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★初めての方は「その1」から順番にお読み下さい★
義太夫を読む!第一弾 『新版歌祭文 野崎村』 ―その1―
http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html
【第7回テキスト 義太夫原文】
マアマア何かは差し置いて、朋輩衆のお世話であらふと、蔭ながら言ふてばつかりゐますわいの。寒い時分によふ連れ立つて来て下さつたなふ。ソレおみつよ、茶なと汲まんかい」
「チエ納めな納めな納めな納めなやい。わりやマア夢に見たこともあるまいが、一貫五百匁といふ銀高、子の科は親にかゝる。銀立つるか、但しは又願はふかい、どふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやい」
「ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」
「エヽ置けやい置けやい、見せかけばかりの正直倒し、イヤ麦飯のとろゝのと、ぬらくらとは抜けさせぬわエエ、あんだら臭い」と蹴散らす藁苞破れてぐはらりと出る丁銀。
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【原文】
マアマア何かは差し置いて、朋輩衆のお世話であらふと、蔭ながら言ふてばつかりゐますわいの。寒い時分によふ連れ立つて来て下さつたなふ。ソレおみつよ、茶なと汲まんかい」
【解説】
とりあえずほっと一息ついた久作。台詞が続きます。
落ち着いたらかるーく世話話、ってなもので、いつも久松がお世話になってます〜と愛想よくご挨拶。寒い中を店から連れてきてくれたことにお礼を言い、ぼんやりしているお光を「お客様にお茶も淹れないで」と叱りつけてみせます。
店の主人の名代=小助を客分扱いに、問題のない時分の関係どおり、いつものペースに戻そうとし、てみます、が。
【原文】
「チエ納めな納めな納めな納めなやい。わりやマア夢に見たこともあるまいが、一貫五百匁といふ銀高、子の科は親にかゝる。銀立つるか、但しは又願はふかい、どふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやいどふぢやい」
【解説】
そんな上手くいくはずありませんね(当たり前。)
小助の台詞「うるさい黙れ黙れ!こんな貧乏所帯のお前さんじゃ夢にだってみたことはないだろうが、150万ったらとんでもねぇ大金だぞ!子供の罪は親が背負うもんだ、さぁ、久松が失くした金、ここに耳をそろえて出してもらおうか!できないというならまた話し合わなきゃなるまいぜぇ。おい、どうなんだよ何とか言え!」とかさにかかって喚きます。
【原文】
「ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」
【解説】
久作の台詞。
『ハテよいわいの、その様に息精張るは大きな毒、とかく人間は気を良ふ持つのが薬ぢや。』=「まぁまぁ、そう悪し様に怒鳴り散らすと体に毒ですよ。人間ってのはね、気を良く保つのが健康の秘訣ってやつで」と、怒りの矛先さらりとかわし。
こういう会話の切り回し、久作って結構一筋縄ではいかない雰囲気を持ってますよね。
『ヤその薬で思ひ出した。土産にせふと思ふたこの山の芋をとろゝにして、出来合ひの麦飯を進ぜふかい」』、さっき家を出るとき、店へのお土産に山芋を持っていくと言ってましたね。店へ届けなかったのですから「せっかくだから小助さんにご馳走しましょう」と。でも『出来合いの麦飯』を出そうというのですから、本気のご接待でないですね。ちょっとした嫌味といったところでしょうか。
【原文】
「エヽ置けやい置けやい、見せかけばかりの正直倒し、イヤ麦飯のとろゝのと、ぬらくらとは抜けさせぬわエエ、あんだら臭い」と蹴散らす藁苞破れてぐはらりと出る丁銀。
【解説】
久作の嫌味を受けて、小助の台詞。
「ええぃ、黙れ黙れ!見せ掛けだけいい人ぶりやがって、麦飯だとろろだと、ぬらくら言い逃れて(※とろろの食感・感触と、言い逃れの様を「ぬらくら」一語に掛けた言葉遊びなんかもさりげなく組み込んでますねぇ)誤魔化そうったってそうはいかねぇ!」と、土産の山芋を包んでいた藁苞を蹴散らし、た、ところ!
なんと!山芋が入っているとばかり思っていた藁苞の中から、丁銀(=江戸時代の銀貨の一種。海鼠形で、豆板銀とともに、計量して使用されたもの)が、がらがらっと音を立てて転げだしてきたのです!
――その8 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54824185.html に続く――
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