文花座

歌舞伎、宝塚歌劇団、劇団四季・・・大好きな舞台の感想をつらつらと♪

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「あれえっ?」―――自分の異変に気付いたのは、お芝居が終わり、ショーに入ったあたり。

宝塚に興味を持ち始めてから日も浅く、初心者お決まりの通り自然に男役さん中心で見ていました。
それが、この時。何の意識もなしに舞台に向けた自分のオペラグラスが、一人の娘役さんを追ってしまっているのです。
気付いた時にあれっ?なんでかな、と思って別の方に焦点を合わせてみたのですが、すぐに目が勝手に彼女に戻ってしまう。
それほど、どかんと目立つ方じゃない。私は何で彼女を追ってしまうんだろう?

観劇が終わった後に気付きました。
今回の観劇、なんてあったかい気持ちにさせられたことか、心が満たされたことか、と。
それが、ふづき美世さんでした。

ふづきさんのちょっと独特な心地のいい声。
心のそこからふわりとわきあがるかのような笑顔。
そして何より寄り添う姿のなんと幸せそうな、満ち足りた雰囲気を醸していらっしゃること!

そして、舞台に対する誠実さを非常に強く感じました。
柔らかさの中に芯のある、しなやかな力強さや、春野寿美礼さんの傍らでポーズを決めた時の凛とした眼差しの中に、高みに上ろうとしている人の、尊いような「誠実さ」を感じるんです。

もう一つ。
とても親しみやすくてからかいたくなっちゃうような朗らかさと同居する、「精神の貴族」とでも言いたいような高雅な品のよさ――――
子供の頃から愛されていたんだろうなと思わせる、本質的な品の良さ。
この、「庶民」「貴族」の両方を一つの体に持ち込んだギャップが・・・(^^)

実は、その前に花組公演を拝見した時、ふづきさんに対する印象はとても薄かったんです。
可愛らしさ、わざとらしさない大らかな気品は他の方にはない魅力と感じたのですが、それが幼さや頼りなさ、個性のなさとも感じられたりして・・・
そして、トップ就任後2作目。
正直、さほどの興味を持たず(←本当に失礼でスイマセン!!)に観たふづきさんは、多分それまでももっていらした魅力を、華やかに花開かせていらっしゃいました。
トップになられてからも猛スピードで成長なさっている気がするんですけれど、昔からのファンの方に言わせるとどうなのでしょう?

貴公子の風が漂う春野寿美礼さんの傍らに、付け焼刃でない品をもったふづき美世さん。
「ロイヤル」と冠したいくらいの豊かな雰囲気をもった、本当に素敵なカップルぶりだと思います♪

【物語】

ここは質屋の店先。毎度の常連・御数寄屋坊主の河内山宗俊が脇差を片に金を借りに来ています。
その脇差、たいした品ではないのですが「天下の河内山の品だぜ」「俺のプライドにかけて絶対流しはしねえから」と言葉を尽くして法外な値を借り出そうと交渉中。
いつものことに、番頭も苦りきっています。
お前じゃ話にならねぇ、主人を呼べと息巻く河内山に、主人は奥で取り込み中だという番頭。
そこへ、疲れきった青い顔の女主人・おまきが現われます。
実は、今、奥で親族会議を開いて話し合いをしていたとのこと。事態は深刻、進退窮まったおまきは藁にもすがる思いで河内山へ事情を語ります。
おまきの一人娘・浪路は松江出雲守の屋敷へ奉公に出ているのですが、その美しさが松江公の目にとまり、妾になれと迫られていました。
夫もすでに亡く、女一人で店を切り回すのも苦労なおまきは、娘に婿を取って家を継がせたい考え。
婿もすでに許婚の仲の人がおり、浪路にも松江公の妾になろうなどという考えはまったくありません。
断りつづけてはいるのですが、松江公の執心はそれを許してはくれません。
そこで、どうしてもと願い出て一時宿下がりをさせ、そのチャンスに許婚との婚約を済ませてしまいました。既成事実を作ってしまえばとの考えだったのですが、それは松江公の怒りに油を注ぐ結果に。
浪路は館に監禁されてしまったのです。
松江公の無体を咎めようとも、相手は武士。下手なことをすれば無礼打ちの一言で浪路は殺されてしまうかも知れず、家にもどんな咎があるか分かりません。
女一人の手には負えなくなり、親類一同を呼び集めての話し合いをしていたのですがまったく埒があかないのだと嘆くのです。
それを聞いた河内山は思案を巡らし、すべて俺に任せろ、娘を無事取り返してやろうと胸を叩きます。しかし、もちろんただとはいかない、娘の命代は前金100両、成功の暁にはもう100両と吹っかけます。
今まで河内山には散々煮え湯を飲まされてきた番頭は猛烈に反対し、おまきもおろおろととまどいますが、奥から出てきた親類の泉屋清兵衛は河内山に頭を下げて奪還を依頼。言い値通りの100両を渡し、河内山へすがることとなりました。
前金100両をふところに去っていく河内山の後姿へ、おまき。
「本当に大丈夫かねぇ・・・」
答える清兵衛の言葉も振るっています。
「大丈夫だ、河内山も名うての悪党、まさか失敗しましたなどとはいうまいよ」

