週刊現代2019年8月3日号記事『投資家・ジム・ロジャースの警告 世界から見たニッポン経済の未来』
■投資家・ジム・ロジャース氏の『日本人への最後の警告』!
▲世界一の投資家・ジム・ロジャース 世界から見たニッポン経済の未来
日本経済の崩壊は、いよいよ目と鼻の先に迫っているー。
この度「日本への警告」(講談社+α新書)を緊急出版した世界的投資家が、いまだかってない危機の全容を詳細に語り尽くした。
3つの危機的状況
もし私がいま10歳の日本人ならば、自分自身にAK-47(ロシアの自動小銃)を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶー。
現在の日本経済の惨状を目のあたりにして私はこの意をますます強くしています。
借金は雪だるま式に増え続け、高齢化はとどまるところを知らず、政治も問題を先送りにするばかりで、打つ手を見出せない。
くわえて、世界に目を向ければ、米中の貿易戦争が激化し、日本も重大な影響を被ることが目に見えています。
あまりの暗たんたる様相に、昨年の秋には保有していた日本株を全て手放しました。
いまは株であれ、通貨であれ、日本に関連する資産は一切持っていません。
それほどまでに、日本は絶望的な状況に置かれているのです。
この10年間で中国を始めとした近隣のアジア諸国がどれだけ力をつけたかを考えれば、日本の凋落ぶりには、めまいを覚えるほどです。
このままでは、50年=100年後には日本と言う国がなくなっているかもしれません。
なぜ、日本人はこうした現実を直視しないのか。
皆さんにも、この危機的状況を理解していただきたいのです。
まず直近の話から始めましょう。
今年から来年にかけて、日本の景気衰退に拍車をかける出来事が三つ連続して起こってきます。
10月の消費税の8%から10%への増税、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催、そしていつ何時起こってもおかしくない「第二の世界金融危機」です。
1つ目の消費税に関しては、14年に5%から8%に上げた時もクレイジーな政策だと思いましたが、10%などもはや正気の沙汰とは思えません。
増税して得た予算は、社会保障の充実に使われるとされていますが、まさかそれを本気で信じている人はいないでしょう。
二つ目、いま東京ではオリンピック・パラリンピックに向けてあらゆる建設が急ピッチで進められています。
道路は改善され、真新しいスタジアムが出来上がっろうとしています。
日本経済の崩壊は、いよいよ目と鼻の先に迫っている。
この旅、「日本への警告」(講談社+ α新書)を緊急出版した世界的投資家が未だかつてない危機の全容を詳細に語り尽くした。
確かに、こうした事業に関わる人たちにとって、オリンピックは一定の経済的恩恵があるかもしれません。
しかし、その効果はあくまで一過性のものです。
歴史的に見ればオリンピックが国家にとって金儲けになった例は見たことがありません。
持続的、あるいは中期的な効果は全くないからです。
むしろ、たった1ヵ月のお祭り騒ぎのために、日本の借金は大きく膨らむことになる。
宴の後に来る反動のほうがはるかに心配です。
建築業を筆頭にオリンピック・バブルの終焉で停滞、不振に陥る業種が増え、そのダメージは、消費増税と合わせて日本経済の致命傷になる可能性すらはらんでいます。
米中貿易戦争の余波
そして三つ目は、世界に目を転じた時、08年のリーマンショックに続く、「第二の世界金融危機」が刻一刻と近づいていると言うことです。
アメリカはいま10年以上にわたる史上最長の財政的問題を抱えています。
'18会計年度のアメリカの財政赤字は、779 0億ドル(84兆円)にのぼり、世界のどこかで経済危機が起これば、一気に破綻しかねない危険性をはらんでいます。
トランプ政権と、習近平率いる中国との間の貿易摩擦も激化の一途をたどっています。
私は、今年の後半から来年にかけてトランプ氏はより本格的な貿易戦争を仕掛けると予想しています。
最終的に、中国からのすべての輸入品に超高額の関税をかけ、一時的な国交断絶に陥ることも想定しなければなりません。
関税が強化されれば、そのコストはアメリカ国内の企業と家計に重くのしかかり、インフレが一気に進みます。
それによって消費の減退と、金利の上昇が起こり、結局はアメリカ自身も苦しみことになる。
大量の公的債務を抱え、かつアメリカと一蓮托生の貿易大国である日本は、この戦争の大きな被害を受けることになります。
7月24日には、日産の営業利益が前年同時期に比べて約9割減になると言う衝撃的なニュースがありましたが、これもアメリカ市場の不振の影響を受けたものです。
今後、同様にアメリカ経済の落ち込みの影響を受ける日本企業がたくさん出てくるでしょう。
こうした国際的な要因は、消費増税やオリンピックの反動といった国内的要因と相まって、数十年の中・長期的視野で見た際に、日本経済に甚大なダメージを与えることになります。
すでにご存知の通り、日本は先進国の中で最悪の「借金大国」です。
抱えている長期的債務残高は、国だけで897兆円にのぼります。
約10年前の08年度末の時点では546兆円だったことを考えれば、恐ろしいペースで進んで増えていることがわかります。
そして、ベネズエラやジンバブエなどの例を挙げるまでもなく、甚大な債務を抱えた国は、歴史上例外なく無残終焉を迎えています。
いま50歳前後の日本人であれば、30年後は80歳ですから、誰かケアをしてくれるかもしれません。
国庫に老年人口支えるお金もギリギリ残っているでしょう。
しかし、その頃40歳になるいま10歳の日本の子どもたちが老後を迎える頃には、生活を保障するおカネはどこにも残されていません。
結局、借金はさらに膨張し、その返済のための延命措置として増税が度々繰り返されることになります。
しかし絶対的な納税人口が減少していく以上、とても返済しきれないので、今度は年金などの社会保障がすさまじースピードで取り崩されることになるでしょう。
日本人の生活水準はそうして徐々に悪化し、生活苦にあえぐぐ人々が激増し、いよいよ打つ手はなくなります。
安倍はあべこべ
先人たちがずっと先延ばしにしてきたツケをひたすら払わされ、生活水準が目も当てられないほどに落ち込めば、当然のこととして社会不安が膨れあがります。
30年後、人々の鬱憤はあらゆる形で紛失し、日本は、より多くの犯罪が起こる国になります。
政府に対する反乱や暴動が、毎日のように起きているかもしれません。
そうなったとき、残された手段は国を捨てて逃げ出すか、あるいは自分の身を守るために武器を取るしかありません。
冒頭の私の発言には、そういう意図が込められているのです。
「日本は違う、そんなことが起きるはずがない」と思っていませんか?
