|
★初めての方は「その1」からお読み下さい★
義太夫を読む!第一弾 『新版歌祭文 野崎村』 ―その1―
http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html
【第4回テキスト 義太夫原文】
影見送りて久松が事のみ思ひとやかくと、胸に一ばい半分の、水量り込む薬鍋、一へぎ入れる生姜より、辛い面つき久三の小助、久松引き連れ入口から「久作内にゐやるか」と、づゝと這入ればおみつは嬉しく、
「オヽ久松さん、よふマア戻つて下さんした。定めてあなたは送りのお方。お茶よ煙草」と嬉しさに、立つたりゐたり気もそゞろ、
「エヽやかましいわい。うそ穢い在所の茶呑みには来ぬわい。コリヤ追従せずと聞いて置けよ。この久松めが親方の銀、一貫五百匁、お山狂いにちよろまかしたによつて、今日連れて来たはな、久作と三つ鉄輪で詮議するのぢや。親父を出せ、出せ出せ出せ出せ」と辰巳上がり。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【原文】
影見送りて久松が事のみ思ひとやかくと、胸に一ばい半分の、水量り込む薬鍋、一へぎ入れる生姜より、辛い面つき久三の小助、
【解説】
久松の勤める商家へと挨拶に出かけていく父親の後姿を見送ったお光。久松――その名を思い出したとたん、彼女の心は彼のことでいっぱいになっちゃう。
察しのいい方ならモウお分かりでしょう(^皿^)うぶなお光ちゃんが胸の中で育てた初恋のお相手は、幼き頃から共に暮らしてきたちょっぴり年かさの美少年・久松くんなのです。
『胸に一ばい半分の、水量り込む薬鍋』とは、胸「いっぱい(の恋心)」の分量単位に引っ掛けて鍋「半分の(水で煮出す煎じ薬)」、と洒落こんだ言葉あそび。ピュアで不器用な恋心をちょっぴりからかってるみたい。
さらに言葉の連想ゲームが続きます。薬を煎じる鍋の連想から『一へぎ入れる生姜』煎じ薬の一材料である生姜(=しょうが)、『へぎ』っていうのはスライスしたひとかけらって意味です。で、生姜は舌にびりりと辛い、そんな辛くて渋くて吐き出したいような面構えをした男、名前は『久三の小助』が、出し抜けにぬっと姿を現したんです。
【原文】
久松引き連れ入口から「久作内にゐやるか」と、づゝと這入ればおみつは嬉しく、
「オヽ久松さん、よふマア戻つて下さんした。定めてあなたは送りのお方。お茶よ煙草」と嬉しさに、立つたりゐたり気もそゞろ、
【解説】
剣呑な顔つきをした小助は、久松と連れ立ってきたのです。玄関にずいっと入り込むなり『久作内にゐやるか』=久作は家に居るか、と不躾な口上。
しかしお光はといえば、今の今まで夢想していた愛しい久松が急に目の前に現われたものだからビックリ仰天、一気にハイテンション!『オヽ久松さん、よふマア戻つて下さんした。定めてあなたは送りのお方。お茶よ煙草』・・・お光のテンション込みで訳せば「キャー!久松さん急にどうしたのー!!帰ってきてくれるなんて嬉しいっ。あっあなた(と小助に気付く)、お店の方?久松さんに付き添ってきてくださったんですねっ、お疲れ様ですっ!あっ私ったら気が利かない、のど渇いてますよね、お茶差し上げなくちゃ〜。あっそれより先に煙草、一服なさいますかっ?」ってなもので、二人の不穏な気配にはまったくのKYぶりを発揮しきゃぁきゃぁと二人を迎え入れます。
【原文】
「エヽやかましいわい。うそ穢い在所の茶呑みには来ぬわい。コリヤ追従せずと聞いて置けよ。
【解説】
久松に会えた嬉しさに浮き足立って大騒ぎ!なお光を、小助が怒鳴りつけて黙らせます。
小助の台詞「うるせぇ、黙れ小娘!こんなこ汚ねぇ田舎になんざ、わざわざ茶など飲みにくるものか。おい、つべこべ言わずに、まずは俺の言うことを聞け!」
・・・嬉しさに冷水を浴びせかけられてぐっと黙るお光。ひたすらかしこまって小さくなっている久松。いったいどうしたというのでしょう。
【原文】
この久松めが親方の銀、一貫五百匁、お山狂いにちよろまかしたによつて、今日連れて来たはな、久作と三つ鉄輪で詮議するのぢや。親父を出せ、出せ出せ出せ出せ」と辰巳上がり。
【解説】
小助が語る、ことの顛末とは―――
なんと「久松がお店の金(超乱暴な換算だと、大体150万円くらい?)を着服し、お山(=下級女郎)との風俗行為にハマって使い込んだ」というのです。
「責任をとらせようったってガキ相手じゃ埒が明かない、今日、久松を連れて帰ってきたのはな、親にその責任をとってもらうためなんだよ。このガキと久作と俺とで膝突き合わせて話し合おうってんだ、さぁ分かったなら親父を出せ!」と、辰巳上がり(=言葉・動作が乱暴である意)の剣幕で一気にまくしたてます。
なんということ、久松が大変な疑いをかけられてしまっているようです!
――その5 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54733640.html に続く――
|