梢のぶつぶつ

最近は高い木が少なくなったけれど、それでもこうしてとまっていると遠くのものも見えてくる。

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背水の陣

この言葉が日本で使われる時、
「あとがない状況に自らを置き、死に物狂いで頑張って突破する」
という
根性論・精神論として語られる。

だが、歴史上有名な「背水の陣」は
まったく別物である。

これは、漢帝国の勃興期に活躍した奇跡の名将韓信の緻密な計算にもとづく作戦なのである。

韓信が劉邦の命によって趙の平定に向かった時、井?城で待ち構える趙軍20万との予定戦場へ出るには人馬が一列になってしか通れない山間の細い道を行くしかなかった。
これを間道から攻め込んで分断してしまえば、もはや韓信の軍は全滅する以外にない。
趙の将軍李左車はこの作戦を総大将陳余に上申したがはねつけられた。
趙軍は20万、対する韓信の軍はわずかに2万。
十分の一の敵に対して奇計を用いたとあれば、周囲への聞こえが悪い。
というのが陳余の言い分である。
これは軍事ではなく、政治、それも多分に自己満足の政治的思考にすぎない。
これらの次第全てを、韓信は事前の諜報活動によって知っていた。
知っていればこそ、この小道を抜けて井?城の前を流れる?水の前に出たのだ。
出る前に韓信は主だった諸将を集め、作戦を説明した。
まず、部隊を3つに分ける。
1隊は夜のうちに井?城に近く、城を見下ろせる丘に漢の旗を持って埋伏せよ。
敵が全軍打って出たら、一気に空城を占領し、ありったけの旗を立てよ。
1隊は夜が明ける前に?水を渡り、陣を築け。
最後の1隊を私が率いてゆく。
先行の1隊は、背後は水で逃げ場がない。
「途中で敵が攻撃してきたら、どうすれば・・・」と不安がる諸将に、韓信は「敵はけっして攻めてこない」と言い切る。
なぜなら、敵の目的は私の首を取ることだから、私が渡河する前に攻め込めば肝心の私が逃げてしまうと考えるからだ、と言うのだ。
この「背水の陣」を見て、敵は韓信の兵法知らずを嗤った。
敵に嘲笑されることこそ、韓信の目的だった。
さらに韓信は自らが率いる1隊だけで敵軍に向かって突撃を開始した。
「やはり兵法知らずよ」
侮った敵は全軍で力押しに韓信隊に襲いかかり、韓信の首を上げようとする。
ここで韓信は偽って敗走し、?水を背に陣を構える第2隊と合流。
この時初めて、韓信は「後ろは河ぞ!死ねや!」と士卒に檄をとばす。
逃げ場がなければ、敵を倒す以外に生きるすべはない。
士卒は死にものぐるいで防戦を始めた。
(この部分だけを取り上げて、日本では「精神論」にしてしまった)
その頃、丘の上の埋伏隊が山を駆け下り、韓信が予言したとおり空城になった井?城を乗っ取って漢の赤い旗を無数に立てた。
20万の趙軍は恐慌に陥った。
趙王も大将の陳余も討たれた! 
と思ったのだ。
この当時の軍というのは、こうなるとまったく個人の群れにしかすぎなかった。
てんでに自分の故郷を目指して逃げ出したのである。
趙王(お飾り)も、総大将陳余も、李左車も、この潰乱の中で捕らえられた。
2万の軍が20万の大軍を一瞬にして破ったのである。
韓信は、作戦説明時に諸将に明言したとおり、戦に勝った後で「正式の朝食」を取らせた。

敵も味方も、韓信の掌の上で彼のシナリオどおりに転がされたのである。

このように「背水の陣」とは
知将韓信による完全に緻密に計算され抜いた
知的な作戦だったのである。

その土台は、敵よりも敵に詳しくなるほどの徹底的な情報収集・諜報活動にある。
敵陣営の状況から、主だったものの性格まで、
韓信は事前に知り抜いていた。

間違っても「根性論」や「精神論」ではない。
己の利害得失ばかりを計算する「政治的姿勢」でもない。

この軍事の天才が持っていたのは、戦場における徹底したリアリズムである。

不必要な殺戮は行わない。
不必要な損害も出さない。
情報を徹底的に集め、目的に到達するための最も合理的手段を講じる。

「背水の陣」から学ばなければならないのはこういう教訓であり、
明治以来、日本に最も欠けているものである。
大戦末期の東条英機の言葉「高射砲を敵機に当てるにはどうすれば良いか? 精神力である!」に、この国の欠陥の全てが凝縮されている。

これを欠いたまま、どれほど高額な最新兵器を購入しようと
安全保障の「あ」の字も叶わない。

敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。

現代においては
縦横無尽の視点を持って、よく知れば
そもそも戦う必要すらなくなる。
軍事などの出番が来た時には、すでに手遅れなのである。






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ナイス記事です!

私のブログに辺野古案が無くなったら日本国をどうして守れるのか?という愚問をぶつけてきたウヨがいますが、闘わずして勝つことがまったくアタマに無いことに唖然です。

いちいち説明するのも面倒で、この記事のように噛んで含めるような説明が苦手な私。その意味で、この記事をそのウヨの目に映るように転載させていただきますね。
いつもありがとうございます。

2018/12/20(木) 午後 11:55 [ kakaa ] 返信する

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kakaaさん、コメント&転載ありがとうです。

2018/12/22(土) 午前 0:07 [ MM21s ] 返信する

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