文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

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★初めての方は「その1」から順番にお読み下さい★
義太夫を読む!第一弾 『新版歌祭文 野崎村』 ―その1―
http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html

【第6回テキスト 義太夫原文】
道引返しいつきせき戻る久作駆け入つて、小助を引き退け突き飛ばし、「コリヤヤイ留守の間へ来てわつぱさつぱ、様子によつて了簡せぬぞ」
「オヽよふ戻つて下さんした。最前から久松さんをな」
「オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け」と納める程なほ業腹煮やし、
「大枚の銀引負したこのばりめ、詮議に来た小助は親方の代り、それを又わりや何で投げたのぢやい」
「これは迷惑な。ひばり骨見る様な手で血気なこなた投げたのではない。
怪我のはづみで、出端れの曲り途で道が逢ふて、留守の間へ大坂から息子が来たぞやと、若い者どもが知らしてくれたで、行戻り五、六里を助つた徳庵堤。引返して戻つたが、そんなら何か、その引負で、久松は戻つたのか。アヽそれ聞いてマア落ち着いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
道引返しいつきせき戻る久作駆け入つて、小助を引き退け突き飛ばし、「コリヤヤイ留守の間へ来てわつぱさつぱ、様子によつて了簡せぬぞ」

【解説】
家の奥へ踏み込ませまいととりすがる久松を、小助は殴る蹴るのめちゃくちゃな暴力。非力な少年少女は堪えるばかり、泣くばかりの大ピンチに駆け込んできた救世主!父親の久作が戻ってきてくれました!
久松にとりつく小助を突き飛ばし、怒鳴りつけます。
久作の台詞。「あるじの留守に許しもなく勝手に家に上がりこんで、大事な家族に暴力をふるうたぁ何事だ!理由のないことなら許さないぞ!」
おとうちゃん、カッコいい(>▽<)

【原文】
「オヽよふ戻つて下さんした。最前から久松さんをな」

【解説】
救世主にほっとしたお光は、悔し泣きに泣きながら父親に訴えます。
「よかった!お父さん、いいところに戻ってきてくれた!ひどいのひどいのよ、この人ったら無抵抗な久松さんに暴力ふるって!!」

【原文】
「オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け」と納める程なほ業腹煮やし、「大枚の銀引負したこのばりめ、詮議に来た小助は親方の代り、それを又わりや何で投げたのぢやい」


【解説】
久作の台詞。
『オヽよいてや。久作が戻るからは娘もじつと落ち着け』=「わかった、わかった。俺が戻ってきたからにはもう暴力など振るわせるものじゃない。お光、安心しなさい」と娘を宥めます。
予想外のヒーロー親父出現!
歯向かう敵のいないこの場で、腕力に任せて君臨していた小助は俄然、面白くない。
久松の窮状を聞けば慌てふためいて許しを乞うしかないであろう田舎親父の、今は頼りありげに自信たっぷりな様子に腹を立て、意地の悪い優越感でがなりたてます。
小助の台詞。
『大枚の銀引負した』=「とんでもない大損失を店に押し付けた」。
そして次の『このばりめ』、コレの意味が分からない。で、ちょっと検証してみたところ、もしかすると!?の面白い文意を見つけました。証拠はないので、正しいかどうかは分かりません。
文をほぐすと、おそらく『この+ばり+め』だと思われます。
『この』は「このやろう!!」とかに転用される、怒りや気分の高揚に乗せて、言葉に勢い、リズムをつける意味での『この』。
末尾の『め』は「ちくしょうめ!!」なんかで使う、〜のくせに・〜の分際で、という唾棄気分を盛り上げる接尾語ってとこだと思います。
で、まんなかの『ばり』。コレを辞書でひいてみましたら、いくつかの意味の中で目を引いたのがコレ!
「ばり=尿《「ゆばり」「いばり」の音変化》小便。(大辞泉)」
あっ!もしこの意味で使っているんなら『このばりめ』の意味は「このションベン野郎!!」じゃ、ないかいな!?
しょんべん野郎。その悪口のニュアンスとして「自分じゃなにも出来やしない」「自分の始末を自分でつけられない」幼いガキンチョ、という感じが滲みます。
この一言で、小助の久松に対する感覚っていうのがすごくよくわかる気がします。
おおっと、たった一言を肴に長話(笑)次に進みましょう。

