中途半端

ご無沙汰だけど、生きてはいる

ばーさんの思い出話

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明治34年に生まれて、平成9年にあの世へ行った、父方のばーさんのコト。
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久々にばーさんのコト。

元気だった頃のばーさんは、たくあんとからっきょうとか、イロイロ漬けてた。
らっきょうは海苔の空きビンに漬けてたケド、梅とたくあんは瓶(かめ)だった。
白菜は、漬け物桶だったような気がする。
なんにしろ、どれひとつとして手伝ったコトないモンで、記憶が曖昧なんだけどさ(^ ^;)
そーいや、台所改装する前は、米も塩も瓶に入ってたなあ。
塩の瓶は、小脇に抱えられるくらいのサイズだったケド、米びつならぬ米瓶は、コドモの1人くらい余裕で入れるくらいでかかったような……あれ、改装した後どうしたんだろう…??

それはさておき、ある日のコト。自分は、高校生だったかなあ…?
台所に行ったら、隅の丸椅子の上に漬け物桶が置いてあった。どうやらばーさんが白菜漬けたらしい。
自分がいるのに気づいたばーさんが、にま〜っと笑って、言った。

「ばあちゃん、ええコト考えたのよ」

何だ? と思ったら。
ばーさんは、桶に木の落とし蓋をした上に、プラスチックのボウルを置いた。
で、鉢に水を汲んで、ボウルにざばざばと3杯ほど。

「もう胴が痛うて、漬け物石はよう持ちゃげんけれ。のける時は、ちとずつすくて捨てたらええけんの」
(直訳:もう腰が痛くて、漬け物石は持ち上げられないから。取り除く時は、少しずつ掬って捨てればいいからね)

おお、なるほど! すごいぞ、ばーさん。まさに目からウロコだった。

そんなワケで。
自分がたまーに白菜の浅漬け作る時は、ばーさんに倣ってボウルに水張ったり、湯飲み乗せたり、缶詰乗せたり、白菜の量と器によってテキトーに調整してるんだった。


ちなみに。
この頃の漬け物石は、「漬け物石」つーくらいで、マジ、石だった。
いい具合にカドが取れた、底がわりと平らな石。多分、川原で拾ってきたんだろうなあ。
確か、一番デカイヤツは底の広い三角錐っぽい形で、中くらいのは平べったくて、小さめのはメークイーンみたいな形のが2・3コあった…気がする。
最近は、カーリングのストーンみたいな短い円筒形のヤツ、売ってたりするケドな。
入院中のばーさんは、そこが自分の家じゃないってコトは分かってたっぽい。
ケド、不思議なコトに、「帰りたい」とは一度も言わんかった。
病院だと理解してる時と、どっかの別荘だか旅館だかで療養してるつもりの時とがあった気がする。
で、ある時、自分に向かって、こんなコトを言い出した。

「アンタ、ここの年季が明けたらウチへおいでな。やぁがおってもかまん、連れといで。お庭もあるんぞな。広いけれ、遊ばしたらええ」
(直訳 : アンタ、ここの年季が明けたらウチへ来なさいよ。赤ちゃんがいてもかまわない、連れておいで。お庭もあるのよ。広いから、遊ばせればいい)

この後、部屋はちゃんとしたのがあるとか、じーさんの盆栽だけは赤ん坊に触らせちゃイカンとか、イロイロ雇用条件が続いたんだけど…。
あの、自分、独身だしコドモ居ないです。(←当時)
……ってか、それ以前に、年季奉公の住み込み女中じゃなくて、アンタの孫ですがな(^ ^;)
まあ、誘うくらいだから、気に入ってくれたんだろうケドさ(笑)


ばーさんの記憶は、ぐるぐるループしてるカンジだった。
「ウチ」と言ったのが、ばーさんの里のコトだったり、婚家のコトだったり(- -;)
自分の母親は、ばーさんにとっては息子のヨメなのに、時々、実の母親だと思ってたりした。
自分の弟は、初の男孫だってんでムチャクチャかわいがってたのに、生まれたコトすらよく忘れてるし(T_T)
たま〜に話に出たと思ったら、ばーさんの記憶の中では、相変わらず小学校低学年だし。とっくにハタチ過ぎてるってばよ(笑)
時々、見舞いには来てたんだけど、どうも、病院のスタッフだと思ってたようで。あんなにじーさんそっくりなのになあ。
せめて息子と間違えてやれよ、ばーさん…と思ったんだけど、どうも、息子が2人いたのも忘れてたみたいだな。

ケド……長男が死んでダンナが死んで、跡取った次男まで死んだのも忘れてるワケで。
その次男の葬式で、「この家の男が絶えてしまう」って、棺桶にすがって泣いたのも忘れてるワケで。
…まあ、コレはコレでいいんかもなー、と思った。
久しぶりにばーさんの話。や、思い出したからさ。
今月で、ばーさん亡くなって丸10年だよ。早いなあ…。

