梢のぶつぶつ

最近は高い木が少なくなったけれど、それでもこうしてとまっていると遠くのものも見えてくる。

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黒潮は台湾東方沖の太平洋から琉球諸島の西を通り、日本列島東岸をかすめて北上、房総半島沖で東に向かう濃紺の大海流だ。その流量は地球上の全河川の合計の30〜50倍といわれ、幅約50キロから100キロ。日本の沖では秒速1.5〜2メートルの巨大な川のような流れとなり、江戸時代の船乗りは「黒瀬川」と呼んでいた。

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【写真】黒潮を使った発電に成功した「かいりゅう」

 日本の目の前にあるこの巨大なエネルギー源を発電に活用すれば、原子力発電に代わる安定的で二酸化炭素を出さない電源になる可能性を持つ。そんな「黒潮発電」の実験が成功し、実用化に向け進み始めた。

 重工大手のIHIは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金約27億円と自社の約13億円を投じ、浮遊式の黒潮発電システム「かいりゅう」を開発。昨年8月から鹿児島県の口之島沖で発電実験に成功した。今月13日には、日本船舶海洋工学会の「シップ・オブ・ザ・イヤー」海洋構造物・機器部門賞を受賞した。

「かいりゅう」は全長19メートルの円筒を3本横に並べた筏のような形だ。左右の円筒の後部にある直径11メートルの回転翼で発電する。海底の重りと合成繊維のロープでつなぎ、水面下約50メートルの海中に沈める。一見簡単な仕組みにも思えるが、自動的に深度や方向、傾斜などの姿勢を制御する。

 実験では秒速1.5メートルの流速で100キロワットを発電した。実用段階では回転翼の直径が約4倍の直径40メートルとなり、2千キロワットを発電する計画。約30キロ四方の海に600機設置すれば、新型の原子炉1基分の出力(120万キロワット)に匹敵する。

 IHIはまず離島用の電源として実用化する計画。将来は九州、四国、紀伊半島、房総半島などの沖にそれぞれ設置すれば、原発の代替電源になる可能性もある。黒潮は静岡県沖では蛇行するが、紀伊半島沖と房総半島沖ではほぼ決まった海域を通る。設置する海域は海岸から約40キロ、水深400メートルほどの場所を考えており、海底ケーブルで送電する。排他的経済水域内なので他国との摩擦の懸念はなく、原発や水力発電より大都市の近くで発電しやすい。送電に鉄塔が不要なのも利点だ。



原発は放射性廃棄物の処理が困難という本質的な問題を抱える。火力発電は電力需要の変動に合わせ発電量を調節できる長所があるが、その燃料輸入には年間4兆円かかり、二酸化炭素の排出も問題だ。再生可能エネルギーでは太陽光や風力が普及しているが、発電は不安定だ。

 欧州では1日に約2回起こる潮の干満を利用する潮流発電も実用化しつつあるが、発電の時間は限られる。一方、黒潮は常に絶大な量の水が陸岸近くをおおむね一定の方向と速度で流れている。世界的にもメキシコ湾流が大西洋に出る米国フロリダ半島沖と日本東岸しかないほどの好適地で、日本にとっては天の恵み。黒潮発電が本格化すれば、英国にとっての北海油田と似た価値を持つかもしれない。

 資源エネルギー庁の山崎琢矢新エネルギー課長は「海流発電は安定した電力供給ができ、基盤的電源となり得る。新エネルギーとして最も有望。機材の価格をいかに下げるかが課題だ」と言う。NEDOは今年度から2020年度まで、次の段階の開発に22億円の助成金を拠出し、IHIは11億円を負担する予定だ。

 水深約50メートルに装置を設置すれば、潜水艦以外の船舶の航行に支障はない。設置水域によっては底引き網などの漁業を妨げる問題は出そうだが、IHIで黒潮発電開発を指揮する長屋茂樹さんは「将来は漁業協同組合に機材の点検、整備を依頼するなど協力をお願いすることも考えられる」とし、30年ごろの本格的実用化を目指している。(ジャーナリスト・田岡俊次)


AERA 2018年7月30日号 

転載元転載元: しあわせの青い鳥


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