文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

全体表示

[ リスト ]

★初めての方は「その1」からお読み下さい★
「その1」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53216454.html
「その2」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53241063.html
「その3」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/53242848.html
「その4」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54722479.html
「その5」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54733640.html
「その6」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54785227.html
「その7」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54796186.html
「その8」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/54824185.html

【第9回テキスト 義太夫原文】
おみつは親の気をかねて、答へなければ久松擦り寄り、「この身の手詰は遁れても、この御暮らしで余程の銀、後でお前の御難義には」
「ハテ俺ぢやとて相応のかくまひはせまいものか。始末してためたあの銀は、黒谷の方丈へ上げる冥加銀気遣ひしやんな。まんざらあればかりでもないわいの。
改めて言ふではなけれど、末はわが身と一つにする約束で、このおみつは婆が連れ子、あれも否でもないそふなり、折もあらば親方殿へ暇の事を願はふてみやうと、これがほんの儲け重宝、もふ大坂へ去なしはせぬぞよ。
早却なれど日柄もよし、今日祝言の盃さすぞ。なんとおみつよ、嬉しいか、アノマア嬉しそふな顔わいやいハヽヽハヽ。
われらは又頭を丸め参り下向に打ちかゝらふと、頼み寺へ願ふて袈裟も衣もちやんと請けておいたてや。
幸ひ餅はついてあり、酒も組重も、正月前で用意はしてある。サアサア早ふ拵らや」と、薮から棒を突つかけた、親の詞に吐胸の久松、知らぬ娘は嬉しいやら、又恥づかしき殿設け、顔は上気の茜裏袂くはへるおぼこさを見るにつけても今更に否応ならぬ親の前、急に思案も出の口の壁にいの字を垣一重。
裏の病架に咳嗽く声、「ホンニこちらのことに取込んで、定めて婆が淋しからふ。
久しぶりで久松にも逢はして、この事を聞かしたら薬より効目がよい。ハテ俯いてばかりゐずと、おみつよ、鱠も刻んでおけ。久松おぢや」と、先に立ち悦び勇む親の気を、知つて破らぬ間似合紙、襖引き立て、入りにける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【原文】
おみつは親の気をかねて、答へなければ久松擦り寄り、「この身の手詰は遁れても、この御暮らしで余程の銀、後でお前の御難義には」

【解説】
店への弁償に大金を差し出し、ひとまずの危機は脱したものの・・・ふたりの胸に不安が広がります。
(お父さんはこのお金を、いったいどうやって工面したというのか――)
あれほどの大金、貧乏所帯にあるはずもないのです。
悪いほうへの想像ばかりが膨らんで、お光は父親に問うことができません。沈黙に耐えかねた久松が久作に擦り寄って問いかけます。
「私のトラブルは解決して頂きましたけれど、この・・・貧しいお暮らしであれほどの大金を失っては、今後、お父さんに大変な思いをさせてしまうのじゃないですか」

【原文】
「ハテ俺ぢやとて相応のかくまひはせまいものか。始末してためたあの銀は、黒谷の方丈へ上げる冥加銀気遣ひしやんな。まんざらあればかりでもないわいの。

【解説】
久松の心配に応える久作の台詞。
「なにを言うかと思えば、子供のくせに余計な心配をしなさんな。いくら頼りなく見える俺だとて、自分の息子をかばってやるのにこれぐらいのことできないでどうするものか」
そして、お金の出処は?という暗黙の質問に答えます。
「あのお金は、節約してコツコツ貯めたへそくりだよ。(黒谷の方丈=)お寺さんへのお布施にしてありがたい念仏でも唱えてもらおうと思っていたが、まぁそんなことせずとも死にゃしない。いわば余分の金さ。」
そして、心配する二人の気を引き立てようとでもするかのように。
「なぁに、あれでへそくり全部ってことはない。まだあるから心配には及ばないよ」
たぶん、嘘。でも、こう言われた上でなお心配することは、父親の甲斐性を否定するようなもの・・・
息子と娘は、その優しさの前に、ただただ黙って胸の中で手を合わせるしかありません。

【原文】
改めて言ふではなけれど、末はわが身と一つにする約束で、このおみつは婆が連れ子、あれも否でもないそふなり、折もあらば親方殿へ暇の事を願はふてみやうと、これがほんの儲け重宝、もふ大坂へ去なしはせぬぞよ。

【解説】
久作の台詞が続きます。久松に向かって。
「改めて言うまでもないことだが」
末(=将来)は「わが」身と一つにする・・・ここの「わが」が「わが(娘)=お光」のことを指しているなら「お光」と「一つにする=一緒にする、夫婦にする」約束で、ってことで文意はスムーズにつながるんですが、一人称で「わが」って言ったら自分(=久作)のことを指してる可能性のほうが高いのかなぁ?
自分(=久作)と一つにする、同じものにする、といったら「家を譲って跡を継がせる」という意味になるのかな。どっちでしょう?誰か教えて(←いいかげん(^^;)

