中途半端

ご無沙汰だけど、生きてはいる

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ばーさんは、自分では飲まんケド、コーヒーの匂いが大好きだった。
自分がペーパーフィルターでコーヒー淹れた時なんか、「ああ、ええ匂いがする」と言って、ご機嫌だった。

ある日、ばーさんが言った。

「あんた、そんなにコーヒが好きなら、ええコト教えたげよ。
 大豆をように炒って石臼で挽いたんを淹れたら、コーヒそっくりなんぞな。
 香ばしいてええ匂いがするのよ。今度やったげよわい」

え? いや、別に自分はフツーのコーヒーでいいんだけど。
それに、コーヒーみたいな味になるのは、タンポポの根っこって聞いたコトが……てか、その大豆のって、戦時中に代用コーヒーって言ってたヤツでは…(^ ^;)
ドイツが舞台の小説にそういう話が出てきたケド、欧米なら分かるよ。でも、代用しなきゃいかんほど、日本でコーヒー普及してたワケ??
しかも、大都会ならまだしも、ばーさん18かそこらで嫁に来てから、ずーっと松山っしょ。
一体、いつ、どこで飲んだんだ(- -;)

それからも、ばーさんは、時々思い出したように同じコトを言った。
どうも、ばーさんにとっては代用品ではなく、単なる「大豆でできるコーヒーみたいな飲料」だったような気がする。少なくとも、匂いはえらく気に入ってたみたいだな。


実家の台所は、農家にふさわしく土間で広かった。
雨が降って外に出られない時には、三和土にチョークで落書きしたりして遊んだ。
L字型に上がり框があって、そこの下、夏でもひんやりしてる奥の隅っこに、石臼が置いてあった。
毎年、秋になると、その辺りからコオロギの鳴く声がした。
親父が死んだ後に、他の部屋に高さを合わせて床を張り、ダイニング・キッチンに改装した。
あの石臼はどうしたんだったかな?
売ってくれって業者がいたケド、庭の飛び石にするってんで、罰当たりなと断ったはず。倉庫にしまったのかなあ?

何度も「今度やったげるけん」と言いつつ、結局そのままになっちまった、大豆コーヒー。
でも、コオロギは、相変わらず、石臼のあった辺りの床下で鳴いてるらしい。

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