松江公の屋敷に悲鳴が響きます。
走り出てきたのはやつれきった腰元浪路、それを庇う宮崎数馬。
抜き身の刀を引っさげて二人を追うのは、癇癪を爆発させた松江出雲守。
松江公は思い通りにならぬ浪路に業を煮やし、短慮な怒りから浪路を手打ちにしようというのです。
若い宮崎数馬は必死に松江公を宥め、暴行を思いとどまらせようとしますが、そこは若輩。焼け石に水のありさまです。
そこへ現われたのが重臣・北村大膳。この男、松江公におもねり保身を図ることにのみ長けた奸臣です。
あろうことか浪路を主人の意思に従わない罪人と罵り、またその浪路をそれほどまでに庇いだてする宮崎数馬は浪路と不義密通をしているに違いないなどと決め付けます。
絶体絶命のまさにその時、現われたのは家老・高木小左衛門。
正義感に長け、家老職として大きな存在である忠臣・高木小左衛門は松江公にとっても無視できないうるさい存在。小左衛門は松江公の短慮を窘め、二人を救います。

その場へ、上野寛永寺の使僧が訪れたとの連絡が入りました。
上野寛永寺は幕府の意志を代弁する重要な機関、いわば武家のお目付け役です。
その使者がなぜここへ? もしや、松江公の度重なる短慮の噂が寛永寺まで届いたか―。一同に緊張が走ります。
小左衛門は松江公に使者の出迎えを願いますが、頭に血が上った松江公は使者とは会わないと言い捨てて下がってしまいます。

高木小左衛門以下の家臣が居並び、主人は体調不良のためお会いできない、用件を承りたいと挨拶します。
鷹揚に挨拶を受ける使僧は、純白の衣に緋の袈裟も美しい高雅な雰囲気の僧侶・・・実は河内山宗俊!巧みな変装でこの屋敷に乗り込んできたのです。
河内山は柔らかい口調にびしりと棘を利かせ、主人の欠礼を詰ります。
そこへ、裃姿に正装した松江公が現われました。
先ほどは会わないと言い捨てましたが、さすがに反省した様子。短気な癇癪など嘘のような穏やかな物腰を繕い、使僧に挨拶します。
家臣を下がらせ二人きりになった河内山は、腰元浪路の一件を切り出します。
この一件、出入りの商人・和泉屋清兵衛より聞き知ったことを告げ、武士として許されまじき行為、ことは内密にすますから、すぐにも浪路を親元へと言い渡します。
しかし松江公もさるもの、浪路は不忠があったため懲らしめているだけである、家中のことに口出し無用とやんわりと切り返し、さらに密告のようなまねをした和泉屋清兵衛を罰するとまで口にします。
甘い顔は通らねぇか。河内山の態度ががらりと一変、凄みの効いた脅しの啖呵。
こっちはもう調べがついているのだ、そこまでしらをきるというなら、ことを公に寛永寺の調査をさせるまで!
正式な調査でことを公にされては、松江公の面目どころか地位も名誉もすべてが奪われます。
もちろんニセ坊主河内山にそんな権限はまったくない、言葉はすべて口からでまかせの大ハッタリ。気付かれればすべてがおじゃんのこの状況。
河内山と松江公の火花の散るにらみ合い、お互いに黒い腹の探りあい―――
・・・折れたのは松江公!
早速浪路を親元に送り届ける手配をさせた河内山は、悔しい松江公が下がっていくのを高僧らしい品のよさで穏やかに微笑んで見送ります。

仕事を終えた河内山。精進料理のご馳走が運ばれるのをやんわりと断り、実に品よく「黄金の茶」を所望します。黄金の茶、つまり小判。要するにタカリ。
袱紗をかけられ三方に乗せて届けられたモノを差し出され、微笑んでそれを受け取った河内山。家来が下がるのを見計らって、扇の先でちょっと袱紗を上げて確認・・・
その瞬間!時を告げる時計の音が鳴り響き、びびって飛び上がる!
さすがの悪党も、これだけの大芝居。緊張が隠せない様子です。

浪路奪還を無事すまし、かつ大金をせしめた河内山。
家来集に見送られ今まさに帰ろうとする時、玄関先に控えていた北村大膳が河内山を一目見て声を上げました。
北村大膳は江戸城で御数寄屋坊主・河内山宗俊と出会っていたのです。隠し切れない左頬の黒子がその証、寛永寺の僧とは真っ赤な偽り!
ばれたのならばしょうがねぇと河内山。高僧の演技をかなぐり捨て、伝法なべらんめぇ口調での大啖呵!
突き出すなら突き出せ、そっちははっきり認めやがったんだぜ!
河内山と北村大膳の間に強烈な火花が散ります。そこへ割って入ったのは高木小左衛門。
このことは、傲慢な松江公にとってもいい薬となったろう。すべてを知りながら、北村大膳の非礼を詫びお帰りくださいと促します。
歯噛みする北村大膳を尻目に、気持ちよく引き上げていく河内山。
帰りがけに振り向いてみれば、松江公が静かにそこに立っています。
その腹、煮えたぎっていることだろう!
にやりと会心の笑いを顔に乗せ、ぎりぎりと歯噛みする北村大膳へ向かって河内山は腹のそこから爆発するように叫びます。

「馬鹿めェ!!」

そうしておいて、人をおちょくるような芝居がかった態度で、高僧らしく去っていくのでした。

【参考公演・文献】
吉例顔見世大歌舞伎(歌舞伎座/2004年11月公演・夜の部)・同公演チラシ

【作品データ】
作:河竹黙阿弥

【最終更新】
2005年3月1日

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