ある日の主治医の回診の時のコト。

医者: 「ばあちゃん、具合はどんなかね?」
ばーさん: 「おかげさまで、いとぅもかいぃもございません」
(直訳 : おかげさまで、痛くも痒くもございません)

……ばーさん、一応患者なんだから、外ヅラがいいのもたいがいにな(- -;)
ま、腸に腫瘍あっても自覚症状はないらしい…ってコトかな。本人が辛くないのは、側にいるモンとしては気が楽だけどさ。


でも、その腫瘍。
入院した時は、そらもうヒドイ状態でマトモに検査もできんかったのが、1年経ったこの頃、定期検査でレントゲン撮ったら、どうも小さくなってるらしい。
主治医も、見立て間違えたかなあ、と首を捻ってる。で、ここは一発ちゃんと検査してみようか、と母親に相談。

母親: 「検査してもし悪性でも、ばあちゃんどうせもう手術する体力無いでしょがね」
医者: 「うん、無いなあ」
母親: 「それじゃったら、今更しんどい目ぇさせるんもかわいそうなかろう?」
医者: 「ほじゃなあ。それに、ばあちゃん、麻酔したらそのまま目ぇ覚まさんかも知れんしなあ」
母親: 「覚まさんかったら困るがね!」
医者: 「わははは、うん、じゃあ、やめとこ」

永久麻酔かよ…って、それ困るし!
相変わらず身もフタもない会話だ〜(^ ^;)
自分が泊まりの日の夜、ばーさんの枕元の洗面台で花瓶の水換えてた時のコト。
ばーさんが気づいてじーっと見てるんで、急いで生け直して、花瓶ごと目の前に差し出してみた。

「ほう、これは百合じゃぁの。これは、百合じゃ」(←名前が分かったので、得意げ)

花は、「病室が殺風景なのはイヤ」な母親が、切らさんように買ってきてたんだけど、どうせならばーさんの好きな花がよかろう、と思って、訊いてみた。

「ばあちゃんは、どんな花が好きなん?」
「…どんなてて……」(←具体例が出ないらしく、困っている)
「花なら何でもええんかね」

ばーさん、色をなして曰く、

「きれなきゃイカン!」(訳 : きれいじゃなきゃダメ!)

わーははは、そらそうだ〜!
要介護者が自分では寝返りも打てんような場合、一番厄介な問題は体位交換だと思う。
日に何度もちょこちょこ動かさんといかんし。
ケド、これサボると褥瘡(じょくそう)…いわゆる床ずれってヤツができて、ひどいコトになる。

自分のじーさんは、庭でコケたのが原因で、4年ほど座敷で寝たきり老人やってた。自分が、小学校の4年か5年の頃からだったかな?
あの頃のテレビはリモコンじゃなかったから、よく「おーーい、テレビつけてくれ」って呼ばれたモンだ。電源スイッチ、引っぱらにゃならんかったからさ。
消す方は押せばいいから、先に布巻いた棒が枕元に置いてあった。狙い定めてソレでぽちっとするワケ。
でも、その棒でチャンネルをガチャガチャ回すのはムリなんで、これまた「おーーい!」。
今だったら、全部リモコンで自由自在なんだけどな(笑)
じーさんは、上半身を引っぱり起こして、膝の上にお盆載せてあげれば、自分で食事ができた。魚なんか、それは見事にきれーに食ってたし。
で、食事が済んだら、自力でお盆を布団の脇に置いて、横になる。とーきどき、バランス崩して「く」の字に横倒しになっちまって、「おーーーい!」なんてコトもあったケドね(笑)

それはさておき。
そんなじーさんでも、やっぱり、最期には軽い床ずれができてた。


で、ばーさんの場合。
食事の度に上半身起こしてたじーさんと違って、ホントに、文字通り、寝たきり。食事の時は、ベッドごとリクライニングだし。
その上、ばーさんには、お気に入りの姿勢ってのがあって、身体の向き変えたっても、すぐ元に戻るんだな(- -;)
ドーナツ座布団とか使ってみたけど、気に入らんらしいし。
姿勢変えるのは、オムツ交換の時と着替えの時だけ。いくら何でもこりゃマズかろう。

母親は、力業で解決した。
褥瘡予防エアーマット。電動ポンプでマットに空気を送って、膨張・収縮を繰り返すってヤツ。
自分は広島にいたから知らんかったケド、入院前、ばーさんが家で8割寝たきりやってた頃から、使ってたらしい。それをそのまま病室に持ち込み。
あれ、マジですごいよ。ばーさん、結局、床ずれ全然できんかったもん。
そら、チョット皮膚に異常あるかな〜、てかってるっぽいな〜、みたいなトコは2・3ヶ所あったケドさ。
年がら年中同じ姿勢だったコトを思えば、それくらいですめば御の字っしょ。

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