『詮議に来た小助は親方の代り』=「事件の究明を任されてきた自分は、いうなれば親方(=店の主人)さまの名代だ」、
『それを又わりや何で投げたのぢやい』=「名代である自分に対しては、主人への態度と同じであるべきだろう。大恩あるご主人様に対して、お前、なんで投げ飛ばすという挨拶があるものか」と喚きたてます。

【原文】
「これは迷惑な。ひばり骨見る様な手で血気なこなた投げたのではない。
怪我のはづみで、出端れの曲り途で道が逢ふて、留守の間へ大坂から息子が来たぞやと、若い者どもが知らしてくれたで、行戻り五、六里を助つた徳庵堤。引返して戻つたが、そんなら何か、その引負で、久松は戻つたのか。アヽそれ聞いてマア落ち着いた。


【解説】
久作の台詞。
『これは迷惑な』=「なんと、筋違いないいがかりをつけられて困ったことだ」。
『ひばり骨』とは、痩せて骨ばっている意。「こんなガリガリの爺さんが、血気盛んなあなたをわざと投げ飛ばすなんてするわけがありませんよ。勢いづいた弾みでぶつかってしまっただけで」としらっととぼけます。暗に「こんな爺に投げ飛ばされたなんていったら、いい若いモンがみっともないぜ。投げられてなんかいねぇだろう?えぇ?」ってな逆説的脅迫さえ感じます。なかなかヤクザな親爺ぶり(笑)
で、ここからの台詞は「勢いづい」て家に飛び込んできた訳の説明。久作口調で訳しますと「そこの曲がり角で村の若い者に出会ったら、今、こっちから訪ねていこうとしていた久松が、入れ違いに留守の家に向かっていったぞと教えてくれたんだ。
道なかばの『徳』庵堤(という場所)でそれを知ることができたおかげで、往復20〜24Kmの無駄足を踏まずに済んで『トク』をした♪(←と、オヤジギャグ。)
それから急いで引き返して戻ってきたんだが、久松が帰ってきた理由ってのは、お前さん(=小助)の言う、店に損害を与えたために自宅謹慎してろってことなのかい」と。
そして『アヽそれ聞いてマア落ち着いた。』=「そういう理由か、あぁよかった」と言うのです。
この一言で分かるのは、久作は久松の失態をここで初めて聞いたわけじゃなさそうだ、事前に知っていたらしい、ってこと。
だって、もし初耳であるならば「よかった」どころかビックリ仰天、いかに息子のこととて、疑いと信じたい心に引き裂かれ、ともかくも詳しい事情を知りたがるのが普通の反応ですもの。
先刻家を出る前、お光の前ではそんなそぶりはまったく見せず、何もいわなかった久作ではありますが、事情を全部飲み込んだ上で店を訪ね、おそらく、どうにかして久松の身柄を引き取ってこようとしたんでしょう。
久作とて、久松の巻き込まれたトラブルの概要は知っていたとしても、詳しい事情まではわからなかったはずです。
銀一貫五匁=超乱暴な換算でいえば大体150万円くらいを着服した疑いというのですから、万が一警察機関にでも訴えられたらただですむわけがない。いや、それ以前に、被害を受けた武家側、信頼を失った店側が体面大事と久松一人に罪をおっかぶせ、内部リンチや制裁行為が起こらないとも限らなかったわけです。誰にでも人権がばっちり確保されている平成の世じゃないんです、田舎百姓の息子ひとりどうにかするのに――最悪、殺してしまうのにだって、後付の理由はいくらでもあった。
だから焦っていた。
最悪の事態をさえ思い描いていたところ、疑いをかけられたままであるとはいえ、五体満足でひとまず無事に家に帰ってきたというのですから、とりあえずはほっとしたのです。


――その7 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54796186.html に続く――


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