「このお光は婆が連れ子」
前出のことですが、この家の人間関係、お光ちゃんはお母さんの連れ子です。今のお父さん=久作とは血のつながりはないんですね。

「あれ(=お光)も久松との結婚を嫌がってはいないようだ。いい時をみはからって久松の勤務先へ相談し、そちらを退職させてもらって、家へ戻ってきてもらうつもりでいたら、(向うから帰してよこした。)こりゃ都合のいい、手間がはぶけてラッキーってもんだ。久松、もう大坂へは行かせないぞ」
「行かせないぞ」って言い方、戻る必要も義理もない、久松の進退の主導権はこちらだと言わんばかり。彼の気持ちを引き立てて楽に思わせてやろうとの配慮ですよね、優しいお父さんだよなぁ。

【原文】
早却なれど日柄もよし、今日祝言の盃さすぞ。なんとおみつよ、嬉しいか、アノマア嬉しそふな顔わいやいハハハハハハ。

【解説】
久松はもうこちらから願って退職させてもらうことに決まった。家では許嫁の娘がまさに結婚適齢期、準備万端!それならば・・・
「急ではあるが、日柄もいい(=大安か友引?)善は急げだ、今日、結婚式をするぞ!」
急も急、お光はビックリ!長年の夢が一気に現実になり、喜びを抑えていろってほうが無理です。
嬉しさが表情に溢れてしまうのを「アノマア嬉しそふな顔わいやい」とからかわれてしまいます。

【原文】
われらは又頭を丸め参り下向に打ちかからふと、頼み寺へ願ふて袈裟も衣もちやんと請けておいたてや。

【解説】
我ら、とは久作(=お父さん)とその妻(=お母さん)のこと。
「頭を丸め」=仏門に入り「参り下向に」=仏教修行に「打ちかかろふ」=とりかかろう・・・ということですけれども、まぁここは正式に出家するというほどじゃなく、隠居して念仏三昧の生活に入ろう、程度の意味でしょう。
常々「そろそろ・・・」と思っていたから、そこは根回しよく(笑)もうお寺にお願いして、袈裟や衣といった仏道修行のための服もちゃんと貰ってあるんだ♪と言います。

すでにこの家に準備されていた袈裟、衣。
実は後に、重要な小道具として使用されることになりますが・・・それはまた、後の話。

【原文】
幸ひ餅はついてあり、酒も組重も、正月前で用意はしてある。サアサア早ふ拵らや」と、

【解説】
ちょうどラッキーにも、今はお正月前。普段はないお餅も、お酒も、組重(=かさねた重箱。つまりおせち料理)のごちそうも準備できている・・・コレを全部、結婚式のお祝いに転用しちゃえばいいじゃないか!ってワケです。
そして、お光にさぁ祝言の準備をしなさい、と告げるのです。

【原文】
薮から棒を突つかけた、親の詞に吐胸の久松、知らぬ娘は嬉しいやら、又恥づかしき殿設け、顔は上気の茜裏袂くはへるおぼこさを見るにつけても今更に否応ならぬ親の前、急に思案も出の口の壁にいの字を垣一重。

【解説】
この急展開、晴天の霹靂、藪から棒とはまさにこのこと!
親(=久作)の言葉に久松は「あっまずい」と思う、けれど咄嗟の反論も出てこない。胸を突かれてハッとするのです。彼には、義理と恋慕に縛られた複雑な事情がある・・・
何も知らないお光は、ただただ夢が叶った!とその喜びと驚きばかりです。嬉しくもまた恥ずかしい「結婚」・・・顔は真っ赤、まるで着物の裏地に使う茜色みたい。袂で口元をおおって恥ずかしがるおぼこさ(=純情、無邪気、可憐)といったら!
久松とて、ともに育った兄妹分、彼女が憎いわけなどないのです。むしろ愛しい、傷つけたくはない。しかし・・・久松は思考フリーズ状態で、ただただぐっと押し黙るばかり。

【原文】
裏の病架に咳嗽く声、「ホンニこちらのことに取込んで、定めて婆が淋しからふ。
久しぶりで久松にも逢はして、この事を聞かしたら薬より効目がよい。ハテ俯いてばかりゐずと、おみつよ、鱠も刻んでおけ。久松おぢや」と、先に立ち悦び勇む親の気を、知つて破らぬ間似合紙、襖引き立て、入りにける。

【解説】
ト、そこに奥の病室から咳をする声がし、一同は病気で臥せっている婆(=お母さん)の存在に心つきます。
お光と久松が結婚して、この家で新しい生活が始まる!この家族にとって、これ以上に喜ばしいことなんてないのです。早速に知らせて嬉しがらせてやろう、どんな薬より元気が出るにちがいない!と久作は浮き立ちます。
照れ恥ずかしがって俯くばかりのお光を、一人にして落ち着かせてもやろうと、久作は「婚姻料理の膾を作っておきなさい」と命じ、久松を連れて奥へ入っていこうとします。
久松は、といえば・・・胸は憂鬱に沈んでいますが、若い二人の幸せばかりを願ってこれほど喜んでいる親の気持ちを傷つけることもできません。
間似合紙(=まにあいがみ)とは襖紙(=ふすまがみ)のこと。襖の紙の部分は傷つきやすく破れやすいため、触れぬよう注意を払って扱うべきものです。親の心をそれにたとえて。
そして、久作と久松は奥の病室へ。お光は一人、残されました。

――「その10」 http://blogs.yahoo.co.jp/hana_yukiyanagi/57000841.html に続く――


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事