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生態学的にみた日本の森林と林業 日本の森林の現状〔森林の荒廃〕(「新国有林論 森林環境問題を問う」黒木三郎氏他著)
日本の森林の現状については、別に林業としての立場からの詳しい分析があるので、現状そのものの説明はその方に譲り、本章においては日本の森林の荒廃ぶりを生態学的な視点から考察したい。
一部の環境学者や林学者のなかには、日本の環境は世界に冠たる素晴らしさをもっているというためにする主張をなす者がたまにいる。日本の国土の三分の二以上が森林だからというのがその根拠である。しかし、これは日本の土地分類において、森林と分類された土地の数字であって、森林とされている土地がそのまま良好な森林によって蔽われているわけではない。実はそのことが問題であることは読者には先刻ご承知であるに違いない。
しかし、森林地域が良好な森林に蔽われていないことの意味が、必ずしも正しく認識されているとは思われない。たんに、昔は日本の森林から良質の木材が生産されていたのに外材の安さに押されて、割高になっている、という程度の認識に終わってはいないだろうか?森林のもつ意義が正当に評価され、その上で日本の林業の大切さが認識されているならば、問題はないが、そうでないらしいところに、日本の林業の大きな課題があるように思うのである。
良好な森林に蔽われていない、と言ったが、それは端的に人工林の手入れ不在と、天然林をはじめとする森林の無計画な伐採という形で表われている。具体的には、次のような様子がいたるところに見られる。
たとえば、一見、スギ、ヒノキなどの林木が生い茂っているようにみえる人工林が、間伐すなわち間引きを行なっていないために、また、下枝の除去を行なっていないために、鬱蒼として林内は暗く、個々の林木の成長が不揃いでしかも不良といった森林をよく目にする。そういう森林においてはほとんど例外なく、林内にはフジ、キヅタなどの木本のツル植物が、林縁にはクズのような草本のツル植物が、林木の樹冠を蔽い、時には林木に枯れが生じていることも珍しくないほどである。
人工林は所詮人工なのであって、徹底的な管理ないし手入れがあってはじめて成り立つものであることは、耕地の農作物や公園の樹木を考えれば、容易に分かることである。しかし、人手不足という現実の前に、苗木は辛うじて植えはしたが、下草刈りとか、間伐(間引き)とか枝打ち・下枝の除去)といった、当然の手入れがなされていない林が全国的に広がっていて、人工林の荒廃というべき現実がある。
このような林木の手入れ不在とは対照的に、林道の延長や新規の建設の方は盛んに行なわれており、また、リゾート法がらみやあるいは直接にはこの法制度とは関係ないが、地域の経済活性化を名目とした、ゴルフ場やスキー場など各種の開発が山地で行なわれ、したがって森林つぶしが全国的に展開されている。
人工林も天然林も、森林が森林らしくない形態にさせられているところに、日本の森林の荒廃というべき問題が横たわっている。以下に問題の意味内容を検討してみよう。
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