新!サブやんの気まぐれ調査研究

サブやんの気まぐれ調査研究の続編です

森の話

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
「臨界プラズマ条件達成」という貧しい成果
「地球環境・読本』「別冊宝島101」掲載 吉岡斉氏著(九州大学教養学部助教授)
 
 一九八七年十月、原研はJT−60が「臨界プラズマ条件の目標領域」に到達したと発表した。これは「第二段階計画」の主目標が達成されたことを意味するので、いよいよポストJT−60の「次期大型装置」(建設費は四千億円とも六千億円とも言われる。これはJT−60の建設賢二千億円の二〜三倍に相当する)の建設を主軸とする「第三
段階計画」の正式承認のためのお墨付きが得られたことになる。じっさい原子力委員会の「第七次長計」(八七年六月)にも、「次期大型装置は、我が国の核融合研究開発にとっては不可欠のものであり、JT−60に続きトカマク方式とし、JT−60の臨界プラズマ条件達成後に、その炉心プラズマの生成・制御等の評価を踏まえた研究開発を
開始する」との一節がある(傍点は引用者)。
原子力委員会のレベルでは事実上、「第三段階計画」に対するゴーサインが出されたと考えることもできる。
 しかし前述のように、「臨界プラズマ条件」というハードル自体、必ずクリアーできるようあらかじめ意図的に低く設定されたハードルに過ぎない。欧米の大型核融合装置(JETおよびTFTR)は最初から、そのような作為的なターゲットを掲げていない。しかも日本の原子力委員会のいうところの臨界プラズマ条件は、(T−nr)図上で極大値から極小値まで数倍の開きがある非常に広範囲の「目標領域」として示されており、本来の臨界プラズマ条件は、その極大値に近いところにある。
 しかもJT−60は、「目標領域」の極小値をクリアーした(しかもD−TプラズマやD−Dプラズマを実際に燃焼させない水素を用いたシミュレーション実験において)に過ぎない。
 JT−60計画がその目標を達成したとの原研の発表は、決して虚偽の発表ではない。だがJT−60の収めた成果は、必ずクリアーできるよう意図的にきわめて低く設定されたハードルを越えた、ということ以上の何ものをも意味しないのである。そのような貧しい成果を核融合の「科学的実証」であると自画自讃し、「第三段階計画」のお墨付きのように大々的に評価することは、常識人(たる筆者)からみて、相当に非常識な意図的プロパガンダのように思われてならない。「第三段階計画」の今後の成り行きを、注視してゆきたい。
原発 開発のための意図的プロパガンダ
「地球環境・読本』「別冊宝島101」掲載 吉岡斉氏著(九州大学教養学部助教授)
 
 核融合開発においても、原子炉開発の慣例がそのまま準用されてきた。核融合の実用化までのタイムテーブルが最初に描かれた官庁文書として、前述の、一九七五年の「第二段階計画」の付表がある。
 これは異様なタイムテーブルである。なぜなら、あるステップの装置が完成したのち、チェック・アンド・レビューを実施し、それに合格してはじめて、次のステップの装置の開発にゴーサインが出される、というのが「チェック・アンド・レビュー制度」の原則であるが、表2は、前のステップの装置の完成をまたずに次々と次世代の装置の設計・製作が開始される、というストーリーになっているからである。
 原子力委員会は「第二段階計画」の発表の際、「核融合研究開発の推進について」(七五年七月)という文書を公にした。そこには当委員会今世紀末ないし、来世紀初頭に核融合動力炉を実現することを究極の目的とし、そこに至るまでの研究目標を段階的に設定し、これを目指した研究開発を国として強力に推進すべきであると考える」との一節がある(傍点は引用者)。
 おそらく原子力委員会は、石油危機という当時の社会情勢を最大限に利用して、核融合開発の飛躍的スケールアップを図るために、意図的に非現実的な「実用化目標時期」を設定して、「核融合の実用化は間近である」との印象を国民(とくに財政当局者)に植えつけようとしたのであろう。ここでも原子力関係者の得意とする「意図的プロパガンダ」が顔をのぞかせている。そして、この文章の内容と何とか辻棲を合わせられるタイムテーブルを作成したら、表2のような「チェック・アンド・レビュー制度」の禁制を犯す異様なタイムテーブルになった、というのが事の真相であると思われる。
 ともあれ「第二段階計画」のタイムテーブルは、もともと非現実的なものであった。だから原子力委員会核融合会議(またはその分科会)がそれ以降に発表したタイムテーブルが、改訂されるたびに加速度的に「実用化目標時期」(実証炉の運開時期)を後退させていくのは、当初から予想された事態であった。
 とはいえ、核融合会議長期戦略レビュー委員会が一九八一年三月に発表した報告書−「自己点火条件の達成をめざして」という副題がついているーまでは、曲がりなりにも実用化までのタイムテーブルが示されていた。ところがそれを最後として、核融合会議の報告書にタイムテーブルが記載されることはなくなり、それ以外の官庁文書からも一九八二年以降一斉に、核融合のタイムテーブルは姿を消した。(ただし原研が一九七五より毎年刊行している『核
融合研究開発の現状』だけは、一九八八年版からタイムテーブルを復活させている。だがこれは研究所の生き残りのために何としても、傘下のナショナル・プロジェクトとしての核融合の生存と成長を図らねばならない、という原研の苦しい台所事情のあらわれではなかろうか)。
 日本の政策当局は一九八〇年代に入って、エネルギー問題に対する冷静なセンスを身につけ、核融合の実用化などという空論を、真面目に受け取らなくなったのであろう。石油ショックの嵐が収まり、その精神的後遺症も快癒に向かうにつれて、第二の核融合ブームもまた終焉したのである(ついでに言うと、第三次オイルショックが今世紀中に仮に到来しても、核融合開発に再び熱い政治的関心が向けられることはなかろう。
原発 「タイムテーブル方式」の興亡
「地球環境・読本』「別冊宝島101」掲載 吉岡斉氏著(九州大学教養学部助教授)
 
