまだこの状態である。
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