梢のぶつぶつ

最近は高い木が少なくなったけれど、それでもこうしてとまっていると遠くのものも見えてくる。

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刀の紐

昔、ある剣の達人がこんな言葉を残している。

武道の極意は、一生平穏無事に暮らすことである。

剣は人を斬るための技術を稽古する。
稽古を続けるうち、相手がいかに斬ってくるかも読めるようになる。
それが読めれば、かわすだけで身を守ることができるようになる。
さらに高みに達すれば、相手が斬るという殺気を放つ前にそれを逸らすことができるようになる。
さすれば、そもそも闘う必要がなくなる。
この達人の達した域というのは、そういうものだったのだろう。


かつて「人斬り」と呼ばれ、多くの命を奪ってきた男は、その反省から刀の柄と鞘を九条という紐で結び、刀を抜けぬように封印した。
もし、ふいに襲われても鞘ごと受けるしかなく、受けることしかできない。
「わしはもう、人は斬らぬ」
それでもこの男は長年こう言い続け、剣のかわりに商売に精を出し、儲けた金を困っている人に与えたりしながら町の人々にとけこんできた。
牢から身請けをしてくれた強い大男は町の自警団のリーダーを自任し、ことあるごとに「おまえも腕があるんだから、少しは手伝え」と言いつのってきたが、男は「紐がござれば」と断わり続けてきた。
そんな男は町の人々のそれなりの信頼も受け、穏やかに暮らしてきたが、このところ少し顔つきが変わってきた。
「抑止力を高める」と言い、刀の紐を解き始めた。
町の人々の笑顔の頬に
ぴりっ
と微かな緊張が走った。

さて、
男がこの紐を解けば、
より安全は増すだろうか?

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