 この「タイムテーブル方式」の興亡について、より詳しく見ることにしよう。
 日本の原子力開発プロジェクトはどれも「タイムテーブル方式」に基づいて進められており、各ステップごとに「チェック・アンド・レビュー」(挙げた実績や将来性についての審査)が実施される仕組みとなっている。これをクリアーしなければ、次のステップの装置やプラントを建設するための予算がつかなくなり、プロジェクトは中絶させられる。そして次のステップに進むためには、事前に設定された目標を何としてもクリアーしなければならない。
y原子炉開発の場合、通常は
   験炉、
②原型炉、
③実証炉、
の三段階のシナリオがつくられる。
 実証炉というのは他のエネルギーと競合しうる採算性を達成することを目標として製作される原子炉のことである。実証炉は一品生産であるため、単独では十分な採算性を必ずしももたないが、同型炉の量産体制の確立によるコストダウン効果を考慮に入れれば、商用炉として使用に耐えることが建前となっている。その意味で実証炉とは、商用炉第一号を指すと解釈できる。
(しかしこれは、あくまでも建前論のうえの原則である。高遠増殖炉(FBR)開発などでは、「原型炉」の次のステップとして建設される予定の原力炉の採算性が非常に劣悪となることが確実視されるため、それに便宜的に「実証炉」の名称をあてがいつつも、それと「商用炉」との中間に、新たに「初期実用一号炉」「初期実用二号炉」というステップを設定し、徐々に採算性を向上させていく、という苦肉の策のシナリオを原子力委員会は採用している。もちろんこれは、「実証炉」の正しい語義からの大幅な逸脱である)。
原発 暗転した実用化計画
「地球環境・読本』「別冊宝島101」掲載 吉岡斉氏著(九州大学教養学部助教授)
 
 核融合が実用的なエネルギー源の開発を指向するプロジェクトとして頭角をあらわしたのは、前述のごとく、一九六〇年代末である。それから先の十数年間、核融合予算はまさに指数関数的な急成長をみせることになる。核融合予算がピークに達するのは一九八二年度であり、その金額は五百三十七億円に達したのである。だがそれ以後、核融合予算は減少過程に入り、現在は三百億円余となっている。
 一九八二年という年は、予算が頭打ちになったばかりでなく、核融合の実用化の見通しが大きく暗転した年でもある。一九七〇年代には核融合関係の官庁文書のなかで、核融合発電の「実用化目標時期」がつねに明示されていた。「第二段階計画」(一九七五年)では、西暦二〇〇〇年頃に「実証炉(商用炉第一号)」を完成させるというタイムテーブルが示されている(表2)。
 ところがその後、「実用化目標時期」は加速度的に後退していった。そして一九八一年の報告書を最後として、「実用化目標時期」までのタイムテーブルはおろか、目標時期自体についてのコメントまでが、核融合関係の官庁文書から一斉に姿を消すのである。これは一九八〇年代初頭の段階ですでに、日本の原子力界において核融合への悲観論が強まっていたことをうかがわせるエピソードである。日本の核融合開発の「黄金時代」(第二次ブーム)は一九七〇 
年代であり、八○年代を迎えるとともに核融合開発は「斜陽期」に入った、というのが筆者の見解である。
原発 大型核融合装置JTI60の誕生
「地球環境・読本』「別冊宝島101」掲載 吉岡斉氏著(九州大学教養学部助教授)
 
 日本の核融合開発はさらに一九七〇年代に入って、国家的使命を帯びた巨大ナショナル・プロジェクトヘともう一段の飛躍をとげることとなった。
 一九七二年六月の新しい「原子力開発利用長期計画」(第四次長計)に示された核融合開発のターゲットとタイムテーブルは、第三次長計のそれよりも一段と具体的な内容のものとなっている。すなわち「我が国においては、トカマク型トーラス装置の研究開発に当面の重点をおくこととし、昭和五〇代に臨界炉心プラズマ試験装置を建設することを目標とする」という明確なポリシーが掲げられたのである。なおこの第四次長計(一九七二年)ではじめて、「臨界プラズマ条件」ならびに「臨界プラズマ試験装置」という概念が出現した。
 第四次長計をうけて、原子力委員会は一九七三年五月、核融合研究開発懇談会(専門部会に相当するもの)を設置し、「第一段階計画」につづく「第二段階計画」の基本方針を討議させた。その最終報告書がまとめられたのは七四年七月であるが、その内容は第四次長計の趣旨を全面的に反映した野心的なものであった。
 それに基づき、原子力委員会は七五年七月、「第二段階核融合研究開発基本計画」(とくに終了年度は指定されていない)を決定した。核融合は、「原子力特別研究開発計画」(ナショナル・プロジェクト)に指定され、高速増殖炉(FBR)などの主要原子カプロジェクトと肩を並べる「国策研究」となったのである。そして「臨界プラズマ条件の達成」が第二段階計画においてクリアーすべき主目標として掲げられた。そのための「臨界プラズマ試験装置」に相当するのが、日本原子力研究所(原研)において建設されたJTー60(JAERI Tokamak60なおJAERIは原研の略称)である。JTー60の建設は一九七八年四月より始まり、七年間の歳月を経て一九八五年四月に完成した(現在は改良工事のため運転を中断している)。
 

.

標準グループ

過去の記事一覧

検索 検索
サブやんの気まぐれ調査研究その2
サブやんの気まぐれ調査研究その2
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事