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《カクテルの名前》 「キッス・オブ・ファイヤー」と「青い珊瑚礁」。 カクテルが何かも知らんかったけど、よく聞かされたんで名前だけは覚えた。 と言っても、自分が物心ついた時には親父は肝臓悪くしてたから、酒は一滴も飲まんかったケド。 アルコール性じゃないよ。今で言うC型肝炎。当時の非A非B型肝炎ちゅうヤツだ。 あの頃は、「肝臓が悪い=大酒飲み」と決めつけられて、子供心にむっとしたモンだ。 非A非B型肝炎は慢性だから、いくら養生しても治らない、多分そのうち肝硬変になるけど、そうなったらもうどうしようもない…って、結構ガキの頃から母親に言われてた。 母親、結婚するまで看護婦やってたから、毎晩親父に静脈注射打ってた。 一番太くて入れやすい肘の静脈は、「いざという時のために」避けて、チョットはずれたトコにする。 月に一度くらい病院に行くと、内服薬とアンプルを山のように出された。 アンプルの種類が代わったり、数が増えたり減ったりしつつ、そのうち、点滴になった。 何種類ものアンプル吸い上げて、点滴に入れるワケよ。それが、毎晩。 だから、フィブリノゲン訴訟の中で、名前は忘れたが、国側の証人が、 「当時は、非A非B型肝炎が肝硬変に移行するという認識は無かった」 「分かったのは、C型肝炎ウィルスが発見されてからだ」 みたいな証言した時には、ふざけんじゃねえと思った。 じゃあ、自分らが、本人含めてずーっと前から覚悟してたのって、ナニ? C型肝炎ウィルス(正確には、その遺伝子)が見つかった時には、親父はとっくに肝硬変であの世行っとったわ! ……まあ、それはさておき。 高校の頃、本屋でカクテルの本を立ち読みしたら、ちっこい本だったせいか、「青い珊瑚礁」の方しか載ってなかった。 「キッス・オブ・ファイヤー」は、酒好きなツレに聞いても、誰も知らなかった。 今から10年程前に、広島のある店のメニューで、初めて見た。 親父の供養に飲んでやりたかったが、いかんせん、自分はアルコール・アレルギー。 薄めのロング・ドリンク一杯くらいならいけるが、ショートは無理。 なもんで、オーダーだけして、ツレに飲んでもらった。 砂糖でスノー・スタイルにした真っ赤なカクテルで、「かなり甘くて、すごくキツイ」そうな。 どっちも、昔のコンクールかなんかで賞取ったヤツらしい。 ま、飲めんケド、名前はいまだに覚えてるからさ。勘弁してくれや。
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