しかし'80年代後半、日本で大型のバブルが発生した時も「日本だけは違う、バブルではない」と強気に言い放っている人がたくさんいました。
その後、日本経済がどんな結末を迎えたかは、皆さんがご存知のとおりです。
「自分たちだけは違う」と言う根拠のない思い込みほど、危険な兆候はないのです。
先ほどの日本株の話に戻すと、そもそも私が日本株を買い始めたのは、東日本大震災の直前でした。
その後、震災による株価の下落を受けてさらに買い増しを進めていました。
というのも、短期的に見れば日本の景気はまもなく回復すると踏んでいたからです。
それに、日銀も資金供給を増やすと言う方針を明らかにしていました。
政府が印刷機を回す時、おカネが最初に向かう先が株式市場であることは、自明の理です。
実際、黒田東彦総裁が率いる日本銀行がジャブジャブと紙幣を剃り、日本株や日本国債をたくさん買ったことで日本の株価は跳ね上がりました。
逆に言えば、ここ数年の日本株の活況はあくまでも日本政府が人工的に株価を上げているに過ぎず、実態が伴っていなかった。
景気にしても、異次元の金融緩和で円と言う通貨の価値を切り下げたことで、一部の大手企業がその恩恵を受けるのみでした。
一般的な日本人の生活や暮らしが改善したかと言えば、答えははっきりNOでしょう。
そして、このアベノミクスの1番危険な点は、人工的に低金利の状況を作って、借金をしやすくしていることにあります。
雪だるま式に増えている日本の借金は、猛烈なペースで進む人口減少のなかでは健全に返済していく事は到底不可能です。
将来のことを考えれば、日本政府がただちにやるべき事は財政支出を大幅に削減し、同時に減税を進めることです。
この2つを断行すれば、状況が劇的に改善したはずです。
ところが、安倍首相がやったのは全てくれとは真逆のことでした。
彼が借金に目をつぶっているのは最終的に借金を返さなくてはならない局面になったときには、自分は既にこの世にいないからなのでしょう。
これから20ー30年後に歴史を振り返ったとき、安倍首相は、日本の経済に致命傷を与えた人物として、その名を刻んでいるはずです。
そして冒頭で述べた通り、日本が抱える最大の問題は、言うまでもなく極端に高齢化が進んだ、その人口構成にあります。
日本は世界でもっとも出生率が低い国の一つであり、かつ、国民年齢の中央値が世界で最も高い国の1つです。
人口動態から見れば、21世紀の終わりを待たずして日本の人口がいまの6割ほど約7500万人程度になるのは明らかです。
人がどんどん減っていくと言う絶対的な危機を乗り越えるには、選択肢は2つしかありません。
すなわち、いまいる日本人に子どもをたくさん産んでもらうか、あるいは他国から移民を受け入れるかです。
現在の日本の人口を維持するには、女性一人当たり2人以上の子供を産む必要があるとされています。
ところが実際の出生率は1.4人程度ですから、遠く及びません。
となれば残るは移民を受け入れることしかありません。
移民の受け入れは日本にとってもはやベターではなくマストの選択なのです。
ところが日本政府は、事ここに及んでも、積極的に移民を受け入れようとはしていません。
アジアの最貧国への転落
日本は、21世紀に入ったいまも相変わらず外国人参政権を認めておらず、'18年には国連から「在日外国人に対する雇用差別、入居差別、教育差別がある」と勧告を受けているほどです。
その根底にあるのは、同質性の高い国民性や同一言語を当然のものと考える、鎖国以来の意識ではないでしょうか。
ここで思い出されるのが、かつてアジアで最も裕福な国だったビルマ(現・ミャンマー)のことです。
1962年以来独、裁政権によって支配され外国人を追放したビルマは、アメリカの経済制裁やインフラ不足を背景に、わずか50年のうちにあっという間にアジアの最貧国のひとつへと転落してしまいました。
「日本の場合は大丈夫」と言える根拠は、どこにもありません。
人口減少に、移民の受け入れの遅れ、そして巨額の公的債務ー。
ここまで指摘してきた危機に対して、私は15年も前から警鐘を鳴らし続けてきました。
別に、予言と言うほどのことでもありません。
なぜなら、こうした事実は足し算や引き算ができて、統計を見ることができれば、簡単に割り出すことができるからです。
しかし多くの日本人は、この現実から目をそけてきました。
もう一度言います皆さんは今こそ問題を直視し、現実的な対策を取るべきです。
自分や子どもたちの未来は、自分でしか守ることができないのですから。